ドライブイン安土 不退転3-1

 カナがどう上杉家を屈服させるのか。


 「まず、上杉家は全てがあの上杉謙信様の思いで動いております。つまり、上杉謙信様をどうにかすれば上杉家はどうとでもなるという事です」


 「まぁ上様より、ワンマン武家って感じはするけど・・・」


 「えぇ。私もそのように受け取りました。悪戯に命を担保にするのはよろしくありませんが、生憎私は人間に降神しましたからなんら、問題ありません。

 この病気を治すのを担保に上杉謙信は隠居とまでは言いませんが、世代交代してもらいます。

 そして、あの方はマスターにも分かりやすく言えば、株式会社上杉家の会長職に着いてもらう感じです」


 「要は口は出してもいいが、行動は取るなってこと?そんなの反故してくればどうするの?」


 「あの人は私から見たら本当に戦狂いのような人間です。戦場で果てる事を本望としてるのでは?と思います。ここはマスターが未来から来て、あの方の死因を伝えるのが宜しいかと。

 私が組んだプログラミングアニメーションをパソコンで見せましょう。リアルに出来上がっておりますよ」


 「はぁ!?」


 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 「うむ。まさか夜飯や晩酌まで用意してくれるとは思いもよらなんだ。且つ、今宵の寝床まで、しかも荷役の者も用意してくれるとはな」


 「えぇ。そのくらいは用意致しますよ。それに、風呂も堪能していただいたようで。そして・・・千坂様。上杉様。薬の件の前に見せたい、聞いてもらいたい事がございます」


 「なんだ?」


 「まずはこれをご覧ください」


 千坂は目を見開き驚いている。上杉は驚いてはいるが、既に風呂やジャージで慣れたのかそうでもない。

 オレはパソコンからHDMI端子からプロジェクターに出力し、カナが作ったアニメーションを流す。

 

 「こ、こ、これはなんですかな!?」


 「とりあえず見てください。配下のカナが貴方様達に分かりやすく作ったものです」


 二人と荷役三人は黙り込んでしまった。それでも、程なくすればプロジェクターからスクリーンに映し出されるアニメーションに釘付けとなり・・・、


 「これは上杉家を映しているのだな。で、お主は未来から来たと言い、我は厠にて頭から血を流し・・・」


 「死ぬ事になります。オレが知ってる歴史ではそう学びました」


 「で、出鱈目な事を言うでない!」


 「千坂。よせ。心当たりはある。正直に申せば、夜に頭が割れるような痛みが2、3回起こった事がある。そして、右目が霞んでいる。立ち眩みもここ最近は多くなった。つまりは、のういっけつなる病に我はなっているという事だな?」


 「間違いがなければ恐らくそうかと。この事を引き合いに出し、駆け引きはしたくありませんが、あなたという・・・上杉家及び、上杉謙信という大名は巨大過ぎます。それ故に敢えて仕掛けます。

 薬は・・・(コトン)これになります。これを飲めば貴方は治ります。が・・・」


 「そうよのう。命が果てる天のみぞ知る事をお主は変えようとしているのだ。無償というわけにはいくまい。それに我は厠なんぞで死にとうはない。我は戦場にて闘争の果てにて死にたい」


 本当に戦馬鹿のような人だな。確かに便所ではオレも死にたくはないけど。


 「とやかく言っても仕方のない事でしょう。この薬が欲しければまず家督を次代の上杉家当主にしてもらいたいです」


 「貴様!いくら薬があるからと言って・・・」


 「千坂。よせ。続けろ」


 「内政干渉のような形で申し訳ない。続けます。あなたは隠居とまでは言わないですが、金輪際織田家に関わり合いを持たないようにしてもらいたい。その代わりオレが織田様に言い、織田家も上杉家にちょっかいを出さないよう進言します。

 そして、上杉家の所領の事は一度話し合って決める事とするならば問題ないかと」


 「小荷駄隊であったお主がそこまで発言力があるとは思えないが?」


 「それが信じられないかもしれませんが、それなりあるんですよね。貴方の事は義将だとオレは思っております。嘘を吐いてまで攻めてくるとは思っておりません。それともう一つ・・・。

 オレと仲良くするならば・・・貴方にとって素晴らしい飽きが来ない事を教えましょう」


 「なんだ?」


 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 〜甲賀村〜


 「あーら?尊ちゃん!こんな夜更けにどうしたの?遊びに来られたのですか?」


 「あ、あやめの蝶さん!こんばんわ!遊びではないのです!少し野暮用がありましてね。少し通らせてもらいますよっと・・・」


 「おい。見損なったぞ。まさか春町に我を誘い込ませるとはな」


 「いえ。見ててください。これから向かう場所は織田軍でも知ってる人が少ない場所ですよ。寧ろオレの殿にこの事を知られたらマジで怒られるどころではないかもしれないのです」


 「あ、マスター!どうぞ!昇降機降ろします!」


 オレが連れて来た場所は甲賀村の地下にあるカナや国友一派の秘密地下施設だ。源三郎さんの跡を継いだ、てるさんに軽く挨拶し、更に進む。今は地下三階に現代でもこんな施設はないだろうという場所がある。


 「おや?尊殿・・・うん?其方はッ!!!」


 「あ!半兵衛さん!待って!これには理由があるのです!」


 「な、な、なんじゃここは!?」


 オレが連れて来た場所は仮想訓練所だ。どうやって作ったかは分からないが、カナが精密機械を勝手にオレのクレジットから購入し、あれよあれよと、ミラーボールのような物を天井に無数に設置し、仮想空間を作り・・・


 「上杉様。これは私が作った中央演算処理装置、七式コアK19を使った秘密軍事施設です。要は仮想軍事施設と言えば分かりますでしょうか?物は試しです。竹中様?上杉様と模擬戦なんていかがでしょう?両軍1万vs1万。武器は飛び道具は弓矢のみ。古き良き時代の戦を上杉様にお見せできるならば、新しいステージをアップデートしますよ」


 「ぬぉ!?誠か!?だが、このことは後程、詳しく聞かせていただきたい。どうせ、上様にも内緒なのであろう?」


 「はい」


 「尊殿からも後で聞きますからね。さて・・・軍神殿。私は今孔明と巷では言われている竹中半兵衛重治。お相手仕ろう」


 「待て!待て!何が何やら・・・」


 「(カポ)失礼します。これを被り思うがままに話し、思うがままに行動してください。千坂様や荷役様は少しお下がりください」


 「カナ!起動するぞ!」


 「OKです!」


 シュィーーーーーン


 そう。オレが居た令和のゲームなんかより更に未来で作られるだろう仮想空間をカナは国友さん達と作り上げたのだ。カナが作ったダークマター?カリホルニウム?を使った処理装置を使い、視覚、聴覚、嗅覚、触覚、味覚を感じる事のできる施設だ。

 地面に砂のような極々小さな粒のような物が起動と同時に出てきて、全力で走ろうが砂が動いているだけで、実際はその場にいるだけで、頭に被せた帽子が脳のニューロンとリンクするらしく、あたかも本当に戦場にいるかのように思わせるそうだ。要は超進化したゲームのような物だ。


 オレも完成した時に使った事があるが、残念ながらオレは酔ってしまいギブアップした。その時のソフトはカナの処女作。バトルオブ桶狭間というのをプレイした。若き頃の信長を神界でも有名な天宇受売命(アメノウズメ)というオレでも知ってる神が作ったAIを使い再現したそうな。オレはその横に居る一人の兵士としてプレイしたのだが、崖を降りる時に1ダウン。


 事前にオートセーブにてプレイできるのだが、崖を降り切った所にデカい石にぶつかり2ダウン。


 その次は名も無き兵士に石当てで頭をやられて気絶中にカラスに食われて3ダウン。


 最後は若い信長に軽口を叩いて、『無礼者ッ!』と言われて首を斬られて4ダウンとなりオレは辞めた。クソゲーだと思った。


 まぁこのオレの話はいいだろう。つまりはシステムは本当に素晴らしいやつだ。これを自称・・・いや、今孔明の竹中半兵衛に戦術を磨かせるためにやらせたのだが、本当にハマったみたいでよくここで試している。

 カナはカナでアップデートで色々な戦場を作っているみたいだ。


 「ぬぉっ!!?こ、ここはどこだ!?」


 「御実城様ッッ!!!」


 「シーッ!千坂様。あなたも後で試してみれば分かります。今、上杉様は外の声が聞こえません。そこのでっぱりより前には行かないようにしてください。電気で弾かれますよ」


 「た、尊殿!?これはなんなのですか!?まさか本当に我等を害そうと・・・」


 「はい!?んなわけないですよ!まぁいいや。カナ?千坂様も荷役の人も参加できる?」


 「(クスッ)了解です!」


 「はい!はーい!どうせなら竹中様の下に尊さまと私も参加しましょうよ!」


 「いや、オレはもう・・・」


 「それはいい考えです!さぁ!頭に・・・(カポ カポ)マスター!相手は軍神ですよ!折角なので、第四次バトルオブ川中島にしましょう!」


 「あぁ!ちょ!!(シュィーーーーーン)」


 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 〜仮想空間 八幡原〜


 「おやおや!?清殿も尊殿も来られたのですな!?」


 「もう!誰もオレはやりたいなんて言ってないのに!」


 「(クスッ)いいじゃありませんか!竹中様!?ここはどこですか!?」


 「これは第四次川中島のシナリオでは!?ここは茶臼山でしょう。折角ですので、海津城へと入城しましょうか。総大将は尊殿。貴方ですよ?私は山本勘助何某役にでもなりましょうか。カナ嬢の事ですので、本物の通りにやらせるつもりでしょう」


 「あぁ!もう!分かりましたよ!またゲームでも一騎打ちしなくちゃならないのかよ!」



 〜上杉目線〜


 「こ、ここはどこなのだ!?我はどうなっている!?おい!武田!ここはどこなのだ!?」


 「御実城様ッ!」「「「殿!」」」


 「千坂に荷役の!これはどうなっている!?」


 「あの、カナという女が言うには仮想空間?なる場所だそうで、時がくるまで思うままに動いて良いそうです。時の流れが違う故に思う存分楽しんでくれとも言われておりました・・・が・・・ここは・・・」


 「意味が分からぬ。まさか浮世絵の世・・・界・・・まさか!?あれは善光寺か!?眼前に見えるは八幡原か!?そしてあの奥に見えるるが・・・」


 「妻女山ですと!?ならばこの川は・・・千曲川・・・御実城様!!?これはあの・・・」


 「言うな!最後まで言うな!あぁ!分かる!分かるぞ!我に川中島をしろと言うのだな!?しかもこの布陣は我が宿敵と死闘を繰り広げた4回目の戦だ!

 どういうカラクリか分からぬがやってやろうではないか!具足を持てぃ!誰ぞ太刀を!」


 「御実城様・・・既にいつのまにか着替えて装備までされてあるようです」


 「訳が分からぬがこれは良い!思う存分に楽しめる・・・いや、愉しめる!ふぁっふぁっふぁっ!オン ベイシラマンダヤ ソワカ!我 毘沙門天の化身なり!目指すは妻女山だ!顔は違うようだが、我が上杉の具足を持った兵も居るようだ!確か1万と言ったな!良い!甘粕の代わりが千坂!お主じゃ!妻女山から降りし時に指揮権を渡す!その間に我は宿敵と約束を果たそうぞ!」

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