ドライブイン安土 邁進1-4

 「いやぁ〜、こんなに大きな馬だったか!?」


 「いや・・・これは、そう!そうです!マウンテン富士にて開発したプレミアムチモシーという、オレが力を込めた草を食べさせたらこんな風になったのです!ははは!我ながら凄い力だと思っています!」


 もうね。マウンテン富士に任せてばかりだ。苦しい。非常に苦しい。けど、本当の事なんて言えない。

 一応、秀吉はオレの事を友と言ってはくれているが、どうしてもこの人のこの笑顔が好きになれない。 

 演技と言ってはいたが、粘っこい何かを感じる笑顔だ。


 「コホッ コホッ。お初にお目にかかります。私は、西美濃 菩提山城主 羽柴家 与力 竹中半兵衛重治でございます。以後お見知り置きを」


 おっと!?ここでまさかの大物か!?本物の竹中半兵衛か!?今孔明と名高いあの人か!?だが・・・


 「少し・・・顔色が悪いように見えますが?」


 「カッカッカッカッ!案ずるな!尊!この者はワシが三顧の礼を以って迎え入れたのじゃ!しかも上様に仕える事を良しとせず、ワシの配下なら仕えると言ってくれたのじゃ!その半兵衛が病気なわけなかろう!」


 いや、確かこの人は秀吉総大将の中国攻めの途中で肺結核やら肺がんやら肺炎か何かで死ぬはず。未だ中国攻めは始まっていないからすぐに死ぬとは思わないけど・・・。それとなく後で聞いてみようか。あの空咳は可笑しいよな。


 「その通りですよ?尊殿。私はこのように病弱なように見えるかと思いますが、舐めているとこの尊殿のドライブイン安土?の店を乗っ取りますよ?」


 「え!?乗っ取られるのですか!?」


 「「「「「・・・・・・・」」」」」


 オレが返すと、皆が冷たい顔でオレを見て、変な空気が流れた。


 「おいおい?尊?今のは竹中殿の冗談だ。稲葉山城時代で竹中殿の武勇は美濃や尾張では知らぬ者も居ないくらいの語り草でな?」


 「そうじゃ!まさかお主は冗談も通じぬのか?」


 いや、慶次さんも秀吉も当たり前のように言うなよ!?この時代、冗談言う人なんて少ないだろ!?しかも、無表情、塩顔の竹中半兵衛・・・まさか初対面の初っ端からブラックジョークを言うとは思わなかったぞ!?



 「冗談はさておき、此奴が堺国友一派の頭領の国友善兵衛である!」


 何故か、秀吉のドヤ顔からの紹介だ。国友善兵衛・・・見た目からして、鍛治を生業としているのがなんとなく分かるような人だ。そして、その後ろに5人程の似た感じの人達が居る。


 「国友善兵衛でございます。お館様に言われ、尊殿に色々教わり、言われた物を作れと言われております」


 挨拶もそこそこにして、まずは店の中へと案内する。そして始まる動画閲覧会だ。2階の居住部へと移り、わざわざこの為に購入した、タブレット表記で15貫、円表記にすれば15万円もした65型スマートテレビ。

 これで色々な動画投稿者を登録して見せる。その動画は銃が出来上がるまでの工程や、仕組み。他にもありとあらゆる、建築物の建築方法などなど。

 オレ的には直射砲や、迫撃砲なども見てもらいたかったが、まずはこの時代の時代の人だけで作る鉄砲からだ。雷管や火薬などはカナがどうにかしてくれると言っている。確か今は黒色火薬が全盛期だったっけ?無煙火薬を教えるのはいいが、理論が分からないとどうにもできないしな。


 「こ、こ、この箱はなんじゃぁぁぁ〜!!?」


 「と、頭領ッ!!ひ、人が話しておりますぞぉぉ!!!」


 ったく・・・これだよ・・・。この説明が非常にめんどうなんだよな。だが、これも仕方がない。あれ?


 「あれ!?竹中様!?大丈夫ですか!?もしもーし!?」


 さっき、ブラックジョークをオレにかましてきた竹中半兵衛。この人も目を開けたまま固まっていた。

 

 本来はさっさと説明し、秀吉から国友さんをオレ達に任され、お別れする予定だったが、半兵衛のコレもあって、どうやら今日一日はオレ達と居るらしい。そうなればどうなるか・・・。

 ここは飯処だ。うちの看板メニューのカレーやチャーハン、ラーメンを出して腹を満たす。


 「これは・・・堪らん!美味いッッ!!」


 「頭領!それに店主殿!!こんな美味い物なんか食べた事ありません!」


 「カッカッカッカッ!だから言ったであろう?飯も美味いから文句なぞ出ないとな!」


 「・・・グスン。美濃の時代を思い出しますな・・・」


 いや、なんで半兵衛は少し涙ぐんでいるんだよ!?ラーメンのどこに美濃を思い出す要素があるんだよ!?


 「う〜む。もしここの事を蔵人佐殿が知ると連日参りそうじゃな」


 「蔵人佐殿?羽柴様?蔵人佐殿とは誰の事ですか?」


 「あぁ。お主は会った事ないのだな。三河殿だ」


 徳川家康か。確か天ぷら好きで、一説には死因も天ぷらとも言われていたっけ。


 「少し・・・会ってみたいです!」


 「会ってみたいだと!?辞めておけ!あれはつまらん男だ。でっぷり肥えた腹に何を考えているかまったく分からん男じゃ」


 いや、まぁまだ会ってはいないが、あんたの方こそ、その意味の分からない粘っこい笑顔が何を考えているか分からんわ。


 それから、更に部屋の事をアレコレ聞かれ、結局はなんと言ったか・・・。


 「全て、マウンテン富士にて作った物です!」


 そう。この一言に尽きる。これを言えば何故か全員納得してくれるのだ。

 腹も満たされた所で甲賀へ向けて出発となる。

 秀吉はこの店の横に加工場を作るものだと思ってたらしい。どう考えても秘密になんてできなくなるのは分かると思う。

 灯台下暗しではないが、わざと皆が見える所で秘密武器を作るのもアリかもしれないが、どうせならな。甲賀の人達が今の所1番信用できるし。


 そこそこ大所帯での移動だ。いつもなら1時間30分くらいで到着するが、国友さん達は善兵衛さん以外は歩きだ。途中で分散して後ろに乗せる事となった。秀吉はかなり渋っていたが、頼み込んで了承してもらった。


 「嫌じゃ。何故ワシが男を乗せねばならぬ!ワシの後ろには女子しか乗せん!」


 もうね。プレイボーイどころではない。


 そして、昼過ぎに到着だ。一応、正規の入り口は誰が見ても入り口!と分かるような作りになっていた。簡易的な木の門に、周りは木で覆われてはいるが、木柵に、櫓まで装備してある。堀こそないし、それにこんな山に誰かが攻めてくる事なんてないとは思うが、もし攻めるとしてもそこそこの労力が掛かると思う。何故かって?それは・・・


 「なっ!!?こ、この砲は!?まさか南蛮大筒か!?」


 「と、頭領!!見てください!!この大きな鉄砲を・・・」


 そう。正門に2門装備している、四斤山砲。タブレットにて1門、15貫にて購入した物だ。前装ライフル式で弾に関しては目下、源三郎が製造中である。

 カナの指導の元、鋳造を頑張っていると聞いている。それを美濃油和紙で包み、弾の凹凸を極力少なくしている。まぁ合戦で使うわけではないから、村の防衛装備としては文句なしだ。


 「尊殿!?あの長い鉄砲は!?」


 「あれは狙撃銃と呼ばれる鉄砲の一種ですよ」


 これもまたオレがタブレットで購入した鉄砲だ。現代のミリタリー好きなら聞いた事はいないであろう。その名は有坂銃。まぁ、ここから何を狙撃するのか?と聞かれると別に狙撃する必要はない。ただの脅しみたいなものだ。

 これらの装備があるから、そう簡単に、甲賀が抜かれる事はないだろう。


 「尊?後で詳しく教えろ!長浜にも装備したい!それに次の合戦にも使えそうじゃ!」


 まぁこうくるよね。未だ信長にも御披露してないんだけどな。


 それから、源三郎さん達に紹介した。カナもカナで、加工場にてまずは鉄の事やら色々と理論を国友一派に教えるとの事だ。


 「それにしても誠、凄まじい場所だな」


 「えぇ。私に与えていただいた領地ですので、精一杯発展させますよ」


 「時に・・・人手が少ないのではないのか?聞けばお主は弱者に甘いと聞いたぞ?」


 「えぇ。弱い人も救済措置を取る政策にしてますよ」


 基本的にこの時代は与えられた土地は好き勝手していいみたいだ。好き勝手と言っても悪政を敷いていれば、織田家でいうなら、信長にドヤされるじゃ済まないが、織田家へ決められた年貢、金、合戦時の農民足軽を出せば文句言われないらしい。

 甲賀は特別扱いで、特にオレに関しては本当の意味で好きにしていいと言われている。だから、米は丹羽さんの所から買う事にして、その他の野菜や果物の産地としてそれを売ってお金を集める事にしている。


 ここで、あの粘っこい笑顔に秀吉はなった。


 「そうか。恥ずかしながら、ワシも農民の出でな?仕官してきた者は極力雇うようにしているのじゃが、どうしても銭が心許なくてな?良ければ何人か尊のところで面倒見てくれんか?」


 「それは別にいいですけど、どんな事させればいいのです?」


 「それはお主に任せる!好きに使ってくれ!」


 然も普通の流れで言われたけど、善意のように聞こえるこの言葉・・・。調べられているような気がしないでもないが、馬の件もあるし、無下にできないな。まぁ真似しようにも真似される事はないし、構わないか。それに、人は見かけによらないからな。案外、オレが勘繰っているだけかもしれないしな。

 信長にはかなり忠実ぽいし。


 「分かりました。甲賀で良いならば面倒見ます。その代わり、普通に仕事はしてもらいますよ?」


 「あぁ!恩に着る!どうも尊はワシを警戒してるように見えるが、本当にワシはお主を友と思っている!皆に言われるのだ。特に柴田殿に、『三河殿程ではないが、お前は裏で何を考えておるか分からん』とな」


 「正直・・・オレもそう見えます。すいません」


 「良い。良い。こんなのは慣れっこじゃ。もし何かあってもワシはお主の味方じゃ!何か困った事があれば何でも頼れ!一応、織田家では先輩じゃからな!カッカッカッカッ!」


 「わ、分かりました。少しずつ仲良くしましょう」


 怪しんでばかりじゃ始まらないしな。ビワマスの件もマジで動いてくれてるみたいだし。まずは本能寺黒幕説を抜きにしてこの人の事を信じてみようか。


 

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る