ドライブイン安土 始動4
〜野田砦〜
「お館様〜!!!もう少しお待ちください!!」
「遠藤!遅い!それでも小姓筆頭かッ!!」
「お館様!?その馬は!?」
「ふん。これか?良いであろう?小雲雀より速い!明智と交代できたのか?」
「はい。数刻前に明智様が戻られ天王寺砦総指揮をお返し致しました」
「うむ。急な呼び立てをしたのは申し訳なく思う。お主も親父の後を継いで織田家を盛り立てよ」
「はっ!ありがたき御言葉。この佐久間甚九郎信栄、父 佐久間右衛門尉信盛よりも働く所存です!」
「ふん。抜かせ。とりあえず後陣にて待機しておけ。サル!サルはどこぞ!?」
「はっ!ここに!お館様!?何故、明智殿をお戻しになられたのですか!?このサルめに御教授願いたい!」
「いつかな。それより戦況は?」
「雑賀衆が敵方に多数見えます。その数1000以上は居るかと」
「傭兵集団か。飽くまで彼奴等は坊主の味方に着くか。それにしても味方の到着が遅い。何をしておるのだ」
「まったくですな。この羽柴隊はいつでも出陣できるように待機しておりましたのに」
「ふん。まぁ良い。まだ刺激するな。言葉闘いに乗るなと厳命しておけ」
〜ドライブイン安土〜
「尊さま・・・お腹が減って力が・・・」
「ごめん、もう少し待って!」
夜になった。昼はなんとか適当に作業をさせて誤魔化せたが、さすがに腹が減ってはなんとやら。皆が食事を口にしてどのくらい経ったかを時計を使い、確認している。これはネットで調べた事だが、胃の中の内容物は2〜3時間で消化されるらしい。
だが、脂っこい物などを食べた時は5〜6時間掛かると書いていた。
それから、腸の中まで空にするなら24〜72時間掛かるらしい。流石にここまでは検証できない。
「尊様・・・(グゥ〜)少し前くらいまでなら2、3日飲まず食わずとも何ともありませんでしたが、尊様の食べ物を知り、我慢できない体になってしまいました。どうか・・・どうか、飯を食べる許可を・・・」
既に6時間以上は経過している。ここで試してもいいか。
「分かった!変な検証させて申し訳ない!」
「ハァー ハァー 遅く・・・なりました。すいません」
「梅ちゃん!お帰り!」
「約束のご飯・・・よろしく、お願いします・・・」
もう答えは出ている気はする。梅ちゃんがあの勢いのままなら、数時間もしない内に佐和山城から行って帰ってできた筈。だが、夜になったプラス、息切れをしているということは・・・。
「太郎君!清さん!桜ちゃん!悪いけど、外の巨木が持てるか試してくれない?出来れば、笑いなしで試してほしい」
「「「えぇ〜・・・・」」」
最初の時の反応はどうしたんだよ!?初日なら絶対に、『はっ!』って言ってただろうがよ!まぁ仲良くなってきたという事だな。
「頼む。検証が終えたら酒も許可する!」
「「「はっ!!喜んで!!」」」
「私はサイダーを・・・」
「梅ちゃんごめんな。とりあえず水で・・・。サイダーは後でね!」
外にやって来て確認する。小雲雀ちゃんはリンゴを丸々段ボール1ケース食べて眠っている。
一応念の為に、車庫ならぬ馬小屋の横に梅ちゃんが荷車で運んでくれた麻紐で縛って持って来てくれた干し草?を置いておく。とりあえずこれで飢えたりはしないだろう。明日からは佐和山詰めの誰かが日に一度運んでくれるそうだ。
「ふぬぬぬ・・・ハァー」「うぎぎぎぎ・・・」
「ふんごぉぉぉー・・・ハァー」
「尊さま・・・ダメみたいですん・・・」
いや、何で残念な顔するの!?それが当たり前だから!けど、これで結論の3割は分かった。次は飯を食べてからまたあの巨木が持てるかだな。
「はぁ!?あなた達や清様はこんな大木を持ち上げてたの!?」
「そうだね。昼間に軽々しく持ち上げてたよ。てっきりオレが夢見てるのかと思ったんだ」
「頭可笑しいんじゃないの!?こんな大木なんて持てるわけないじゃん!」
梅ちゃんのおっしゃる通り。頭湧いてるんじゃないかとオレも思う。
「あら?良い訓練になったわよ?」
オレの嫁さんは脳筋だ・・・。
「「「「(ハフッハフッハフッ)(ジュゥ〜)」」」」
「なっ!次郎!それは俺が仕込んでいた肉だ!」
「おっと!?これは・・・手が勝手に口の中に・・・いや〜すまぬな。ほいこれ。返そうか?」
「ック・・・これより先は俺の領土だ!はみ出してくるな!」
「隙ありぃ〜(ハムッ)」
「ぬぁ!?き、清様まで・・・」
「あら?それでも甲賀の上忍の訓練受けてたのぉ〜?これは草の活動に似ていると思わないぃ〜?隙を見せればぁ〜他の者に取って食われるぅ〜!隙を見せるのが悪いのよ?」
オレは間違えたのだろうか・・・。考える事が多く、準備や片付けは大変だが、焼肉を夜飯にしたわけだ。
ちゃんと炭を火起こしして、陶器の炭コンロまで出してだ。4人で囲むには一器では小さいが一つしかないため我慢してもらうしかない。が、それでも何故焼肉でこんなに殺伐としているのだろうか。
思えば最初からおかしかった。
「酒・・・酒ねぇ〜。清さんは酔ったら可笑しくなるからね〜」
「そんな事言わないでください!私はあの黄金の泡泡が飲みたいです!」
「分かったよ!でも皆はまだ10代だろう?だからお酒はダメなんだ。けど、ここにオレの倫理観は通用しないからこの1本を皆で分けて飲むように!その内、普通に飲ませてあげるから!」
「おい!桜!何でお前のだけ、なみなみに注ぐのだ!俺のは上が空いているじゃないか!清様なら分からないでもないが、お前より格下ではない!」
「へぇ〜?里の訓練で怪我した時に治療してあげたのは誰よ?」
「(プッハー)美味い!」
「なっ・・・あぁ・・・」
「太郎!これが経験よ!隙を見せない!味方でも信用し過ぎない!習った事でしょう?ふふふ」
酒如きで最初からこんな風になっていたのだ。オレのせいかもしれないけど。それに比べて梅ちゃんは可愛いものだ。
「シャワシャワだ〜!うぅ〜ん!美味しい!甘い!」
少し、幼い感想ぽいが、実に可愛い反応だった。が、これにも噛み付く奴が居た。太郎君だ。しかも雇い主であるオレに言ってきた。
「た、尊様!梅だけ、そのサイダーなる物1つとは些か可笑しいのではないでしょうか!?」
「え!?オレに振る!?」
「そうれすよぉ〜。もう終わりだなんて、やーですよー」
早くも清さんが酔っ払い始めたため、慌てて肉を提供したのだ。漬け込みのタレは、醤油、酒、ニンニク、生姜少々、砂糖、さっき買ったリンゴを擦り下ろし、ごま油とコチュジャン少々だ。これは1人焼肉セットとして出そうと考えていた物で、現代に居た時にはまだ提供はしていなかったメニューだ。
「ダメなもんはダメ!とりあえず食べてくれ!その後の事はまた考える!後一つ試してほしい事があるんだ!それが終われば・・・もう少しだけなら飲んでもいいから!」
「「「「オォーーーー!!」」」」
と、なってからこの殺伐とした焼肉だ。
「太郎君。肉はまだあるから気にせずに食べなさい。それにしても、肉に忌避感ないんだね?」
「実を言うと・・・肉は俺は普通に里で食べてました。寧ろ食べる物が少なく・・・」
「実は私も・・・」「自分もっす」「私もです」
「今更なんだけど、皆が皆、甲賀?の出身なの?」
「えぇ。幼馴染・・・みたいな感じです」
「ふぅ〜ん。だから普通なんだね。あ、いいよいいよ食べながらで。はい!これ追加の肉ね」
「いただきぃ〜!」
「ふっ。最初の時と比べると随分と変わったね。いや、いい意味でね?」
「それはぁ〜!尊ちゃまが優しいからでぇ〜すぅ!(ヒック)」
清さん・・・もう飲ませるの辞めようかな。それでも一際可愛いわ。妖艶の香りだ。
「うん?別に普通じゃない?」
「いえ。草の出の自分達にこんなに気さくに喋っていただけるなどとは思いませんでした。護衛任務では飯なんかも自分で調達するのが当たり前ですので」
「嘘!?キツくない!?」
「それが当たり前なのです。ですが、尊様はそんな感じではなく、飯も飲み物も、なんなら今日のように酒をお出ししてくださいました。酒を飲むのは人生2回目です。我等のような下々の草なぞ酒にあり付ける事なぞ早々ありませんので」
「そんな酷い環境なの!?」
「護衛ならばその対象者によります。正確には此度の任務は丹羽様配下のとある方からの任務だったのですが、『護衛だけではなく雑用も身の回りの世話もしろ』との事で、私は夜伽の相手もさせられるかと思っておりました」
「よ、夜伽って・・・そんな事しないから!!」
「(クスッ)あっ!すいません!私・・・笑ってしまいました。申し訳ありません!」
確かに、この子達は笑わない。無表情な事が殆どだった。が、今の笑顔は素直に嬉しい。それに何故謝るのか。任務相手だからか?
「桜ちゃん。今のは可愛いと思うよ。そんな無表情なんかじゃなく普通に笑っても怒らないし、寧ろそうしてほしい。残念ながらオレは弱いし、戦う事はできないけど、皆を飢えさせる事なんてしないし、服だって新しい服用意してあげるよ!まぁその分、働いては貰うけど。余裕ができればとも思ってたけど、お金も入ったからこの際、給料も渡すよ!」
ついでにオレは、信長から預かったお金の100貫は結納で使うから置いておくが、残りの50貫の内の20貫を均等に渡した。まぁ清さんにも渡さないとねぇ。経済DVなんて言われてもいけないし。
1人4貫ずつだ。この時代の給料がいくらくらいかは分からないから、もしかすると少ないかもしれない。そこは今はまだ勘弁してほしい。稼ぎ出せばもっと渡してあげようと思う。
「こんなにも貰えません!寧ろこんなに頂いたら、上役に怒られます!」
「そうです!そもそも俺はこんなに貰えるほど働いておりません!」
「いや、なんで給料貰って怒られるんだ?その方がおかしいよ。オレは戦闘なんてできないから守ってもらわないといけない。その対価みたいな物だよ」
「「「「・・・・・・」」」」
あれ!?おかしかったか!?
「では、この半分を頂きます!それを向こう1年の給金としまして、精一杯御奉公させていただきます!太郎!次郎!梅も文句ないわね!?」
「え!?1年!?給料って毎月じゃないの!?」
「「「「え!?」」」」
「え!?」
いや、みなが鸚鵡返ししてどうすんだよ!?まさか・・・この、草?出身の子は1年に一回しか給料が貰えないのか!?可哀想すぎる!それはせめて、うちだけはしてはいけない!
「あのう・・・尊様は毎月、この給金を渡していただく感じだったですか?」
「おいおい。言葉がおかしくなってるよ。まぁそのつもりではあったし、それは変わらないよ。給料とは普通は1月に一度渡す物だ。『今月も働いてくれてありがとう。また来月もよろしくね』という心を込めてね。オレはそれが当たり前の世界からやってきた。1年に1度ボーナス・・・特別給金と言えばいいかな?それも余裕が出来れば渡すつもりだ」
「こんなに頂いてる事が上役にバレると私達は消されて、他の者がここに来てしまいます・・・」
「まぁ、そこはオレがどうにかするから。君達の上役が誰かは知らないし、勝手はさせない。それに、消されるって物理的にって意味だよね?そんな事したらどんな手を使ってでもオレはその上役の人間を殺すよ。君達が知らないし、頭では考え付かない武器をオレは持っているんだ。まぁ、とりあえず、今は2貫ずつ貰っておいてよ。それと・・・太郎君!君に決めた!少し着いて来てくれ!後の者は、食べててくれ!」
「「「はっ!」」」
「え!?俺ですか!?どこに!?まさか・・・組敷く・・・」
スパコンッ
「いや、すまん。手が滑ったようだ。オレは男色は嫌いだ。いや、人の恋は人それぞれだがオレは断じて違う!清さん一筋だ!今は婚前だから考えないようにしているんだ!」
この太郎君は碌なもんではない!オレを男色する奴だと思っているなんて・・・。
「さぁ!これを持ってみてくれ!」
「またで・・・すか?あれ?なんか持てそうです!よっこいせっと・・・持てました!」
「(ニヤリ)勝ったな」
「え!?」
「いや、ご苦労!これで一つ謎が解けたよ!じゃあ、中に戻ろうか!」
これで本当に一つ謎が解けた。が、この事はできれば内緒にしたい。いつかはバレるだろうが、今はまだだ。さて・・・オレも一緒に食べようかな。
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