第五章 新生

ドライブイン安土 新生1

 更に1ヶ月が過ぎた。織田軍は・・・というか、信長は出陣しなかったらしいが、大坂湾で海戦があったようで、大船団を率いていた織田軍ではあったが、瀬戸内海の村上水軍に翻弄され、本願寺に物資を運び込まれたそうな。

 九鬼嘉隆という人を総大将に据えていたそうだが、任務は失敗。信長が激怒・・・って程でもなく、『仕方がない』で済んだそうだ。

 何故それをオレが知ってるかって?九鬼本人が店の常連となってくれたからだ。


 「(プッハー)だからよ?俺は言ってやったんだ。海の中から水夫を使い船を沈めるのではなく、堂々と戦え!ってな。(ヒック)だが、彼奴等は聞く耳を持たん!卑怯者だ!(ヒック)尊?お主も村上何某等と相対する事があれば気をつけておけよ?どこから攻撃されるか分からぬぞ?(ヒック)」


 「はぁ〜。九鬼様?飲み過ぎではありませんか?まだ昼過ぎですよ?」


 「あぁん?俺に飲み過ぎと申すのか?(ヒック)飲まなきゃやってられねーんだ!!尊も分かってくれよ!?(ヒック)」


 「分かりました。後、ビール1杯だけですよ?」


 「すまねぇ〜。お館様は俺を許してくれた。失敗を糧とし、次に活かせってな。だが、滝川殿と伊勢志摩で新式の安宅を7隻建造したが、また戦っても同じ結果になるような気がしてな・・・(ゴグッ ゴグッ プッハー)」


 これが所謂、史実でいうところの織田の鉄甲船かな?簡単に建造できるようにアドバイスでもしてみようか。


 「ならアルミ版とか張ってみますか?もしくは、船そのものを変えてみるとか?竜骨船にして、更に大型にするとか?アルミは浮力でどうなるかまでは分かりませんが、FRPとか塗って塗装すれば弓矢くらいなら刺さらないんじゃないかな?カナはどう思う?」


 「尊さま!私がさっそくググってみましょうか!?」


 「うん。清さん!よろしく!よさそうなページがあれば印刷してあげてくれる?」


 「(ヒック)それにしてもいつ来てもここの女達や奥方はイキイキとしているな」


 「女性が活躍する仕事場も面白いでしょう?」


 「九鬼様と滝川様は更に大型船を建造してみてはいかがですか?図面は私が描きましょう。櫂は先端を平たくする事により、推進力が上がります。

 その分、水夫を多く乗せないといけないため重くはなりますが、船首を槍のような形にして、鉄を組み込めば、体当たり戦法なんかもよろしいのではないでしょうか」


 「(ヒック)時折り、カナ嬢が恐ろしくも見えるな。そんな綺麗な顔してるのに考える事がエゲツない。先の木津川口の折に其方が居れば負けなかったやもしれぬな」


 「私が居た所で戦局は変わりません。如何に国力を上げるかによって変わります。戦う前に勝敗を決めてしまう。これは織田様も言っている事ではありませんか?」


 「ちげぇ〜ねぇ〜。カナ嬢よ。尊の所が飽きたら俺の所へ来い!」


 「ゴホンッ。九鬼様?出禁にしましょうか?」


 「いやいや!すまんすまん!それにしても最近は慶次が居ないんだな?」


 「慶次さんなら甲賀に居ますよ。部隊運用の演習だとかで、オレの部隊は年季の入った方が多いですし、集団戦は苦手みたいなので訓練すると言っています。隊長に任命したから、最近は毎日甲賀勤めですよ」


 「そうか。誰もやりたがらない小荷駄隊を尊達が引き受けたんだったよな?」

 

 「そうですね。兵站の概念がなかったってのがオレからすれば可笑しいですけどね」


 「まぁ、陸戦なら敵から奪い、敵の領民から奪えって考えだからな。お前のような考えは珍しい。だが、確かに後方から必ず食い物、飲み物が十分に補給されるなら、足軽、歩卒は永遠に戦えるし、攻城戦ならば、敵からすれば悪夢だろうよ。(ゴグッ ゴグッ カタン)美味かった」


 「尊さま!九鬼様!お待たせ致しました!」


 「いいの見つかった?」


 「はい!けど、このまま渡しても見れないと思いますので・・・」


 「奥方様。それに関しては私が間に入ります。一度、その資料を精査しましょう。九鬼様。追って、連絡致します。暫しお待ちください」


 「うむ。相分かった。尊!駄賃だ!いやなに・・・ツリは要らねぇ〜ぜ?」


 「・・・・九鬼様?ツケが溜まってるんですが?全然足りないし、ツリどころか、今日の分も足りないんですが?」


 「いや、すまん!九鬼家の台所は今はしんどくてな!?必ず返すからもう少し待ってくれ!な!?」


 「はいはい。分かりましたよ!」


 「うむ!恩に着る!また来るぞ!じゃあな!」


 このように、九鬼さんはツケは多いけど常連となってくれた。

 肝心のカナだ。この一ヶ月の間に更に色々と分かった事がある。一応、カナは神であるのは本当だ。だが、下界する時に精神体となり、依代となる物が必要だったらしいのだが、それがタブレットだったらしい。

 精神体になった時にカナが使える・・・というか、神が使える権能やなんかは使えないらしく、もし使って、他の神に見つかれば最底辺の意識すら持たない神の卵に降格させられるらしい。

 神は基本的に人間に干渉してはならないという掟があるのだそうだ。なら、カナのお兄さん・・・神代さんが行った事は構わないのか!?って事になるのだが・・・


 「高天原で須佐之男命様はその・・・嫌われておりますので・・・。大宜都比売神様は他の上級神からも不憫に思われているみたいで、今回の事に関してだけは目を瞑ると協議して決定しました。それに関して、もし私が強力な権能を使い、掟を破り、人間の営に介入すればこの世界線は破壊される事となります」


 「は、破壊!?マジで!?ならオレは死ぬの!?」


 「あ、いえ!安心してください。他の神も基準が可笑しいので、私が星落とし(メテオ)や次元弾(デジョン)など、本来の世界線と掛け離れた事をすればって話です。

 どの世界線になろうとも神は人間の繁栄を望んでおります。それに私自身もストッパーを掛けておりますので、万が一にも有り得ませんので御安心ください。

 それに神と言っても本体は高天原の大宜都比売神様の宮殿にありますので、今の私は精神体ですよ。 タブレットにてマスターが擬似人形を購入してくれたおかげで、新たな依代を見つけただけですので、やはり今の私はアシスタントAIですよ。この依代を破壊されればまた精神体となりますし、なんら他の人間と変わりませんよ(ドヤッ)」


 いや、普通は体が破壊されれば即死するのが人間だと思う。カナも基準が可笑しい。やはり神だわ。と、思うが、本人はドヤ顔で人間のつもりのようなのでオレは敢えて何も言わない。


 さっきの木津川の戦の事を伝助君にも教えてもらったのだ。なんと伝助君も補給船にて参戦したらしい。

 それになんと伝助君は・・・


 「いやぁ〜槍おん・・・清!それに尊!ついにオレも国人衆の末席の1人になったんだぜ!天王寺砦の功績を明智様や丹羽様がお認めになってくれたんだ!」


 「おぉ〜!良かったじゃないか!出世だな!けど、槍女って間違えそうになったから今日の晩飯は作ってやらないからな!」


 「いや、待て待ってくれって!」


 「(クスッ)伝助は良かったわね!出世したいって毎日言ってたもんね!」


 「懐かしいな!まさか清が丹羽様の一族だったなんてな」


 「それを聞いても話し方を変えない伝助が良いわよ。けど・・・次にまた槍女なんて間違えそうになったら・・・激辛ラーメン食べさせるわよ」


 「悪い!悪いって!それにしても客が増えたな〜。いつ来ても客がいっぱいだな〜(ありがとうございました〜)」


 「うん?なんて?」


 「いや、いつ来ても人が居るなと思ってな。尊も大概凄いよ。大殿とも普通に喋れるんだろう?俺なんかより全然凄いよ(チャーハン大盛り!)」


 「そんな事ないけどな。特にこれといった凄い事なんてオレはしてないぞ?飯を振る舞ってあげてるだけだ。あ!後は2日に一度、泊まりに来るだけさ。けど、その1日は本当に辛いぞ?常に緊張しっぱなしだしな」


 「(クスッ)本当よ。この間なんて・・・」


 「あぁ〜!ちょ!清さん!」


 「ふふふ。尊さまが部隊運用の事を口にしたら寝ずに2人がずっと話し合っていたのよ。その時に・・・ね?尊さま!」


 「なにがあったんだ!?」


 「大殿が急に尊さまに脱げと言ってね!」


 「あぁもう!あんな事言わなくてもいいじゃん!」


 清さんが笑いながら言っている事。それはコンドームの話をしたからだ。いや、最初は鉄砲隊や、兵站の話をしたり、焙烙隊や、花火を用いた撹乱部隊など色々話していたのだが、どうやら清さんを見た信長は、清さんが女の顔になっている事に気付いたようで、オレに聞いてきたのだ。


 「貴様は清と寝床を共にしたようだな」


 「え!?な、なんでそれを知っているのですか!?」


 「ふん。顔を見れば分かる。ワシでも気が立っている時は清は恐ろしいと思っておったものが、今はその棘がなくなっておる。で、子はいつできるのだ?」


 「子供はまだ早いかなって・・・。というか、そんな気はないですよ」


 「そんな気はないって言っても回避できないではないか。まさか子を捨てるような男ではあるまいな?」


 「あっ!そうですよね!コンドームとかない時代ですもんね!絶対ではありませんが、情事をしても妊娠しにくい物があるのですよ」


 「ほぅ?」


 「コレです!これをこちら側から自分のアレに装着するだけです!」


 「なんじゃこれは?見せてみろ!貴様で実演してみよ」


 「はぁ!?え!?む、無理すよ!」


 「良いではないか!権六から聞いたぞ?中々の物を持っておるそうだな。脱げ!」


 と、言われ信長にコンドームの付け方を教えたのだ。自分の体で。あれは屈辱だった。戦国時代の武将間に男色があるってのも本当だと分かった。そして、信長もその男色を嗜んでいたというのも本当だと分かった。

 オレは身震いしたが、信長が気にせずオレのをシゴいてきたんだ。そんな気はなくても勃ってしまったんだ。

 オレは悔しさと恥ずかしさでいっぱいになりながら、コンドームの装着方法をさっさと教えた。

 確実にオレの貞操を狙われている気がしたからな。だがその時に信長が一言・・・


 「ふん。何か勘違いしておるようだが、ワシにも好みはある。権六が言っていた事が本当なのか確かめたかっただけだ。確かに中々のマラを持っているようだが、蘭丸の方が愛い」


 この一部始終を陰から清さんが見ていたそうな。

 

 清さんも清さんで興奮したようで、城勤めの下女や有力者の側女の間では禁断の愛のような感じでそれなりに興味を持っている女性が多いようだ。

 腐女子かよ!?と思う。


 「そ、そうだったんだな。まぁ・・・その・・・尊も大変なんだな」


 「あんな事は2度と御免だ!オレは清さんが良いんだ!」


 「「「おぉ〜!流石だな!店主!奥方一筋とはな!」」」


 オレの最後の言葉は大声になっていたようだ。


 「はっんっ。こんな所で惚気なくていいよ!」


 「尊さま!今宵もお待ちしております!」


 「マスター。奥方様とは必ず付ける物は付けてください。本日は妊娠率が高いですよ」


 カァ〜!カナまでなんて事言うんだよ!まだ昼間だぞ!




 〜甲賀村〜


 「全隊ッ!!止まれッ!!偃月の陣!前方は長槍隊!中陣は弓矢隊及び鉄砲隊!走りながらあの的に撃てッ!(パンッパンッパンッパンッ!ヒュー ヒュー ヒュー ヒュー ヒュー)後陣は敵を粉砕せよ!松風に遅れるなぁ!」


 「誠、身体が軽い!」


 「7射の内5射命中!」


 「ダメだな。全弾命中じゃなきゃいかん!俺達ぁ〜人数が少ない。だが、精鋭中の精鋭だ!尊の飯を食べて力も上がっているだろう?突撃の力が今までより段違いだろう?ならば、仮に万の敵にも必中の槍となり、手柄を上げなきゃならね〜!」


 「慶次はそんなに尊様を活躍させたいのか?」


 「当たり前だ!俺が飲んで飲んで女を抱いて暮らすには銭がいる!戦働きでデカい手柄を俺達が上げて織田の殿様から銭を貰うんだ!」


 「ケッ。んな事だろうとは思ったわ」


 「だが、尊の名を上げたいという事に嘘はない。彼奴は飯屋の店主だ。だが、一度見た彼奴の眼は本物だ。彼奴に戦の事を教えると化けるぜ?その為には俺達は彼奴の思うように動けるように演習しなければならない!」


 「まぁ、それは俺達甲賀の者全員が同じ意見だ」


 「太郎戻りました!」


 「おぉ〜。お疲れさん!どうだった?」

 

 「どうぞ。ポラロイドカメラなる物にて撮影致しました。雑賀も弾の秘密を探っているようで、雑賀忽の鍛治屋では丸ではない形の弾を見かけました。これ以上は中々調べられませんでした」


 「良い結果だ。それだけ分かればいい。もう少しすれば、カナ嬢から鉄砲の資料を貰う事となっている。今は蓄える時期だ。これから尊は戦う飯屋の店主となる!太郎は休め!他の者はもう一度だ!」


 「「「「はっ!」」」」

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