ドライブイン安土 開店9
おいおいおい!ヤバイだろ!?何人居るんだよ!?10人くらい居るんじゃないか!?
「この山の向こうに城を築いておるな。織田家のよ。昨夜ここに供回りを付けず、織田のうつけが居ると聞いた。元浅井家 森本鶴松太夫様 支配内 大竹野家 馬廻り 喜助」
「織田家 丹羽五郎左長秀様 支配内 清 推参也」
おぉ!これぞ、戦国時代!って・・・そんな事思ってる場合じゃない!
「見るからにその男は弱そうだ。まずは女から殺れ。人が集まる前にうつけを殺せ。殺れッ!」
「お館様の領内の賊め!成敗致す!おりゃ〜ッ!!」
ガキンッ ガキンッ ガキンッ
オレはただ見守る事しかできなかった。足が震えて立てないのだ。
「クッ・・・」
「あっ!清さん!!」
「尊さま!早く中へ!」
「女ッ!!男を庇う余裕なぞなかろう!貰った〜!!」
清さんの腕が軽く斬られた。血、血・・・本物だ・・・。ヤバイ!
こんな事なら清さんを連れて中へ無理矢理にでも入っておけばよかった・・・。このままでは殺られる・・・。
オレは急いで店の中へ入り包丁を手に取った所で、タブレットが点滅している事に気付いた。
「な、なんだ!?はぁ!?武器だと!?」
そこには新しい項目が現れ《武器》というのが見えた。
オレは武器項目をタップして、使った事はないし、実物も見た事ないが、見慣れた武器を出す。そう。鉄砲だ。別にミリタリーが好きではない。だからこれがなんという銃なのかは分からないが、項目には《二十六年式拳銃 弾18発》5貫 と書かれていた。
オレはすぐに5万円をチャージして購入した。
チャリン
いつもの音が聞こえ、厨房にそれが現れた。ご丁寧に既に装填してあるみたいだ。使い方は知らない。が、引き金を引くという事は分かる。
オレにあの男達が撃てるだろうか。否!撃たなければ清さんを見殺しにしてしまう。
そう思うと体が勝手に外に向かう。
「はっはっはっ。女の癖によくやったな。まさか4人も殺られるとは思わなかった。だが、卑怯だとは言うなよ。お前等織田家も約束事を守らないらしいからな」
「ック・・・ここまでか」
「待てぇぇ〜!!パンッ!」
「な、なんだ!?今の音は!?鉄砲か!?」
「尊さま!?」
オレは威嚇のつもりで空に向かって1発撃った。これで退いてくれれば良いけど・・・。
「そ、それはなんだ!」
「鉄砲だ。撃たれたくなければ退け!」
「チッ。お前等!奴は馬鹿だ!1発撃ちやがったぞ!装填させる前に撃ち取れ!」
リーダーらしき男が残った奴等に命令した。4人が横たわっているのは分かる。明らかに死んでいる。そして、男が向かって来たと同時に・・・
「なんの騒ぎじゃ!」
「織田様!?」
「大殿!ここは危のうございます!中へ入り、扉をお締めください!さすれば、外からは誰も入れません!」
「ふん。こんな小物にワシが討ち取られると思うてかッ!!どこぞの家中の者かッ!!ワシがここに居る事を知っておるという事は味方にネズミが潜んでおるな?楽に死ねると思うなよ」
信長から禍々しいオーラのようなものが発せられたのが分かった。ジャージ姿で刀を抜いているが、これが何故か様になっている。一言で・・・カッコいい。
「あれがうつけだ!あれはワシが相手をする!残りはもう1人の男だ」
リーダーらしき人がそう言うと、オレに向かって男3人が斬りかかってきた。
「尊さま!」「尊ッ!!」
信長までもがオレに向かって叫んできた。
「ダァァァァァ〜〜!!」
オレは目を瞑り引き金を引いた。
パンッ パンッ パンッ パンッ パンッ
カチッ カチッ カチッ カチッ カチッ
「グハッ」 「グフッ」
「その武器はなんだ!!!ワシに見せろ!!」
「うりやぁ〜!!討ち取っーー」
ズシャッ コトン
「清!今じゃ!」
「はっ!うりゃぁ〜!!」
ズシャッ コトン
信長は難なく1人撃ち損なった男の首を一刀で斬り落とした。リボルバーの連射に驚き、固まっていたリーダーらしき男は清さんが同じように首を斬り落とした。
「ふん。残るゴミ虫よ!手向かってくるならば根斬りぞ。逃げるなら追わぬ!」
「ヒィ〜!」「か、敵わねぇ〜!」「お助けを!!」
残った男達は一目散に逃げていった。
「これはどういう事だ!」
「はっ。申し訳ございません。早朝に、武田様への訓練を行っていたところーー」
「いやそんな事はどうでも良い!これじゃ!おい!尊!これはなんじゃ!?昨日言っておった片手銃か!?」
オレは人を撃ってしまった事に恐怖した。
「武田様!?」
「ふん。大方、初めて人を撃ったのだろう。清。連れて来い」
「はっ!」
「(フシュー フシュー)」
「ふん。貫徹力も素晴らしい。こんな小さな鉄砲だというのにのう。貴様は助からん。ワシに敵対するとはこういう事になるのだ。尊!殺れ。(コロン)」
清さんがオレが撃った1人を目の前に連れて来て、信長が短刀をオレに投げてきた。トドメを刺せという事らしい。オレは吐き気を我慢してるくらいだし、殺せるわけがない。
「で、できません!すいません!」
「ならぬッ!!これはやらねばならぬのだ!貴様が此奴等を撃たなければもしかすればワシの首と胴は繋がっていなかったやもしれんのだ!清もそうだ!縄目の恥辱に合い、男の慰み者になったやもしれんのだ!それにこの能無し共が先に仕掛けて来たのだ!」
「そ、それでも自分は・・・」
ゴツンッ
「腑抜けた事を言うでないッ!!昨日聞いた貴様の未来の法度の事なぞ知らぬ!ここは乱世!ワシが居るからこの辺は多少は治安は良いが、他国ではこれより酷い事なぞ日常茶飯事だ!貴様がここで生きるならばいつかは起こる事だ!野伏りの自業自得ぞ。応報せよ!」
「・・・・・無理です」
「貴様ッ!!そこに直れッ!!貴様はそれでも男かッ!!!素っ首叩き斬ってやる!貴様のような奴は要らぬわ!」
スチャ
「お待ちください!大殿様!」
「清は下がれ!丹羽の娘だろうと勝手は許さぬ!」
「で、ですが・・・」
「ならば貴様も斬ってやろうか!?あん!?」
このままではヤバイ。あのヤバそうなオーラ全開で信長はブチギレだ。清さんも斬られてしまう。そうだよな・・・。そうだ。どうやって帰るかも知らないし、何もしなければ此奴等に殺されてたのはオレかもしれない。
オレは放り投げ、渡されたさっきの男連中の短刀を抜き、虫の息の男に相対する。
「(フシュー フシュー)楽に・・してくれ」
「クソがぁぁぁぁぁ!!!!」
グサッ
オレは喉に短刀を突き刺した。そして、刀を抜き更に突き刺す。
「クソが!(グサッ)クソが!(グサッ)クソが!(グサッ)退けって言っただろうが!!(グサッ)」
「尊さま!もうその辺で・・・」
「気が済むまで待て。此奴とワシ等は少し違う。落ち着くまで待て。くれぐれも此奴を1人にするな。こういう輩は1人で考え、1人で背負い込む。ワシ等からすれば賊を殺すのは当たり前じゃというのにのう」
「畏まりました。先程は申し訳ありませんでした」
「ふん。気にしておらぬ。まるで童を見ておるようじゃ」
オレは怒りか悲しみか分からない感情で何度も刺した。既に死んでいるのは分かるのに止まらない。
そして、2分くらいだろうか。ふと、気付くと信長と清さんがオレの方を静かに向いているのが分かり、ようやく手を止めた。
「満足したか?信長さんよ!これでいいんだろ!」
「ちょ、ちょっと!尊さま!?」
「ふん。初めて人を殺めたのだろう。1度目は気持ちの昂りとして聞かなかった事にしてやる。2度目はないぞ」
確かに何で悪態が出たんだろう。けど、信長の言葉はマジだ。最初出会った時のようなオーラがオレに向けられた。
「うへぇ〜」
オレは吐いてしまった。
「今の姿は情け無いが、敵を屠っていた時は一端の顔だったぞ。先も言うたが、ここは乱世。平和の世ではない。弱肉強食。あぁいう輩はどこにでも居る。いつまでも貴様の居た世のままではこの先、貴様は殺されてしまうぞ。貴様のこの飯処なぞたちまち、野伏りや浪人のような者に、押し入られるだろう」
信長はオレのためにこんな事言ってくれているんだとすぐに分かった。恐らく、他の名も無き奴にはここまで優しくしないだろう。オレには利用価値があると判断されたから・・・。けど、そう思っていたとしても、この人の言葉は何故か凄く心に響く。素直に嬉しい。ここは戦国時代。オレの現代倫理観、価値観なんかまったく通用しない世界。
他の武将も居るだろう。丹羽さんだってそうだ。あの人は優しい。口は悪いけど。そして池田恒興・・・あの人は・・・分からないけど、この時代で生きて行くには後ろ盾がいる。この人の天下統一は出来ないという事は知っている。
明智光秀に殺されてしまうから。だが、ただなんとなく、本当にこの世界で生きて行き、誰かに仕えるならば・・・織田信長に仕えたい。オレはそう思った。
そして、心の中でそう思えば自然に口から言葉が出てしまった。
「あなたに・・・仕えさせてください」
「ふん。ワシはできん事を命令する愚将ではない。ワシが命令する時は出来ると思う者にしか言わぬ。ワシに着いて来い。貴様が居た世界より良い世界にしてやろう」
「殿ッッッッ!!!!」「お館様ッッ!!」
「ふん。ツネに権六か」
うわ・・・。さっきの野伏りより野伏りぽい人が現れたんだけど!?
「お怪我ございませぬかッ!!?この騒ぎはなんですかッ!?」
「殿!だからあれ程言ったではありませんか!金輪際、外泊は禁止ですぞ!」
「すまぬ。だが他愛ない。ただの野伏りじゃ。それより、此奴を紹介する。織田家に仕官してきた尊じゃ」
「なっ!貴様かッ!!」
ゴツン
「辞めぬか!権六!此奴は、ちと特殊な奴なのだ!まぁ良い!尊!飯を作れ!動いたら腹が減った!清!死体を片付けておけ!」
「は、はい!」
いや、この気持ち悪いのを見た後に、飯作らされるのかよ・・・。
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