ドライブイン安土 邁進7-2

 〜吉之助目線〜


 「吉之助〜!本当にこれをオラにくれるのか〜?」


 「あぁ。俺は酒は好かん。お前だけではなく、皆に分けなさい。湯呑み1杯にも満たないかもしれないが、幸福は皆で分かち合うものだ」


 「おーい!おまえ達〜!吉之助から酒を貰ったぞぉ〜」


 ふん。飲め。飲め。判断を鈍らせろ。後は俺の一声だな。


 「皆の者。聞いてくれ。今日ここに集まってくれた者はこの間降って来た者達ばかりだろう。尊という男に恩を感じている者も居るだろう。

 だが、考えてくれ。何故、ここがこんなに食い物に溢れているのか。何故、あの蔵に米俵が山積みになっているのかを。

 そして・・・何故、こんなにここは鉄砲が多いのかを」


 「うむ。俺も考えていた。そして結論が出た。農民を虐げないとこのような生産はできん。俺達には尊という男は良い顔しているが、裏では、働かない者にはかなりの乱暴をしていると噂を聞いた」


 「そうだそうだ。確かに俺は一昨日に見た。若い女の手を引き、とある家に消えていったあの男を。口では綺麗事ばかり言っているが、実は若い女を散々もて遊び、農民を賦役のような事をさせ、自らは好き勝手している。これは仏の道とは正反対の事である!

 ここは我等が一丸となって、ここを尊から解放し、農民達だけの村にしたいとは思わないか!?本願寺の皆を助けたくはないか!?」


 「お、オイラは・・・母ちゃんを残して・・・母ちゃんも助けたい・・・」


 「アタイは・・・地獄へは行きとうない・・・」


 ふん。なんと容易いことか。考える事を辞めた愚民は上の者に諭されるよう言葉を言われれば直ぐに靡く。1人が同調すれば・・・


 「ど、どうするのですか!?武器がありません!」


 「安心しなさい。この俺が・・・この吉之助が武器庫の場所を知っている」


 「や、やるぞ!オイラはここで腹一杯食べるんだ!」


 ふん。1人同調すれば次々へと波及していく。簡単なことだ。


 「その心意気やよし。だが、ここは甲賀だ。村の者は爺さんや婆さんばかりだが、元は乱波者が多いだろう。だから、もう少し寝静まってからに致す。

 俺が焙烙玉という爆発するこの玉を使ってからが合図だ。この音はお主等も偶に聞いていたであろう?この音が聞こえたら、家々に火を点けよ。

 慌てて住人が出て来た所を三人一組で殺せ。ここの者はあの尊にかなり心酔している。普段は安土方面に帰っているみたいだが、必ず誰かは逃がしてしまうだろう。これは致し方ない事だ。

 それより、その騒ぎを聞きつけ、慌てて甲賀に来た尊は必ず討ち取れ。さすれば後は烏合の衆よ。いくら乱波者、透波者と言われようが恐るる事はない!」


 「「「オォーーーー!!!」」」



 〜源三郎目線〜


 「う〜ん。小さくすればやはり威力は少なくなるか・・・。だが、城攻めの時などにガムテープで固定すれば城の外壁くらいなら破壊できそうではある・・・」


 「オトウ!まーだ起きてるの?」


 「お、おう。てるか。こんな夜更けにどうしたのだ?」


 「毎日毎日夜更かしして仕事ばかりしてるから見に来たのよ。尊様にここへ出入りする許可も貰ったしね。それにしても凄い物ばかりね」


 「うむ。カナ嬢に色々とな。夜食か?」


 「うん!尊様が、『那古屋の海でカニが取れたから、味噌汁にしたから食べて』って貰ったんだよ。温め直したから食べて!国友様達はどこに居るの?」


 「あぁ。善兵衛なら隣の加工場だ」


 「おぉ〜!源三郎に娘子ではないか!なんぞ良い匂いがしておると思ってな!」


 「あ!こんばんは!ちょうど良かったです!これをどうぞ!尊様からの差し入れの味噌汁です!」


 「おぉ!美味そうだ!頂戴するよ!おい!源三郎!毎日仕事ばかりではなく、たまには娘子とも過ごせ!そりゃあ、尊殿に恩を返したいというのは分かるけどよ」


 「まぁ確かにここ最近は働き詰めではある。(ジュルジュルジュル)うむ。美味い!この味噌汁は初めて食べるというのにどことなく昔を思い出すような気がする」


 「(ジュルジュルジュル)確かに美味い!カニなんて久しぶりだ!米を入れても美味しそうだな!」


 「酒も・・・あれば合いそうだな?善兵衛よ?」


 「そ、そんな目で見るな!金色のびいるはやらんぞ!」


 「そういうと思って少しだけど持って来たわよ。前に私が貰ったうぃすきい?ってお酒よ。二人で飲んで」


 「おぉ!さすが我が娘だ!」「娘子よ!感謝するぞ!!」


 

 「(ヒック)善兵衛よ・・・もう酔ったのか?せっかく今日は作業を早く辞めたというのにもう終いか?」


 「(ヒック)はっはっはっ。源三郎の方こそ顔が赤いぞ?」


 「なんのなんの(ヒック)ちょっと失礼。厠に。カナ嬢も地下に厠くらい作ってくれりゃ〜いいのにな」


 「(ヒック)他国に売る用の火薬を作るから糞尿は一つに纏めるってんだから仕方ないだろう?早く戻ってこいよ?飲み干してしまうぞ?わっはっはっ!」


 うぃ〜。さみぃ〜。だうんじゃけっとなる物を、てるから作ってもらったが、今宵は冷えるな。


 ジョボジョボジョボ


 誠、遠いところへ来たようだ。尊様が現れて本当に変わった。あのお方が現れなければ俺は今頃は死んでいたんだろうな・・・。


 ジョボ


 チッ。歳だな。褌に閉まってから垂れてきやがる。てるに洗ってもらわなければいかん。うん?あの集団は・・・なに!?ガラクタ小屋から!?


 「おい!そこで何をしている!!」


 「見つかったか。まぁいい。(シュコッ)」


 「そ、それは・・・おい!皆の者ッ!!起きろ!!反乱だ!!」


 ドォォォーーーーンッ!!!




 〜ドライブイン安土〜


 「では本日もお勤め御苦労様です。明日は遅出でしたよね?」


 「う、うん。まぁ・・・その・・・ね?」


 「こらぁ〜!カナ様は私と尊さまの常事を詮索しないでください!」


 「失礼しました。ではお楽しみください。おやすみなさい」


 チッ。カナめ。混ざりたいのか!?いや、オレは一向に構わん!まぁだが、清さんは嫌だろう。オレからは誘えん。


 「もう!カナ様は・・・。最近、よく聞いてきますよね。カナ様も尊さまの寵愛が欲しいのですかね?」


 「そ、それは分からないけど・・・って、オレに聞かないでくれよ!?」


 「(クスッ)でも殿方は特定の相手だけでは飽きるものなんですよね?昔、伝助から聞いた事があります!『毎日米を食べても飽きたりはしないが、偶に違う物を食べると米が愛おしくなる。女も一緒だぞ?』って!」


 お、おぉ。伝助君。言わんとしてる事は分かる。分かるけど、外道な発言だな!?


 「いや、オレは清さんで満足かな?色々と、清さんがしてくれるから、毎夜が新鮮な気持ちがするよ!」


 「まぁ!!?本当ですか!?ならば今宵は、私の片足を尊さまの肩に置いて、挿入してください!尊さまのマラが上に当たって気持ち良いそうです!」


 「そ、そうか・・・アクロバティック的な感じだね!?」


 「はい!動画で予習しました!なんか、ウィルス?に感染とか画面に出ましたが、気にせず南蛮言語のOKを連打して続きを見たので大丈夫です!」


 おい!ウイルス感染かよ!?どのサイトで見たんだよ!?いや、感染したところでだけどよ・・・。


 「(スチャ)尊さまはいつもそのこんどおむを装着してますね」


 「あ、え?これ?そりゃ当たり前だろう?どうしたの?」


 「・・・・あ、いえ!何でもありません!」


 この時の清さんの気持ちはなんとなく分かった。分かったけど、敢えてこれ以上はオレも聞かなかった。多分、子供の事だろう。それはオレも分かってはいる。分かってはいるが・・・。


 そして、片足を上げてからの挿入だが・・・めっちゃ気持ち良かった。現代の女性なんか比にならないくらい開放的な戦国時代の女性・・・。まぁ、清さんしか知らないんだけど、何度も思うが、この時代の女性は性生活にアグレッシブだ。

 本願寺から最初の組で降ってきた女性達も人肌恋しいようで、男と交わる事に許可してほしいとオレに直談判してきたくらいだ。当初は春を売るアレかと思ったが、そうでもなく、普通に人肌重ねたいってだけだそうで、避妊100%ではないが、ちゃんとコンドームを装着してするなら良いと伝え許可している。

 許可して数日もすれば、女性達は井戸端会議の時に・・・


 「あの元東村の太郎兵衛は顔だけだね。マラも小さいし、下手くそだったよ」


 「確かにアタイも一晩抱かせてあげたけど、あれは顔だけね」


 「ワッチは元西村で行商していたっていう・・・」


 「「「勘助さん!!」」」


 「そうそう。勘助さんが良かったわねぇ〜。ワッチの身体を綺麗に舐めてくれて、手を口もマラもちょうど良かったわねぇ〜。ただ、終わるのが早いってのが・・・だけどねぇ〜」


 「アタイは勘助さんに抱いてもらった事ないから今日味わってみようかな!あっ!尊様!」


 「「「尊様!!」」」


 「あら?皆様お揃いで。あ、これ、良かったら食べます?御供え様にお試しで作ったチーズタルトなんですよ!甘味は専門外なので上手く作れていませんが、良ければどうですか?ここの生活には慣れましたか?」


 「ありがとうございます!美味しそうです!(ハムッ)美味しいぃ〜!尊様!美味しいです!」


 「いただきます!(ハムッ)美味しい〜!あ、ここの生活は慣れるどこらか極楽以外のなにものでもありません!お腹一杯食べられるし、男は乱暴しないし、屋根のある家も用意していただきましたし!」


 「ははは。領主ならそんなの当たり前ですよ。何を話していたのですか?」


 「あっ!聞いてください!あの元東村の太郎兵衛って男が居るでしょう!?今は尊様の雑用を任せている!」


 「うん?太郎兵衛君の事?あの人がどうしました?」


 「あの男・・・実はマラが小さいのです!しかも早打ち!雑!」


 「そうそう。本当に適当な男なのよ。皮被っているし」


 「お、おぅ・・・そ、そうなのですね」


 「その点、元西村の勘助さんは程良い大きさで、丁寧にしてくれるからワッチにはちょうどいいのよねぇ〜。尊様も清様を大切にしないと飽きられてしまいますよ?」


 「よね!よねは、なんて失礼な事を言うのさ!尊様は私の見立てではマラは大きいし、丁寧だし、女が満足するまで果てない男よ!」


 「そうよそうよ!今だって股を見てみなさい!少し膨らんでいるでしょう!通常時でコレなら夜は凄いわよ!」


 「えぇ〜!清様はいいなぁ〜!」


 「ご、ゴホンッ!と、とりあえず・・・ちゃんと男は装備させて事を致してください!結婚するならするでいいから、子供を捨てたり、虐待とかしないように!そんな事見つけたら、見つけ次第罰しますからね!」


 このように、一般の女性も性をオープンにしているのだ。やはり娯楽が少ないからだろうな。あ、オレ?そりゃあ、オレは夜に女に襲われるのは一向に構わん!一向に構わんが、オレの口からは言えない。


 『わ、わ、我が君ッッッ!!!!!聞こえますかぁぁぁぁぁ〜〜!!!?』


 オレが果てて、清さんと微睡んでいると、小川さんに緊急用で渡しているトランシーバーが鳴った。

 向こうの声がかなり焦っているのが分かり、ただ事ではないのが分かる。


 「小川さん!?どうしました!?」


 『も、申し訳ございませぬ!反乱です!!(クソジジイ!そこで何をしている!)我が君!!申し訳ございません!(ゴドンッ!!舐めるなぁ〜!!)』


 「小川さん!小川さん!!チッ。何があったんだよ!!!」


 「尊さま!着替えと片手銃、黒刀を!」


 さすが清さん。オレと小川さんの言葉を聞き、直ぐに準備してくれていたようだ。

 オレは素早く着替え甲賀へ向かおうとした。


 「あれ?清さん!?何してるの!?オレだけで行くからいいよ!」


 「いけません!私は尊さまの妻です!私が行かんでどうするのですか!!」


 「・・・・・ありがとう。急ぐよ」


 「尊!」「「「尊様!!」」」


 「慶次さんに・・・太郎君も桜ちゃん達も・・・」


 「当たり前さ!あんな声が聞こえたら何かあったと思うだろう!甲賀へ行くんだろう?反乱と聞こえた」


 「はい・・・小川さんは確かにそう言いました。本願寺の人達・・・」


 「すまん。ちゃんと人選はしたつもりだったのだが・・・俺のせいだ。俺が責任を取り、反乱を鎮めたら、必ず腹を召す。その後は骸を如何様にしても構わん」


 「つまらん事言わんでください!とりあえず行きます!カナ!カナはどこだ!?」


 「申し訳ありません。私はここで留守番をしておきます。そして、先に謝っておきます。私は人間の営みに干渉する事ができません」


 この時のオレの気持ちは腑が煮えくり返りそうだった。この無関心のような口振り。カナはよく言っていること。『人間な営みに干渉できない』この言葉が異様に腹が立つ。

 武器開発や他にも色々してるのに何故この時はこんな風に言っているのかと。思いっきり干渉してるじゃないかって。

 しかもこの口振りは然も知っていたかのような言い方だ。だが、今はカナより甲賀の人達だ。

 オレはカナに何も返答せずにノアに乗り、飛び出して行った。

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