第60話 さて行くか!
~ 修一 Side ~
俺がこのネットルームに入って特訓開始してからおよそ11日が過ぎた。
時間で言うと264時間くらいが経過した訳だけど・・・・
「我が相棒たる管理の女神よ!『クロック』」
現実世界の時刻を確認すると『06:39:15』との表示。
ネットルームの外にある現実世界では264分で4時間半ほどしか経過していないってことだ。
つまり俺は、たった4時間ちょっとでメチャ強くなれた訳だ。
今更ながらこのスキルすげえわ・・・・
さらに猛特訓のおかげですこし痩せた。
まだまだ中(の下)太りだけど、これでも結構贅肉は減ったんだぜ?
特に首の回りとお腹の部分が。
さっちんから聞いたのだけど、特訓に入る前のこの体は体重112kgもあったそうだ。ちなみに身長は163cm。
この訓練中になんとか98kgまで減らせたのだが、まだまだデブっていると言えるだろうな・・・・
だがしかぁし!!
この特訓で脂肪は強力かつ持久力もある筋肉に変化している(と思う)!
なんてったってこの体で40kmを(俺の男としての尊厳も掛かっていたから)走破できたし、戦闘訓練で20時間も戦えたんだから。
腕力もかなり上がった。それに見た目に反してこの体は素早く動けるんだ!
このドルフィス王国に舞い降りたリトルなサモ〇ンキンポーと言ってもいいくらいだぜ!
アイヤ~ッ! アタァ!!
ジトーーーー
(↑さっちんの『何やってんだ?コイツ』的な視線)
・・・・
コホン・・・・まあそれはおいといて・・・・
さて、この時刻だと現実世界では朝食準備の真っ最中だな。
そして7時頃から朝食ってわけだ。
豆知識だが、この世界にも前世でいう『曜日』というのがある。
そして今日は『太陽の曜日』で、晴れて太陽が出ている日は家族全員で朝と昼を取るというのが我がジャスティス家の習慣らしい(byシュワンの記憶より)
変な習慣だよなぁ
しかも曇りの時は当主の判断を仰ぐなんて手間が掛かるらしい。
アホくさ・・・・
まあ、そんなことより重要なのは・・・・今日は晴れているという事だ。
つまりそれは、あと20分ちょっとで(ネットルームで過ごすなら20時間後に)家族全員が食堂に揃うという事だ。
そして俺は、その場所に乗り込む予定だ。
俺自身で家族やリオナさんにレオナさん、そして馬鹿メイドたるクミンの顔も直で見ておきたいし、改めて周りがシュワンをどう見てるのかを自分自身の肌で感じておきたい。
ついでにいうと、シュワン消失に関わった奴らに多少なりとも『お礼』もしておきたいかな。
だけどそれだけじゃダメだろうな。
今後の事・・・・俺自身の予定をある程度はちゃんと考えておかないと。
だから残りの時間は、俺の今後の事について考える為に使おうと思った。
当然、相談に乗ってくれるよな?
俺のパンチラ相棒たる『さっちん』よ!
「誰がパンチラ相棒ですかっ!!」
***
その後・・・・
俺はさっちんとの相談が終わり、俺専用のネットルーム室内で1人になった。
豪華なソファに座って自販機で買ったゼロペプ〇コーラを飲みながら、先程終えたさっちんとの相談を思い返していた。
まず結論として、俺は一時的にジャスティス公爵家から離れることにした。
そして、結界外にある砦に向かう。
理由はいくつかあるが、
・親や兄姉、多くの執事やメイドからも見下されて嫌われているので、
ここにいると色々と面倒な目に会う事が多くなる。
・ネットルーム用の資金を貯める為に、魔物を狩る必要がある。
ここにいると多々妨害があるだろうから、なら最初から妨害が入らない場所で
思いっきり狩りたい。
・色々な別種族と会ってみたいという個人的な思い(欲望?)がある。
・信用できる仲間を見つけたい。
ジャスティス公爵領のみならず、ドルフィス国内では見つけるのは
難しいだろうから、結界外に出る必要がある。
などが上げられる。
とにもかくにも、今の俺には味方っていうか仲間が全然居ないからな。
まずは外に出て、人族であれ亜人族であれ
色々会ってみて信用できる仲間を増やさん事にはどうしようもない。
あと次期当主に選ばれる為にも、有能な仲間を見つけなければならない。
本当は当主なんて興味ないけど、あの兄達にくれてやるくらいなら俺がなってやろうと思っている。
それと、これは趣味が悪いと思われるかもだが・・・・
俺というかシュワンに対して無視やら酷い態度を取っていた奴らが、俺が当主に選ばれたらどんな態度を取るのか見てみたいと思った。
で、そいつらに対してどんなザマァを食らわせてやろうか考えると・・・・
正直、ワクワクしてくる!
案外、地縛霊の10年間で性格が悪くなったかも知れないな、俺(笑)
仮に当主になれなかったら、それはそれで構わないと思っている。
何故なら、さっちんから聞いたのだが人族の国なら他にもあるからだ。
最悪、そこに移り生活すればいいってワケさ。かなり遠いらしいけどね。
ただ、公爵家を離れるに関して気になる点がある。
リオナさんとレオナさん、そして弟のデクスの存在だ。
デクスに関して言えば俺に考えがあるから良いとして、
問題は・・・リオナさんとレオナさんだ。
彼女達にどう対応するべきか、正直戸惑った。
まず転生した俺からみても、2人は凄い美人だ。
可能なら、ぜひ2人共に嫁にしたい!
けれども、公爵家から離れる際に連れていくというのは無理だろう。
何せ、彼女達はジャスティス公爵家のメイド筆頭と次席だ。
だからといって、離れる前に口説いてモノにするという事も出来ないだろう。
モノに出来たのなら「シグリーシャの盟約者」となるから置いていっても安心なんだけどなぁ・・・・
5歳も年上だし、彼女達からするとどうも俺(シュワン)は弟みたいに思われている節もあるからな。
更に今現在の太った醜い姿の俺では、到底口説けるワケがない。
それに・・・・あの馬鹿女の為にリオナさんを専属から外してしまったからな。
あの時のリオナさんの顔を思い出すと、今現在どう思われているのかも気になる。
正直、嫌われていても不思議じゃない。
俺の能力『憑依』を使えば、今の俺に対してどう思っているのかを知る事は出来るんだろうけど、将来嫁にしたいと思っている人に対して『憑依』を使うのはちょっと気が引けるからな・・・・
だから、何気なくさっちんに聞いたんだ。
でも、さっちんは教えてくれなかった。
*** 以下 少し前の出来事 ***
「リオナさんやレオナさんがシュワンさんの事をどう思っているかとか、
どうすれば嫁にできるかとかは・・・・
私がお教えすることは出来ません。
修一さんが自分自身で『考えて』『決めて』『行動する』べきです。
だって・・・・」
さっちんが俺の近くまできて、胸を指で押す。
「これは、新しい修一さんの人生の恋愛なんですから。
そういった事に関しては私の力とかを借りたらダメですよ。
修一さん自身で何とかしないと、ね?」
・・・・
耳が痛い・・・・
そうか・・・・そうだよな
何から何までさっちんに教えてもらうってのもおかしいよな
これは俺の新しい人生なんだ
俺が自分でなんとかすべきなんだよな・・・・
「すまん。じゃなかった、ごめんなさい。さっちん」
俺は丁重に頭を下げて謝罪した。
「いえ、判って頂ければいいんです。
もしかしたらフラれるかも知れませんけど、
でも、それも含めて修一さんの新しい人生ですよ。
大丈夫です。落ち込んだ時は私が慰めてあげますから。
エッチな慰めはしませんけどね!」
*** 少し前の出来事 終了 ***
ふふ、ホントその通りだ。
しかも、『慰めてあげるけどエッチはなし』ってのがさっちんらしいや。
では、俺自身で考えて決めるとしようか
彼女達に関しては・・・・
・・・
・・・・・・
うん、『行き当たりばったり・なるようになる作戦』で行こう!
・・・・だって俺は前世でモテた経験ないし、美女に対してどう接すればいいかなんてわからないから(涙
けどそれが『俺』らしい気もするので、まあ良いか。
開き直った俺は、目の前にあるパソコンの電源を入れた。
はは、そういえばせっかくネットがやりたいと言って貰ったスキルなのに、今まで電源すら入れてなかった事に気づいた。
早っ!たった3秒で起動した。
画面を見ると・・・・
おお、俺が亡くなった時に使っていたWi〇7そのまんまやん!
てっきり10かと思っていたけど、これはこれでちょっと嬉しい。
そして少しだけネットサーフィンしてみると・・・・
うむ、いろいろ漫画やらアニメやらが見れるサイトがあるな。
あの大手通販アマ〇ンもどきのサイトもあるな。楽しみ♪
さてゆっくり・・・・
・・・・
・・・・
俺は少しだけネットでいろいろ見たりしようかと思ったが、それらをヤメてそのままパソコンの電源を落として部屋を出た。
やっぱり動画観賞とかゲームとかは、落ち着いて出来る時にしないとダメだな。
うん、さっさと気になる事を済ませるとするか!
俺はこの後すぐ、現実世界に赴こうと決めた。
睡眠・・・・OK!たっぷり寝た。
食事・・・・OK!オカカ梅干おにぎりと麦茶は美味かったぜ!
服装・・・・OK!さっちんが訓練部屋でくれた現実世界へも持っていける
服と靴(ついでに下着も)を身に着けている。
革の茶色ズボンが一番のお気に入りだ。
持ち物・・・・OK! だって何にも無いし必要ないから(笑
じゃあ、さっさと行くとしますか!
俺はネットルームの出口まで行くと、さっちんが待っていた。
「もう、行くのですか?」
「ああ、あと数時間くらいのんびりしようかと思ったけど、やっぱりこういうのは
早いうちに済ましておく方がいいと思うからな」
「わかりました。大丈夫とは思いますがご武運を!
あ、あと修一さん、ネットルームから出たら次からは1日2時間までしか
居られませんから、忘れないで下さいね。
滞在時間を増やすためにも、早く魔物を狩ってきてくださいね」
「あいよ!
じゃあまたな・・・って言うのも変か?
だって常に俺と一緒に存在しているんだからな。さっちんは」
「クスッ。そうですね。
よく考えると面白い関係ですよね。私たちって。
まあ、私がこの姿で会って話せるのはこのネットルーム内だけですので、
『また』でいいと思いますよ。
では行ってらっしゃい。修一さん!」
「おう、行ってくるぜ!」
俺はさっちんに背を向け、格好つけて親指を立てながらネットルームを出た。
***
そうして、俺はこの部屋に戻ってきた。
俺にとっては10日以上ぶりだ。
この転生した世界で初めて目が覚めた場所であり、シュワンの最後の場所・・・・
今更ながら見渡してみると・・・・とても公爵家の息子が1人で住む部屋じゃないと感じるな。
まあ当り前か。もともと住み込みの庭師の為に用意された家だ。
最低限使えるという程度の家具しかない。
ああ、そういえばベッド横に木製の小さい棚があったっけ。
俺はシュワンの記憶を思い出して、その棚の一番上の引き出しを開けた。
そこには記憶どおりに、小さな木のペア人形があった。
『将来、この人形のように一緒になりましょうね』
シュワンが11歳の誕生日に、クミンから貰った人形・・・・
クミンに恋していたシュワンが、この離れの家にまで持ってきていて
大事に仕舞っていた思い出の品。
はっきり言ってヘタクソな人形だ。
だというのに、大事に取っておいたんだな・・・・シュワン・・・・
俺はそれを・・・・取り出して・・・・
「念消力」
綺麗さっぱり、消しさった。
そしてシュワンが最後に横たわっていたベッドに向かって語りかけた。
もうシュワンは存在しない事は判っているけど、なんかそうする事が『けじめ』でありシュワンへの
「シュワン、お前の大事な品を消してしまって済まないな。
俺はお前ではないから、さっきの品に愛着もないしクミンを許す気もない。
せめて、お前と同じく消し去ってあげるのがいいと思ったんで消させて貰った。
それと、改めて言わせてくれ。
お前の体と身分は、俺が貰い受ける。
ただ、お前の『シュワン』と言う名前だけはお返しするよ。
この『シュワン』と言う名前は、家族みんなで仲良くする事を夢見て、
兄弟やメイドなどからどのように言われても決して怒らず憎まずにいた優しい男の名前だ。
俺はシュワンのように純粋にはなれないし、馬鹿にする奴ら、
暴力を振る奴らに対して許してやれるような優しさもなければ善人でもないからな。
だから俺は『シュウイチ』と、名前を変えさせて貰うよ。
たった今から、俺は『シュウイチ・フォン・ジャスティス』だ。
あと、体と身分を貰ったお礼に約束する。
お前を辛い目に合わせた奴らには、きっちりお返ししてやる。
しっかりと償わさせてやる!
お前は優しいからそんな事は望まないかも知れないけど、な・・・・」
俺はドアを開けた。
朝日が眩しかった。
最後に振り向きベッドに向かって
「じゃあな、シュワン」
そう言ってから、扉を閉めた。
さて・・・・そんじゃあ・・・・
生まれ変わった『俺』を見せに・・・・
ジャスティス公爵家一同の元に行くとするか!
**********
=作者あとがき=
作者の獰猛死神です。読んで頂いてありがとうございます。
またまた更新が遅くなってすみません。
色々書きたいことがあって、でも細かくなるからと省いたりしてました。
作者はチキン野郎ですので、誹謗の類はご遠慮下さい。
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