第74話 こんな所に美女が居た! 4

 ノーライフキングのニルとヴァンパイアロード達の戦いは長期戦となった。


 1対1ないし1対2なら例えヴァンパイアロードが相手でも相性の関係もありノーライフキングたるニルが勝つが、さすがに3体以上のヴァンパイアロードが相手だとニルの方が分が悪かったらしい。


 つまり4体いるヴァンパイアロード側のほうが圧倒的に有利。

全員で一斉に掛かればニルを倒せるのだが、ニルには手下達が居た。

アンデットにしたワーウルフやワータイガー達だ。


 アンデッド達に邪魔されている間にヴァンパイアロードが各個撃破されそうになったり逃げられたりで、ロード側もなかなかニルを倒せずにいた。


 何より一番問題だったのは、やはりヴァンパイアロードたちが

ということだった。


 奇跡的に協力しあってはいるが、もともとは敵対していた関係だ。

いつ裏切られるか判らない状況下で、うまく連携が取れる訳がない。


 つまり一致団結することが出来なかったので、ニルを倒せずにいた。


 ニルのほうも下手に3体以上のヴァンパイアロードとの対決を避ける為に、ロード達が拠点としている城へ攻める事が出来ずにいた。


 こんな感じで、お互いに決めてに欠ける状態になっていたのだが、

この状態を打破できる存在が居ることに気づいた。


 当然、ミルのことだ。


 ロード側からすれば、ミルはヴァンパイアロードの素質を強くもっている為、魔核化すればロードに近い強力なヴァンパイアになる。


 ニルからすればまだ魔核化してないミルなら簡単に倒せて、その上魔眼やら魔力を有するミルを取り込めばさらに強いノーライフキングになれるからだ。


「ノーライフキングになった直後はまだまともだったんですけど、

 ロードの一体を取り込んでしまったニルお姉ちゃんはもう別人でした。

 妹の私も躊躇なく殺して取り込もうとしてきたんです。

 父も父で、『さっさとヴァンパイアになって我々の為に闘え!』って、

 私を実姉を滅ぼすために利用しようとしたんです」

過去を思い出して、悲しそうに語るミル。


 こうしてミルは、故郷であるヴァンパイア領地を捨てる決意をして逃走した。

数年間住めそうな場所を探し続けて、ようやくこの『主神の結界杖』で覆われたドルフィス王国の存在を知り、ここまでやって来たのだという。


 そしてジャスティス公爵家にたどり着き、ここに住み着いた。

ここは無駄に広くて使われない部屋も多いので、色々と都合が良かったそうだ。


「それは辛かったな。

 でも何気にミルも凄いな。

 だってミルは、ヴァンパイアロードからもノーライフキングからも

 逃げることが出来たってことだろう?」


「あ、ありがとうございます。

 その、恥ずかしい話なのですが逃げ足には自信あったんです」

と、顔を赤くして話すミル。その姿も本当に魅力的だ


「あの、私からも聞いていいでしょうか?シュワン様」


「いいけど、何だ?」


「どうしてシュワン様がノーライフキングへ魔格化したお姉ちゃんの事を

 知っているのでしょうか?」


 あ、そういえば説明してなかったな。そりゃ当然疑問に思うよな。


「色々説明不足だったな。すまない。

 時間が無いので要点だけ説明していくが、そのまえにミルよ。

 今後俺のことは『シュウイチ』と呼んでくれ」


「『シュウイチ』様ですか?」


「そうだ」


 今度は俺の事を、簡略にミルへ全て話した。

→前世では修一という名だった事

→こことは違う別世界で死んだ事

→兄弟やクミンのせいでシュワンの魂が消滅してしまった事

→シグリーシャが使徒として俺をシュワンの肉体に転生させてくれた事


「シュ、シュウイチ様がシ、シシシ シグリーシャ様の使徒ぉ~!!?」


「そうだ」


「そ、それは凄いです。さっき私が閉じられていたバリアにも納得なのです!」


「そうなのか?」

そう褒められても、いまいちピンと来ない俺だった。

とにかく、俺は説明を続けた。


→シグリーシャから転生特典としてこのネットルームや意識と身体を与えられた

 危険察知スキル(つまりさっちん)を貰った事

→この世界で生き抜くために、ネットルームの特訓部屋に篭って訓練した事

→その時にさっちんが仮想で出した敵の1人がミルの姉であった事


「ええっ、じゃあシュワ・・・・じゃなくてシュウイチ様はノーライフキングになった

 ニルお姉ちゃんを倒したのですか?」


「いや、俺が倒したのはあくまでさっちんが作った『仮想ゴーレム』のニル

 だけどな。

 でもさっちんは強さもほぼ本物と変わらないって言っていたぞ?」


「そ、そんなことが出来るんですか?」


「ああ、何せ最強の管理女神に身体と意識を与えられた存在だからな。

 俺にすら言っていない能力も持っていそうだしな」


 ちらりと離れた場所に座っているさっちんを見ると、ふんぞり返ったその姿が

『ええ、私はいろいろと凄いんです』

と自慢しているように見えた。まあ実際すごいからな。


「そ、それが本当なら・・・・あ、あの、シュウイチ様っ!」

ミルが急にイスから立ち上がり俺の横に来て、また土下伏せをした。


「お願いします!

 私とヴァンパイア領域に行って貰えませんでしょうか!?

 そして、どうかニルお姉ちゃんを救ってほしいです!」

そう、俺に申し出てきた。


「ど、どうした急に?」

いきなりミルからそんなお願いをされるとは思っていなかったので、

俺は困惑してしまった。


「私にはどうすることも出来なかったので逃げましたが、

 シュウイチ様がニルお姉ちゃんを倒せるほどの神力を持っているのであれば、

 可能性があるんです!

 まだ、お姉ちゃんが滅ぼされずに父たちとの抗争が続いているのであれば・・・


 無茶なお願いを言っているのは承知しています。

 代わりに、私に出来ることはどんな事でも致しますから!!」


 ・・・・



 俺は、頭の中が真っ白になっていた


 ヴァンパイア領域に行って欲しいとか、ニルを救えとかでじゃない



 俺の聞き間違いでなければ・・・・




 ―「



 ミルが、そう言ったからだ。



 転生小説とかでなくても、よく聞く定番の台詞だ。

しかも窮地に落ちた姫とか王女とか、ヒロイン的な女性が言う台詞。



 まさか、まさか俺自身が聞く事になろうとは!!

しかも、こんな爆乳美女のヴァンパイアハーフからなんて!!



 俺は感動と、ミルみたいな美女が本当にという、

それこそマンガのような出来事が現実になろうとしている事に・・・・


 

 興奮が抑えられずにいた



 **********

 =作者あとがき=


 作者の獰猛死神です。読んで頂いてありがとうございます。


 台風に土砂崩れにコロナ変異種拡大と、本当に最近は色々大変です。

 皆さんも気をつけてください。


 俺の場合はまず自身の体調管理からです(w



 作者はチキン野郎ですので、誹謗の類はご遠慮下さい。

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