第62話 遭遇 メイド2人組 後編

 

(我が管理神よ!『サイレンス』)


 俺は心の中でサイレンスの神法を唱えた。


 このサイレンス、普通は周りの音を全て消し去る神法だ。

けれどもそこは最強管理神シグリーシャ、融通が利く。

早い話が、俺の望む形で音を消し去ってくれるんだ


 俺は今の神法、俺から半径5m内の音を外へ漏らさないようにと願った。

つまりここの音は5m先からは聞こえないって事だ。


 何故こんなふうに『サイレンス』を設定したのか?


 それはもちろん・・・・


 こいつらの悲鳴を聞かれないようにする為だ!

あと、俺の怒りの叫びもな


 馬鹿にしながら俺を見ている・・・・

いや、見下している2人に対して俺は




 

 怒りの表情に変えて言い放った!



「まともに挨拶も返せないのか?

 やっぱ平民出のクソメイドだな。

 貴族に対する礼儀ってのが全くなってねぇな!」


 俺の言葉に『ビクッ』っとする2人


 そりゃあビックリするだろうな

今までシュワンはこんな表情も話し方もしてなかったからな


「「な・・・・何を言っ・・・・」」



「黙れっ!!」



「「ヒッ!!」」


 

 俺は大声で彼女達に怒鳴った。

無論、怒気全開で!


「おまえら・・・・公爵家に仕えている平民の分際で・・・・」

俺は拳をバキバキ鳴らしながら近づいていく


「「あっ・・・・あ」」

いつもと違う雰囲気に気づいたのか、急に震えだす2人。


「貴族の俺に向かって馬鹿にした口を・・・・」

俺は拳を握って・・・・


「叩いてんじゃねぇぞっ!!」


 2人の腹を一瞬で殴る!


「うっ」「ぐがっ」


 うずくまり腹を押さえる2人

百キロ近い俺が、筋トレやら実戦もどきの訓練で鍛えた拳だ。

多少は手加減したが、それでもただのメイドが耐えられるワケがない。


 俺は片方のメイド・・・・名前が判らないからメイド1でいいか

メイド1の襟首を掴んで起こす

そして、かなり強めにひっぱたく!!


「あがっ!」


 普通なら頬を叩くが、俺は平手で鼻の上から叩いた。

すぐ鼻血が流れ出た。


「あぐぅ・・・・がぁ」

「ほら、貴族の俺に無礼な口を叩いた事に対しての謝罪はないのか?ああ?」


 俺に襟首を捕まれているメイド1は、もう一度叩かれると謝罪してきた。


「しょの・・・・もうひわけ・・・・ありまふぇんへした」

涙と鼻血を流しながら謝罪するメイド1。


 ・・・・ちっ!


 これでひとまずは止めておいた。

本当はもっと叩きのめすつもりだったんだけど、なんかこの泣き顔を見たらその気が失せた。


 そして残り1人を見ると・・・・這いつくばりながら逃げようとしていた。


「1人だけ逃げようとしてんじゃねえ!」


 俺はそのメイドの横腹に蹴りを見舞った。


「ぐっ!!」


 痛みで横腹を押さえ苦しんでいるそいつの襟首を掴んで、持ち上げた


「相方はきちんと謝ったって言うのに、

 テメエは謝罪もせずに逃げる気だったのか?」


 俺は開いている手の指で、このメイド2の鼻を握ってやった


「痛っ!あ の・・・くっ そっ うぐっ もうし わ け・・・・ 

 ござ い ません・・・・」


 痛みでか恐怖でかは知らないが片言で謝罪するメイド2。

こちらも涙目になっていた


 ・・・・くそ!


 こいつに対しても、とりあえずここで止めておいた。



 俺はイラついた



 本当ならもっと完膚なきまで叩きのめしてやるつもりだった。

けど・・・・俺にも情というものがあるからか、泣いて震えているこいつらをこれ以上叩きのめす気になれなかったからだ。


 とはいえ、こいつら本当に反省しているか?態度を改めるか?


 今は俺が怖くて謝罪しているだけで、本当に反省しているかどうかと言えば、反省してない気がするんだよな。

これまでの態度を見てると尚更な。


 『憑依』を使えば・・・・

いや、今は痛みと恐怖でまともな思考なんて出来ていないだろう。使うだけ無駄だな。

更に言えば、こんな奴らに『憑依』なんて使いたくない。


 ・・・・


 俺は少し考えて、こいつらを試す事にした。

こいつらにとっては今後の人生をかけた試練だ


 元の状態に治して、もう一度お前らの本性を確認させてもらう!


 (我が管理神よ!)

 

 俺はパスを繋げて2人に神法を使った。


 「ヒール×2」

 「クリーン×2」


 淡い光が2人を包む。2人のメイドは当然びっくりしている。


「えっ? 痛みが・・・・」

「汚れも?今の何?」


「黙って俺の話を聞けっ!」


「「は、はいっ!」」


「痛みや腫れが引いたハズだ。あと汚れもな。

 たった今、俺が治してやったからな。

 本来であればお前らの無礼な態度に対してもっと厳しい罰を食らわせて

 やる所だが、今回だけ特別に許してやる。

 そのかわり・・・・」


 俺は離れを指差して


「その離れの中に1時間ほど入っていろ!

 もしそれを破って出てきたら・・・・」


 固唾を飲む2人


「次はないと思え!

 どんな理由や言い訳も聞く気はない!!」


 慌てたように頷く2人


「おら、さっさと入れ!」


「「ヒィッ!」」

逃げ込むようにドアに入っていく2人



 それを見届けてから、俺はどうするかと言うと・・・・


「ネットルーム」


 離れのドアが見える位置にネットルームを出現させて、入り込んだ。

こいつらが俺の命令を聞くかどうか、本当に離れから出ないかどうか

彼女達から見えない場所で少しの間、監視する為だ



 ***



 ネットルームに入ってすぐ出口まで向かうと、そこにはさっちんが居た。


「・・・・お早いお戻りで。

 それにしてもお優しいですね、『シュウイチ』さん」


 お、何かさっちんの俺への呼び方が変わった気がする。


「『シュウイチ・フォン・ジャスティス』

 と改名されたのでしょう?

 なら、私も呼び方を変えないとおかしいですからね。

 それで、あの2人をどうなさるのですか?」


「さっちんは見ていただろう?試しているんだよ」


「それは知っています。

 だからお優しいって言ったのですよ。

 本来彼女達がした事は、この世界では問答無用で粛清されても

 不思議ではないですからね。

 でも私がお聞きしているのは、このあとの事ですよ」


「このあと?

 さっちんはこのあと彼女達がどう行動するのか、

 既に能力か何かで知っているのか?」


「まさか。何も使っていませんよ。

 能力なんか使わなくても、この後どうなるかなんて予測できますからね」


「という事は、さっちんものか?」


「もちろんです。彼女達は間違いなく・・・・」


 ため息をつきながら、俺に言った。


「シュウイチさんの言いつけを破るでしょうね」


 ・・・・


 やっぱりそうか・・・・

あいつら性根からもう腐っててダメって感じがするからな。

でも・・・・


「俺もこのあと予定があるから、15分だけ出なければ

 見逃してやるつもりなんだけどな」


 さっちんは再度深いため息をついて

「あの2人なら15分も要りませんよ。

 長くても10分程で出てくるでしょうね。

 なにせ、つい先日まで見下していた相手に殴られたのです。

 冷静になれば先程の事はだんだんと怒りに変わって、

 報復する為にすぐ行動に出ますよ。

 シュウイチさんの気配が感じられなくなれ・・・・

 あら、予想以上に早かったようですね」


 さっちんが指差した先には、周りをきょろきょろ確認しながら扉から出てくるメイド2人



 ・・・・


 

 はは・・・


 はははははっ!


 まだ5分も経ってねえよ


『もうあのクソデブは居ないようですわ』

『早くグリトラ様に報告して、然るべき罰を与えてもらいましょう』

『そうね、あとアーレン様にも報告して、

 またあの猿人執事さんに躾けてもらいましょうよ』

『ええ。そしてあのブタが泣き喚く様を見物するのもいいわね。

 さ、急いで報告しましょう!』


 俺が居ないからと、また平気で悪口を言って走り出すメイド2人


 ・・・・


 許して、治療もして、その結果がこれだ


 本当に・・・度し難い!


 俺はネットルームから出た



 ***



 走る2人の後ろに出た俺は、声を掛けて止めるなんて事はしない


 無論、


「念縛鎖×2!!」


「え?」「きゃ!」



 急に足が動かなくなくなって倒れる2人

俺が足を念縛鎖で縛ったからだ


 そんな2人の元へ、再び近づいていく

俺に気づいた2人は、慌てて声を掛けてきた


「そ、そ、そこで止まってください」

「そ、そうです。そして私たちの話をお聞き下さい」


 この期に及んでまだ言い訳でもするつもりか?

さっき俺が言った台詞をもう忘れているようだ


 けど、いいだろう

俺は念縛鎖は解いてやった

変わりに

(我が管理神よ!)

サイレンスをまた掛けた


 足が動くようになった2人は、不思議そうに足を確認しながらも立ち上がり

そして・・・・さえずりはじめた


「わ、私どももその、あの、グリトラ様に直属として仕えている身分ですので

 どうしてもあの・・・」


「そ、そうです。どうしてもあの、あそこに1時間もいる事が、出来なかった

 のです」


「そう、そうなんです。それに、た、確かに私どもはシュワン様に対して少々

 無礼な口を叩いていたかもしれません。

 その事については改めて謝罪致します。申し訳ございません」


「そ、そうですね、申し訳ありませんでした。

 で、ですが、さっきのは明らかにその・・・過剰な罰です。

 グリトラ様に報告する事になります。よ、宜しいのですか」


 少々? 以前からあれほど言っていたのにか?

過剰? 自分達が処刑されて仕方ない無礼を働いているのにか?


 もう話し合いする気にもならない

けど何も言わないからなのか、調子に乗ってさらに喋りだす馬鹿2人


「私たちも鬼ではありませんので、今ここできちんと謝罪していただければ」

「ええ、軽い処罰で済ませて貰うよう進言してもいいですわ」


 もう 限界だ。 


 次は遠慮なんてしない・・・・









 徹底的にぶちのめす!!



「だからどうした?」


「「え?」」


「『どんな理由や言い訳も聞く気はない』って言葉をもう忘れたのか?

 今からお前らが・・・・ぶちのめされる事に変わりねえよっ!」


 次の瞬間、俺は動いた

右拳で左に居たメイド2の左横顔を

返しの左拳で右に居たメイド1の右横顔を


 遠慮なく殴った!


 悲鳴を上げて倒れる2人。

俺は倒れたメイド2にまたがり胸倉を掴んで


 今度は平手なんかじゃなく


 正拳で顔のど真ん中を殴った


 ドカドカドカドカドカ!!

 殴る殴る殴る殴る殴る!!


「ウゴッ グッ! やめ アガ! アガッ!」 


 メイド2の鼻が折れ、上下の前歯が折れた


 

 俺は起き上がり


(我が管理神よ!プロテクション!)


 プロテクションを掛けて


(身体強化3倍!)


 身体強化を掛けた右足を上げて 


 ぐったりしてるメイド2の左脚の膝を


 力を込めて踏みつけた!


「うぎゃああああああーーーーーーーーっ!!」


 失いかけていた意識が痛みで覚醒し絶叫するメイド2。


 一踏みで骨が折れた。いや、間違いなく砕けている。

もっとも、そうする為に身体強化を掛けたわけだが…


 下手をすれば左足は壊死するかもだが、知ったことか!


 メイド2への制裁を終えて、メイド1を見る


 メイド2がボコボコに殴られるのを見ていたであろうメイド1は

何も言えず震えながら失禁していた


 メイド1へ近づいていくと


「ごごめんなさい申し訳ありません、ど、どうかお許しを・・・・ 

 な、何でしたら今後はシュワン様の専属になって、尽くさせていただきます」


 腫れた右頬を押さえて涙しながら謝罪するメイド1


 何をいまさら・・・・


「今更遅せえんだよっ!!」


 身体強化が掛かったままの足のつま先で、メイド1のあごを蹴る!


 「アグッ!」

 

 グシャと鈍い感触が伝わってきた。

間違いなくあごの骨が砕けた


 でも、メイド1もこれだけじゃ済ませない。

俺は今度は左足を上げて・・・・



 メイド1の右足、膝上付近をおもいっきり踏みつけた!


「が%!$%&¥ぐ@*----!!」


 もはや何を言っているかも不明な叫びが響く


 メイド1の右足も間違いなく砕けた。

 

 

 痛みでうめき泣く2人に向かって、言ってやった


「てめえらが俺の指示を破って出た後、グリトラに頼んで仕返しするとか

 猿人執事に躾けて貰うとか言っていたのは全部聞いてたんだ!

 せっかくあの程度の罰で許してやって、治療までしてやったのによ。

 本当に救いようのない馬鹿だな!」

  

「いだい、イダイイダイ!!うぁああーーんイダイよぉーー!

 オネガい治してぇ!イタイよぉー!!」

「おへはいしはす!おへはい、ほうはぁなおしへくはさひぃ!」


 2人は懇願してきたが、当然治療してやるつもりなんて全くない


「治してやるワケないだろうが!

 もうその足じゃまともにメイドなんて出来ないだろうよ。

 お前等のようなクズがポーションなんて持ってねえだろうし、

 教会で治してもらえるだけの貯蓄もありそうに見えないしな。

 せいぜい・・・・」


  2人に履き捨てるように言ってやった


 「せいぜい後悔しろ。そしてその不自由になった体で生きてゆけ」



 


 2人を見捨てて、食堂がある公爵家本館へ向かっていった。




**********

=作者あとがき=


作者の獰猛死神です。読んで頂いてありがとうございます。


好かない人にはつまらない話だと思います。すみません。

また女性に対して酷すぎないか?って声が聞こえそうで怖いです。


でもまあ作者的にはこれくらい良いかなと思ったので書きました。


次は猿人と、主人公をブタと言って殴った執事の話の予定です。


今回より酷い話になる予定ですので、苦手な方は注意して下さい。




作者はチキン野郎ですので、誹謗の類はご遠慮下さい。

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