第63話 元シュワンの部屋

 俺は本館に入り、シュワンの記憶を頼りに食堂へ向かった。


 けど、向かう途中で一度止まった。

元シュワンの部屋へ到る階段が見えたからだ。


 まだ時間は・・・・うん、あるな

元シュワンの部屋でやっておきたい事があった俺は、先にその部屋へ行ってみる事にした。


 階段を上がり部屋の前まで行く。

今ではグリトラの私物化した部屋。


もうグリトラやクミンは食堂に行っているとは思うが、念のため

「我が管理神よ!【ソナー】」

神法で人の有無を確認した。


 よし、誰もいないな


 鍵が掛かっていたが、今の俺にとって中世の鍵なんぞ意味がないのだ。

だって単純な構造のものだからな。

要はドアから出ているを無くせば開くんだから簡単さ。


「念動力」


 かちり!

音を立てて開いた。やっぱり便利だ、俺の念動力!


「ぐふふふ、泥〇でぇーす!」

と、どこかの三世的なお約束を一瞬言おうかと思ってしまった。

たが、元々はシュワン(つまりは俺)の部屋なワケだし自室へ潜入するのに言う台詞じゃないから、止めてそのまま入った。


 うん、前回みた記憶どおりにまず在るのは待合室もどきの場所だ。

まあ、こんな所はどうでもいい。少し進み右に入る


 ・・・・


『広くて豪華だなぁ』

それがシュワンが前に使っていた部屋を見た時の、最初の感想だった。


 りっぱな暖炉に動物の剥製。いかにも豪勢な中世時代の部屋って感じだ。

やっぱり『記憶で知っている』と『直に見る』とでは違うものだな


 シュワンの古い記憶が蘇る

まだ幼さが残る姿のリオナさんとレオナさん、そしてまだ優しかったクミンと一緒に過ごしていた頃が。

シュワンにとって思い出のある大事な場所。


 けど・・・・今ではクミンに裏切られグリトラに奪われた場所だ


 よく見回すと、シュワンの記憶には無い高価そうな金細工の装飾品や絵もたくさん飾られていた。

たぶんグリトラが追加したものだろう、ずいぶん金が掛かっているのが判る。


 ふん、


 ついでに寝室も見ておくかと、隣部屋への扉に近づいたんだが・・・・


 『クミンとグリトラの情事』の記憶を急に思い出して息苦しくなった




 これってまさか『フラッシュバック』ってやつか?


 俺は寝室の扉から離れて、ゆっくり息をする。

すぐに落ち着く事ができた。


 しかし・・・

ただ寝室に近づいただけでこんな状態におちいるとは、

シュワンはそれだけあの時『心に傷を負った』って事だよな・・・・

 

 オーケー、わかったよシュワン

寝室も見ておきたかったけど、ならさっさと用件だけ済ませるさ

 


 さて、何故俺がこの『元シュワンの部屋』に来たかというと・・・・



 



 思い返しただけで腹立たしくなる。

猿人に殴られて連れ去られる時のあのクミンの表情!


 その後よりにもよってあのクソメイドはシュワンが使っていたベッドで

嬉しそうにグリトラと愛し合ってやがった!

シュワンが自分クミンの事を好きだと知っていた癖に!


 そんなクミンの愛の巣と化した部屋なんぞ、

いくらシュワンの思い出の場所だと言っても残しておきたくない。

俺はシュワンじゃないからな。

だから消してやるのさ。部屋ごとな!


 ある意味これはグリトラとクミンへのだ。


 ふふ、グリトラとクミンが戻ってきた時にベッドやら金を掛けた装飾品含む

どう思うんだろうか?


 考えただけで、とてもワクワクするぜ!


 まあまずは驚くだろうが、そのあとでどう感じるかな?

怒るか?恐怖するか?それとも唖然とするか?

案外、金を掛けた品が消えて呆然とするかもな


 その時の顔が見れたら面白いだろうが、まあ出て行く予定なので無理だろう


 でもいいさ。

これでまずはひとつ、シュワンの仕返しができると思うからな!


 俺は待合場所もどきの場所まで戻った



「じゃあさよならだ、シュワンが過ごした思い出の部屋よ」



 俺は精神を集中させた


 



 この体に刻まれてたシュワンのトラウマと一緒に・・・・



 「消えされっ! 念消力ぃ!!」

 


 


 




 ジュワァアアアア!!!!!!!!!!!!!






 ・・・・

 


 ・・・・



 

 部屋ごと丸々消えて、空や屋敷の周りがよく見えるようになった。


 残っているのは、ドアとこの待ち合わせもどきの場所のみ。


 ああ、床だけは1階の屋根代わりとして残しておいた。





  あー めちゃくちゃすっきりした!


  ざまぁみろ。グリトラ!! クミン!!



 


  せいぜい、後で驚きやがれ!





**********

=作者あとがき=

作者の獰猛死神です。読んで頂いてありがとうございます。


予定がすこし変わってしまいました。すみません。

以前馬鹿にした執事や猿人との対決は次回になります。


また、「魔物」を「怪物」と書いていたので訂正しました。



作者はチキン野郎ですので、誹謗の類はご遠慮下さい。

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