第70話 何でこうもトラブルが?

 俺は食堂へ向かっていたが、まだ到着してなかった。


 何せこの公爵家、めちゃくちゃ広いからな。


 シュワンの記憶から知ってはいたけど、俺自身では初めて見る異世界の洋風の長廊下が珍しくて、ちょっとだけキョロキョロ見ながら歩いてるせいもあるだろう。


 

 あと何気に広い屋敷の廊下って、実際歩くとなかなか『怖い』もんだな。



 横幅もそれなりにある広い廊下だ。

そして途中に開けてある(前世でいう窓の役割を担っている)小さい木扉から入る光の入り具合が、更に不気味感を増しているんだ。


 見た事はないだろうか?無い人は想像してみてほしい。

学校などで普段は使われておらず暗幕で覆われている教室内で、一箇所だけ暗幕が開いている光景を。


 その開いている場所や暗幕の隙間から光が少し入ってきても、細部までは届かずに薄暗くて、その届いていない場所がちょっと不気味で怖く感じる光景を見た事ないか?


 今俺が歩いているのが、そんな状態の廊下なんだ。

そこを1人で歩いているんだぜ?


 まさに前世でやった有名ゲーム『バイ○ハザード』の洋館を、1人で歩いている恐怖&緊張感みたいなのがあるぜ!(ちょっとおおげさかも知れないけどな)


 まあ、そうは言っても実はもうこの廊下の隣は食堂なんだけどね。

従者や専属料理人とかが出入りする場所ならもっと近くにあったんだが、やはりここは正面入口のドアから『ばばーん!』と格好よく入って行きたいじゃないか。


 だから少し周り道したんだが、ちょっと失敗したかもな。


 けど、あともう少しだ。

うっすらとだが人が多数いる気配を隣から感じるから、まだ食事は続いているみたいだ。


 よし、急ごうか!

と、思っていると・・・・

 

 【ピロリロリーン♪】


 と、さっちんから注意を示す音


 

 ・・・・




 ・・・・はぁ



 俺って、何か呪いでも掛かっているのか?

それとも、シグリーシャですら把握出来てない運の悪さでもあるのか?


 なんでまた急いでいる時に、こういう茶々が入るのだろうか?


 俺はため息をつきながらも辺りを見回すけど・・・・



 あれ?何もないぞ?


 いったい何が『注意』なんだ?

さっちんの誤報か?


 [ 💢 !!!]

・・・・なんかさっちんが怒っている気がするな。冗談だよ。

 


 でも本当になにも・・・・



 ・・・・ 



 いや、よく見ると5メートルほど先の壁側付近がおかしい。


 うまく言えないが、なんつうか光学迷彩が掛けられているような?

しかも、何故かその場所に『近づきたくない』という気持ちが沸いて来る



 あの場所に何かあるのか?



 俺は(我が相棒たる管理の女神よ!)と心の中でパスを繋げて、

その怪しい付近に【ティスペル】の神法を唱えた。


 この【ティスペル】は、掛けられている魔法を『解除する』神法だ。


 すると、その壁付近のが壊れた。



 ビクッ!!



 俺は何かが壊れた後に見えたモノに対して、びっくりしてしまった。


 だって、

その雰囲気が館と合っていて、めちゃくちゃ怖ぇ~!!

しかも濃い魔力も感じた。

 

 こいつはなんだ? 異世界魔族版の貞○かよっ?!

俺はとっさに構えて、【ハイプロテクション】【ハイカウンターマジック】を唱えた。


 また念の為、回りに被害が及ばないように【ホーリーバリア】を掛けた。

あとついでに【サイレンス】もだ。

ここでの音を聞かれて、食堂の人達がここへ来るのを防ぐ為だ。


 ちなみにホーリーバリアはその名の通りの、神力で出来た不可視のバリアだ。

この中で放たれた魔法や神法などは指定した範囲から外へは漏れないし、逆に解かない限り外から中へ入ることも出来ない。


 その金髪メイドは、俺に見られている事に気づいてビックリしたようで、顔を隠している前髪の一部をかきあげて、赤い瞳で俺を見つめてきた!


 これは『魅了の魔眼』か!


 けど、俺には通用しないぜ!

何せ特訓で耐性がついているからな。


 もっともさっちんが言うには、魂力が大きい上にシグリーシャの加護を受けている俺に、その類は全く効かないらしいけどね。

残念だったな!


 俺はそのメイドに向かって

「ホーリーショット!!」

神力弾を撃ち込んだ!



「え、どうして魔眼が効かないの? ってキャ!!」

腹に弾を喰らったメイドは、後ろに吹っ飛んでいった。




 ・・・・



 ・・・・




 いまホーリショットを当てたときに判明した事がある・・・・






 このメイド、めちゃくちゃナイスなバディをしている!!

(こんな時でもそういう部分はしっかり見ている俺であった)





 身体が沿ったとき胸部にはすごく高い2つの山が見えたし、倒れた際に見えた生足は見事に健康的な白肌で、かついいラインをしていた。



 ・・・・残念ながら下着は見えなかったけど・・・・



 よし、なら方針変更だ!

倒すのではなく、束縛してやるぜ!


「バインド!」

神力で出来た光の紐が、メイドを縛ろうとするが


 ヒュン!


 何ぃ!?


 メイドが高速で動いて視界から見えなくなったので、【バインド】が消失した。


 そういえば【バインド】は視界を遮られたり高速で動かれて目標を一瞬でも見失えば効かないって、さっちんから聞いたっけな。


 くそ!メイドは何処に・・・・


「キャぶっ!」

と声がしたのでその方向をみると・・・


 ホーリーバリアにぶつかったようで、顔を押えて蹲っている金髪メイドがいた。


 よし今だ!

「念縛鎖ぁ!」

俺は念の鎖で、金髪メイドを拘束してやった。


「あれ?どうして!なんで?」

体が見えない何かで縛られている事に、驚いている金髪メイド。


 縛られているのにすごい力だ。

まるで海老みたいにピチピチ跳ねて抵抗している。


 俺はそんな金髪メイドの上に跨った。

「大人しくしろ!急に魅了なんてしてきやがって!

 お前何者だよ? 顔を見せやがれ!」


 俺は金髪メイドの前髪をかきあげた!





 そこには・・・・






 以前見た事のある、すごく美しい顔があった



 さっちんとの特訓で見た、あの女魔法師の顔だった






 つまり・・・・




「え、ノーライフキング? なんでこんな場所にオマエがいるんだ!?」


「えっ?」





 俺は拳に【ホーリーウェポン】を掛けて、その右手を振り上げたが・・・・









「ままま待ってください!それは私のお姉ちゃんです!

 私は違いますぅ~!!」




 金髪メイドは、泣きながら否定してきた。



 

 あ、そういえば・・・・・

確かにあの女魔法師とは髪の色が違うな?



 

 俺はとりあえず、振り上げた腕だけは降ろすことにした。





**********

=作者あとがき=


作者の獰猛死神です。読んで頂いてありがとうございます。


すみません、最近何かと忙しくて今後しばらく更新が週一くらいの

ペースになりそうです。申し訳ありません。


作者はチキン野郎ですので、誹謗の類はご遠慮下さい。

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