第69話 リオナの想い 1
~ リオナ Side ~
私の名前は『リオナ』と申します。
現在、公爵家のひとつ『ジャスティス公爵家』で、恐れ多くもメイド筆頭を勤めさせてもらっております。
私などがメイド筆頭など、本当に恐れ多いことです。
何故なら、私は男爵家の出身だからです。
・・・・少しだけ、私の生まれ育った経緯をお話し致しましょうか。
私ことリオナと母親違いで半妹のレオナは、爵位的にも財産的にも最底の男爵家で生を受けました。
この公爵家に来てから判った事なのですが、父は容姿こそ優れてはいましたけど、その中身は平民の女性を強引に慰み者にする事だけが生きがいのクズでした。
私の母もレオナの母も、その父が見初めて強引にモノにした平民の女性でした。
母達も愛してもいない男に強引に宿らされた子などに、愛情を注ぐことなど出来なかったのでしょう。父や母から、私たちは全く相手にされませんでした。
私とレオナは、そんな環境下の元で一緒に育ちました。
毎日寄り添い、お互いを励ましあって日々を生き抜いてきました。
結果、私とレオナは誰よりも固い絆で結ばれた姉妹であり、お互いを絶対裏切らない大切なパートナーとなりました。
当然のなりゆきでしょうね。
月日が流れ6歳の時に、私達は公爵家にメイド見習いとして出される事になりました。
「恩ある公爵家に忠義を尽くしてきなさい」
それが、実の父から言われた最初で最後の言葉でした。
父のこの言葉だけを聞けば、立派な事なのだと思われるのかもしれません。
でも実質は全く違います。
底辺であっても一応は貴族。
このまま男爵家で令嬢として育てて貰えていたのなら、貴族として社交界デビューをして、いずれは爵家の殿方と結ばれて幸せな生涯を過ごせていたことでしょう。
しかし既に正妻と後継者がいる最底辺の男爵程度の家では、妾2人ですら負担になるのに、そのうえ更に娘2人までも養えるはずがありません。
では何故私たちを、ここまで育てたのか?
正直、私もレオナも男として産まれたのであれば捨てられて今頃は生きていなかったでしょう。
女として産まれてきたからこそ、今日まで生かされていたのです。
つまり最初から、売却する為だったのです。
公爵家へ奉仕させるという名目で、私とレオナは身売りされたのです。
身分の低い爵家の娘は、公爵家や伯爵家に高く売れます。
何故なら、将来は都合のいい『お相手』に出来るからです。
子爵・男爵家に産まれた出自が判明している女子は、公爵・伯爵家からして見れば格好の相手です。
まず大抵の爵家当主はある程度見目麗しい女性を妻にしていますので、どこぞの出自不明の女子よりは将来の容姿が期待できます。
そうして迎え入れた女子が成長すれば、公爵や伯爵の好みの段階で手が出せるというワケです。
その後、本気で愛して妻に迎えいれたとしても一応は貴族の娘ですので問題はありませんし、一時の遊び相手であったとしても所詮は低い爵家の娘。
文句など申せるはずありません。
娘のほうも拒否できない訳ではありませんが、仮に関係を拒否した場合、理由をつけては暴力を振るわれたり罠にはめられて奴隷身分に落とされたりする事も多いと聞きます。
年頃の女性が奴隷になった場合・・・・そこから先の人生は地獄に等しいでしょう。
つまりは、拒否はできないということです。
結局・・・・メイドとして売られた娘は、仕えた先の者に従う以外にありません。
私は公爵家へ移動する馬車の中で、レオナと抱き合って涙を流した事は今でも忘れません。
けど・・・・私たちは幸運に恵まれた。
まず、売られた先がこの『ジャスティス公爵家』だったという事です。
ジャスティス公爵家の大きな特徴として、『次期当主選定』が上げられるでしょう。
普通であれば後継者は現当主が決めるものですが、このジャスティス公爵家だけは違います。
ご子息達が一定の年齢になった時に『神』から事前に通知がなされて、
そしてその時が来たら神が次期当主を選定するのです。
これはジャスティス公爵家初代当主が、英雄ドルフィスのパーティーメンバーの『司祭』であったことが関係していると言われています。
この『後継者選定』のおかげで、他の爵家ほどメイドの扱いが酷くないのです。
『神』に嘘や誤魔化しは出来ませんし、歴代ジャスティス家の当主に選ばれた者は、多くの執事やメイドから忠誠を受けている者が多かったそうです。
そのおかげなのでしょう。
ジャスティス家のご子息達は多くの執事やメイドに心の底から『忠誠を誓わせること』を目標としているため、気に入ったメイドを『強引にものにする』というのが少ないという訳です。
そして更に幸運だったことがあります。
それは、私たちが第3夫人たるメルテール様に気に入られた事でした。
メルテール様には、いくら感謝してもしきれない程の『恩』があります。
何故なら、メルテール様のおかげで私もレオナも未だ凌辱されておりません。
実は今までにもう数え切れない程、私たち姉妹は男から襲われました。
お仕えするメイドが、公爵家の男性にだけ襲われるという訳ではありません。
どうも私たち姉妹の容姿は男からしたら魅力的のようで、これまでに執事、兵士、用心棒として雇われた冒険者等、多数の男から襲われました。
正直、裸を見られた事なら私もレオナもたくさんあります。
でも、最後の一線だけは誰にも許しておりません。
それは何故か?
それは、私たちが『神法』を使えるからです。
実はメルテール様は、神法が使える『神官』だったのです。
秘密にしておりますが、私たちはメルテール様から神法を教わったからこそ今日まで無事に、そして誰にも汚されることなく生きてこれたのです。
ですが、今の私は後悔でいっぱいです。
なぜなら、そのメルテール様の最後のお願いを叶えられそうにないからです。
メルテール様は、私たちが来て3年で亡くなられてしまいました。
その臨終間際の最後のお言葉が
『シュワンを・・・・お願い・・・・ね」
でした。
私とレオナは泣きながら、必ず立派に育てますと返答しました。
その後、安心したようにメルテール様は息を引き取りました。
そう約束したのに・・・・
私たちはシュワン様を・・・・助けられないでいる
**********
=作者あとがき=
作者の獰猛死神です。読んで頂いてありがとうございます。
すみません、今週ずっと仕事だった為、老執事の最後の話が7割程度しか
書き上がっていません。
なので、ある程度書き終えていたこちらを先に載せました。
老執事との最後を書き終えたら、いったんこちらを消してそれを載せて、
そのあと再度この内容を載せる予定です。
(もしくは載せた後、順番を替えれるならそうする予定です)
自分の作品を楽しみにしてくださっている方々、本当に申し訳ありません。
作者はチキン野郎ですので、誹謗の類はご遠慮下さい。
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