第44話 教会はあっても・・・・
さて、腹も膨れたし用も足した。
今はさっちんに買ってきて貰ったゼロコーラを飲んでいる。
久しぶりのゼロコーラはのどに沁みる美味さだぜ。
さっちんはしっかり正座してスカートの中央部位を両手で押さえている。
もう見せませんって感じ全開だな。
まあ、いいけどね。
ミニスカ美女が正座で座ってる姿も、なかなかいいものだからな。
さて、そろそろ修行再開・・・・と思った所で、さっちんから声が掛かった。
「さて修一さん、修行再開の前に少し気分が悪くなるかもしれないお話を
したいのですが、宜しいでしょうか?」
「いきなりだな。悪くなるってどんな話?」
「この国の誕生及び神法の話です。
このあと神法を覚えて貰う予定なので」
・・・・いよいよ来たな。腐っているこの国の話が。
俺はうなずいた。
「では話させて貰いますね。
この国『ドルフィス王国』は495年前に誕生しました。
国名の元となった英雄ドルフィスが人族の弱さを嘆き、
この世界「テラクラム」の主神ベルゼストに会いにいって加護を求めた結果、
主神から『結界杖』という神具を賜り、それを地に突き刺して誕生しました」
うん知っている。俺、というかシュワンの記憶で。
「『結界杖』は刺さった場所から半径500kmを主神の結界で保護するという杖です。
この杖のおかげで、基本的には人族以上の力を持った種族や魔物に攻撃されません。
現在この王国は、この結界杖のおかげで存在出来ているのです」
うん、これもシュワンの記憶で知っていた。
そしてドルフィスは国王となり、彼の冒険仲間だった騎士、司祭、魔法師の3名がこのドルフィス王国の公爵になったという事も、ジャスティス家の先祖が司祭である事もね。
と、シュワンの記憶を手繰りながらゼロコーラを飲んでいた時、さっちんが爆弾発言をしてきた。
「ですが、この結界はあと5年で切れます。」
ブブッーーーーーーー!!
・・・・ギャグ漫画のように思いっきりゼロコーラを吹いてしまった。
「ま、まて。なんで急に切れるんだよ?」
「急にではなく、もともとそういう契約だったからですよ。
『500年ほど猶予を貰えれば、人族はもっと強くなる。
魔物が相手でも渡り合えるようになるだろう。
だからそれまでどうか、大いなる慈悲を持って人族を守る為の
主神のご加護を賜りたい』
英雄ドルフィスは主神ベルゼスト様にそうお願いしたんですよ」
「・・・・渡り合えるようになったのか?」
「ハッキリ言わせてもらえば、ドルフィスがいた時代より弱くなっています」
「加護を貰った意味ないじゃんか!
しかもあと5年で終わるなんて情報、シュワンも兄弟も持ってなかったぞ?」
「そこは、この国の人族の醜さゆえにですね。
ドルフィスは子孫にちゃんと伝えるように指示しましたが、
子孫達はだんだんとその教えを忘れていきました。
また、都合のいい解釈もしています。
『主神が我々を見捨てるはずが無い』とかね。
もう百年前ほどからドルフィスの子孫も公爵の子孫も信じていません。
ですが、それは今は置いておきましょう。
修一さんには、あと5年で結界が切れるとだけ覚えておいて頂ければいいです。
そして、次がこの国の神法についてです」
・・・・はあ。
なんだかもう、この時点で疲れたぞ。
「まず、この国の神法に関する事は全て『ドルフィス教会』が管理しています。
管理しているのですが・・・・」
?
急に歯切れが悪くなるさっちん。
「どうしたさっちん?」
「いえ、どう説明すべきかと悩んだだけです。
修一さん、シュワンさんの記憶でドルフィス教会が信仰している神は、
何と言う名だったかお判りになりますか?」
神の名か・・・・
シュワンの記憶を探ってみるが、教会が信仰している神の名前は出てこない。
「いや、シュワンの記憶にも名は無いな。一体何て名前の神なんだ?
主神ベルゼストか?まさかシグリーシャって事はないよな?」
「信仰している神はおりません」
・・・・はい?
「悪いさっちん、聞き間違いかも知れないのでワンモアお願いします」
「信仰している神はおりませんと言いました」
・・・・
・・・・
はぁぁあああ??
教会なのに、信仰している神がいない?? どういう事っすか?
「この国の教皇や司教は
『祈りを捧げて神力を上げていれば、必ず神は力を貸して下さる。
だから特定の神はいないし必要はない。
お前達が神法を使えないのは、祈りが足りないからだ。
もっと私達の言葉を聞き、理解し、祈りを捧げなさい』
とか言っていますね」
「・・・・さっちん、祈れば神が力を貸してくれるのか?」
「そんな訳ありません。
まず神力が無ければ使えませんし、普通であればちゃんと神の名や特徴を
理解してその神に自身の意志で仕える事を決めて祈りを捧げます。
そしてその神への信仰が厚くなって初めて、神が神力と引き換えに力を
貸し与えてくれるのです。
どの神にお願いしているのかも判らないのに、ただ祈っただけでは
神が力を貸してくれるはずありませんよ」
「じゃあ、なんで教皇や司教は神法を使えるんだ?」
「単に神の名を知っている事と、その神を信仰しているからですね。
腹立たしいですが彼らは血縁関係のおかげで神力が備わっていまし、
どうすれば神法がつかえるのか、一応は理解していますから」
「なるほどな・・・・
でも名さえ判っているというのなら、たとえば主神ベルゼストの名は
多くの人に知られているじゃん。
主神に祈っても力を貸してもらえないの?」
「修一さん・・・・シグリーシャ様は別格なので除いたとすれば、
ベルゼスト様はこのテラクラムの神の頂点にいる存在なんですよ?
神法を司る神が他にも複数存在するのに、それらをすっ飛ばして主神に
祈りを捧げても力なんて貸してくれませんよ。
修一さんの前世の就職活動で例えるなら、面接官とかを通りこして
いきなり社長に雇って下さいと直訴するようなものなんですよ?」
ハハ・・・・そりゃ無謀で無礼な話だな。力を貸してもらえないのも当然か。
「そんなわけでこの国の神官のほとんどは、神法を使えません。
使えるのは教皇や司教、あとは一部の司祭とかだけですね。
その一部の司祭も当然教皇たちに忠誠を誓ったものだけです。
そうして彼らは代々、この国での地位と財産と、その・・・・
多くの『お相手』を確保してきたのです」
・・・・地位と財産は判るが、『お相手』もだと!?
「修一さんは知らなくて当然なのですが、この国の歴代教皇や司教は
すごく多くの『お相手』がいたのですよ。
彼ら曰く、
『交わる事で私の力を分け与え、貴女は神法を使える可能性が出てくる』
『交わる事で貴女の祈りを、私が神法に変えて使ってあげる事が出来る』
とかなんとか・・・・。
不思議ですよね?
なんでセッ〇スしたら神法が使えるようになるのでしょうかね?」
アホらし・・・・つまりそういう事かよ。
教会の上位にいるやつらで神の名を隠蔽し神法を独占することで、
地位と財産の確保及び、好みの女性を都合のいい台詞でモノにしてきたと。
けど神法を知らない人や神法の治療を求める人達からからすれば、
彼らは実際に神法を使えるから、信じるしかないってわけか。
それを歴代の教皇と司教がやってきた?
教会の頂点に立つものたちが、数百年もの間ずーっとってか?
ホントバカらしい。
そりゃ俺も男だから、ちょっとはそうしてみたいなあって想いはある。
目の前に美人の神官とか巫女さんとか並んでいて、
俺の命令ひとつでモノにできるなんて、超憧れる光景じゃないか。
でも、その隣りで苦しんでる人がいたなら流石にそんな事はしない。
いくら俺がスケベ野郎でもな。
けど、こいつらはそれを平然とやってきたんだ。
神の名を隠して、弱みに付け込んで、平然と数百年も・・・・
・・・・そりゃ、シグリーシャも見捨てたくなるよな。
俺は、この国の教会をいつか正す事を心に決めた。
それはつまり、この国の教会と敵対するって事だった。
**********
=作者あとがき=
作者の獰猛死神です。読んで頂いてありがとうございます。
自分の能力の無さを実感します。
もっと皆さんが読みたい点をスムーズに書きたいのに掛けません。
いや、前置きを長く書いてしまうって感じかなぁ。
要点だけ絞って書くのって自分には難しいです・・・・
今後毎週火曜日か金土辺りに更新していく予定ですので、
よろしくお願いします。
最後に全く関係ない話なんですが、今日初めて過去に噂になっていた
「君の〇は?」を今更観て、そして感動してました。
もっと早くみれば良かったと後悔してたりします。
作者はチキン野郎ですので、誹謗の類はご遠慮下さい。
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