第43話 さっちんの謝り方

 目が・・・・覚めた。

ええと、俺は何してたんだっけ・・・・確か・・・・


 そうだ!!

熱い男達3人に追いかけられながら、丸い緑の線路を一周させられたんだ!

そして走り終わったあと、さすがに疲労の限界が来てぶっ倒れたんだった。


 ちくしょう、と怒りが沸いてくる!

すると・・・・


「えーと、その、修一さんお早う御座います。よく眠れました?」


 俺は声を掛けてきた女性を、俺をぶっ倒れさせた元凶を見た。


 ・・・・


 その姿を見て、真っ先に「あざとい」と思った。


 さっちんはジャージ姿から一転してをしていた。

胸の辺りを守る革鎧、白い短めのスカート、革のブーツといった格好だ。


 まずしっかりした革鎧を見たとき、俺はさっちんの

「もう胸は見せない・触らせない」

って意思を感じた。まあ『当然かな』と思ったさ。


 けど、だ。

さっきのマラソン(熱い男達の追手付き)は、やり過ぎたと思っているんだろう。

更に俺が起きた後、この件で「怒る」事も察したのだろう。

だからこそ、冒険者漫画でよく出てくる女の傭兵や盗賊のような白い短めのスカートを着ているんだと判った。

俺の気をそちらに引いて、俺の怒りを緩和させるために・・・・


 あざとい、あざとすぎるわ!


「あ あははは・・・・」


 乾いた笑いを浮かべるさっちん。図星だな!

俺はぶっすーとした態度でさっちんに聞いた。

「俺はどれくらい『倒れて』いたんだ?」


「じ、10時間ほど、ぐっすり『寝て』いましたよ。」


「そうか、10時間も『倒れて』いたんだな・・・・

 そりゃそうか。数日ロクに食べてないのに20時間も戦闘訓練した上に、

 40kmの、ある意味「命掛け」のマラソンだもんな」


 俺は同じくぶっす~とした態度で言ってやった。

あのマラソンは本当に地獄だった。

何度か男達に追いつかれ腰を捕まれた時は、マジで恐怖したぞ。

俺はそっち系の人達を否定する気はない。個人の自由だと思ってるからな。

けど、俺自身がそうなるのは絶対にゴメンだ!!


「あはは・・・・

 そ、そうそう、ご飯の準備をしておきました。

 どうぞ、あそこへ!」


 気まずい雰囲気を悟ったのか、さっちんは少し離れた場所を指した。

そこにはレジャーシートが敷かれていて、いかにも「食べ物が入っています」と主張しているようなランチボックスが、数箱置いてあった。

俺は促されるまま革靴を脱いで、シートの真ん中にドカッと遠慮なくあぐらをかいた。


 ・・・・そして、ここに「孔明の罠」の第一陣がある事を知った。


 さっちんは、俺の目の前でしゃがんでブーツの紐をほどき始めた。

無論シートの上に乗る為だ。それは判る。

けどなんだ。さっちんは。

当然の如く、しゃがむから「ちらちら」と白いが見え隠れした。

さっちんは今何でも出来る状態なんだから、その気になれば一瞬でブーツなど

脱げるだろうに。

なまじ「バーン」て全開で見せられるよりも色っぽく見えてしまう。


 く、負けてなるものか!


 俺は視線を逸らして不機嫌アピールを続けた。

ブーツを脱いださっちんは俺の前に座って、ランチボックスを広げはじめた。


「がんばって作りました。さ。どうぞ!」

と、笑顔で言っておしぼりを渡してくるさっちん。

フン、とおしぼりを受け取って手を拭いたあと、広げられたランチを見た。


 ・・・・そして、俺はここにも「孔明の罠」がある事を悟った。


 広げられたランチは、たいした内容のものではない。

けど、俺にとっては『懐かしい』と感じるものだった。

何故なら、よく運動会とか遠足で作ってもらった物ばかりだったからだ。


 おにぎり、ほうれん草が入っている卵焼き、ウインナーにミートボール。

そして柄の部分にアルミホイルが巻かれている骨付きの鳥から揚げ。

別のボックスにはうさりんごとプチトマト。


 俺はちょっと涙しながら、ゆっくり食べ始めた。

美味しい。

別に至高とか究極とかが冠につく「美味しい」ではないだろう。

けど、空腹と何より「懐かしい」という感情がこれ以上ないくらい

これらの料理を美味しくさせている。

俺は夢中になって食べ続けた。


「美味しいですか?」そう聞いてくるさっちん。

俺は素直に「ああ」と答えると

「よかったです♪」

と答えるさっちん。


 俺は返事をしたさっちんを見て・・・・

そこに三度目の「罠」があったのに気づいた。

ひざから下を「八」の形にして座っていて、頬に手の平を当てて笑みするさっちん。

これって、恋愛ゲームでは定番といえるイベント

 ・彼女が作った手作り弁当を彼氏が美味そうに食べる

  →それを嬉しそう&幸せそうに見ている彼女

のシーン再現そのまんまじゃないか!

しかも足を八の形にしてある為、さっちんの生足&白い下着が丸見え状態というオマケ付きで。


 ちくしょう、さっちんがワザと取っているポーズだと判っていてもドキッとしてしまう。


「修一さん」


「なんだ?」


「あのマラソンはやり過ぎました。ゴメンなさい♪」


 てへぺろと、両手を合わせて片目を閉じ舌を出して謝るさっちん。

はい、孔明・・・・もといさっちんの罠に完全KOされました。


「許す。俺も悪かった」


「ありがとうございます!」


 笑顔でそういった後、足を閉じてしまったさっちん。

サービスタイム終了か・・・・残念。

まあ、謝罪の為に無理してあのポーズを取ってたんだろうから仕方ないか。


「さ、最後にこれをどうぞ!」


 と、ふたの部分が大きなコップになっている水筒を取り出し、そのふたに水筒の

中身を注いで渡してきた。

豆腐とわかめの味噌汁だった。


 ああ、懐かしくて美味いよ 味噌汁・・・・

豆腐とわかめはみそ汁と相性ばっちりだ!




 この時にはもう、それまでの怒りは吹っ飛んでいた。




**********

=作者あとがき=


作者の獰猛死神です。読んで頂いてありがとうございます。


本当は主人公が「神法」を学ぶ話にする予定だったのですが、

なぜかさっちんとの、ちょっとえっちぃ話になってしまいました(汗


作者はチキン野郎ですので、誹謗の類はご遠慮下さい。

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