第80話 主神の決断 2
俺は滞在時間を購入して戻っていった。
そして真っ先にミルにお礼を言った。
「ミルのおかげで助かったよ。ありがとう」
「いえ、あの、お役に立てたのなら良かったです」
『たいした事じゃないですよ』って照れながら、いえいえって両手を軽く振って返答してくれる美女ヴァンパイアハーフ。
その笑顔とちょっとの動作でゆさゆさ揺れる爆乳がすごく魅力的だ。
うーん、ますます嫁になって欲しい・・・・
よし、ミルを口説くためにもヴァンパイア領の続きを聞くぜ!
「さあ、さっちん! 時間も出来た。
食堂の方も気にはなるけど、さっきの話の続きを聞かせてくれ!」
「シュウイチさん、食堂はもう少しだけ余裕ありそうです。
いえ、むしろ遅れたほうがシュウイチさんにとって転機に繋がる出来事が
起こりそうです」
?
「出来事ってどんな?」
「それは食堂へ行った際に、ご自身で確認して下さい。
ただシュウイチさんと『ある人物』との分かれ道になるかも知れませんので、
その心構えだけはしておいて下さい。私が言えるのはここまでです」
ある人物って誰のことだよ?めちゃ気になるじゃんか!
でもまあ、さっちんが詳細なアドバイスをしないというのであればそれほど酷い事にはならないだろう(その辺はもうさっちんを絶対的に信頼している)
あとの展開は俺次第ってところか。
「わかったよ。
それで話を戻して、結局主神の『切り札』ってなんだったんだ?」
「主神ベルゼスト様の切り札・・・・それは主神だけが使う事が許されている神法
『
つまりまあ、シグリーシャ様への救援願いですね」
・・・・
・・・・はい?
「またまた期待させておいて、なんだそれは?
神、まして主神の切り札が『シグリーシャ降臨願』って情けなくないか?
主神の切り札っていうのなら、もっと凄くてカッコイイものであるべきだろ!
例えば『神魔最終戦争(ハルマゲドン)発動』みたいなのとかさ!」
「シュウイチさんは一体どれだけこの世界を破滅させたいのですか・・・・?
それと、やっぱりシュウイチさんは理解してなさすぎです。
シグリーシャ様の凄さとその畏怖を!」
『どどーん!』と効果音がつきそうな感じで力説するさっちん。
俺の横でミルが目をつぶりながら『うんうん』って感じで、同意するように
しきりに首を縦に振っていた。
ちなみに、またも首の動きにつられて揺れるお胸様がイイね!
(何気にたびたび横目でこっそり見ている俺だった)
そんな俺に、さっちんからの忠告が来た。
[言っておきますけど、ミルさんはちゃんと視線に気づいていますからね!]
・ ・ ・ ・
やっぱり女性って、男の視線に敏感なんだな・・・・
[敏感も何もネットルームに連れてきた時からミルさんの大きい胸部に釘付け
だったじゃないですか!気づいて当り前です!]
・・・・分が悪そうだから話をそらそう
あとミルのお胸様チラ見も控えよう(汗)
「しかしさっちん、シグリーシャの畏怖と言われても俺にはなぁ・・・・」
シグリーシャが凄い力を持ってることは判っているけど、それで畏怖を感じるかと言われたら、いまいち感じられないんだよな・・・・
彼女との出会いやさっきの買取での書き込みとかを思い出してみても、やっぱり俺にとってはナイスバディの面白女神でしかない(w
「まあシュウイチさんはそうかもしれませんけど・・・・
でもいいですか?シグリーシャ様が召喚に応じて降臨するという事はとても
凄いことなんですよ?
何故ならシグリーシャ様が降臨する時は、このテラクラムに何か大問題が
発生した時なのですから」
「あ、そういえばシグリーシャもそんなこと言ってたっけ?
よほどの事が無いとテラクラムに干渉できないって」
「そのとおりです。
主神ベルゼスト様だけが使用出来る神法といっても、その内容がシグリーシャ様
にとって『問題無い』と判断されたのなら降臨しません。
でもこの時は主神の願いに応じて、シグリーシャ様は降臨されました」
「降臨したという事は、ヴァンパイアの件が問題って判断したという事か?」
「はい。
ですのでシグリーシャ様は降臨後、当時現存していたヴァンパイアロード6体を
即座に強制召還しました」
あれ?
「6体のヴァンパイアロード?5体じゃなくて?」
「ええ、6体です。
さっきミルさんの話には含まれていないヴァンパイアロードがいて、
そのロードが問題だったのです」
「あ、あの、それってもしかして・・・・」
それまで黙って聞いていたミルが、急に会話に入ってきた。
「はい、ミルさんが想像されているヴァンパイアロードですよ。
『ブレーゲル』という、当時最強かつ最古だったロードです」
ミルの急な割り込みにも、丁重に答えるさっちん。
「ミルはそのロードの事を知っているのか?」
「あ、いえあの・・・・急にスミマセンです・・・・
その・・・・私がお世話になっていたエルダーヴァンパイアさんから、少し話を
聞いた事があったのでつい・・・・」
ああ、そういえばミルは父の館を出て女性エルダーヴァンパイアの元で暮らしていたとか言っていたっけ?
「でもさっきの『ミルの話に含まれてなかった』ってことは、
その『ブレーゲル』ってロードはもう倒されているってことか?」
「はい、シグリーシャ様に強制召喚された後すぐ滅ぼされました。
しかも軽い息ひとつでね」
「はぁ?」
『息ひとつで』ってどういうこと?
* * *
さっちんに話を聞いて・・・・
シグリーシャが『規格外』である事を、少しだけ理解できた。
主神ベルゼストの願いに応じて降臨したシグリーシャは、直ぐに6体のヴァンパイアロードを強制召喚したそうだ。
ただでさえ強力な力を持つ6体のヴァンパイアロードが、一斉に天界へと強制召喚されたんだ。それだけでもロード達からしたら驚きだった。
さらにロード達は初めて会った次元の違う神力を持つ女神に、何も言えず呆然としていたらしい。(まあ当然だよな)
そしてシグリーシャが自己紹介をした時に最強ヴァンパイアロードたるブレーゲルが、シグリーシャに対して無謀にも攻撃をしたそうだ。
シグリーシャはその攻撃を受けた。(でも当然ノーダメージ!)
そしてその後ブレーゲルに笑顔でこう言った。
「貴方から攻撃して頂けてよかったです。これで私も攻撃できますから。
私が今回ここに降臨した目的は、貴方を滅ぼす事だったので♪」
と。
で、その後シグリーシャがブレーゲルに何をしたかというと・・・・
さっちんの言うとおり、軽く『息を吹いた』だけだった
たったそれだけの事で、魔王にも匹敵すると言われているヴァンパイアロードが、しかも6体の中で一番強いロードがあっさり滅んでしまった。
「シグリーシャ様の言うなれば格の違う『
最強ヴァンパイアロードがあっさり滅んでしまったのです」
「うわ・・・・」
それを聞いた俺は、ヴァンパイアロード達にちょっと同情してしまった。
だって仮に俺がヴァンパイアロードだったとしてその状況を見ていたのなら、
ロードとしての自信や尊厳がぶっ壊れてしまったと思うからな・・・・
確かに理解が足りなかった。
シグリーシャは本当にこの世界では規格外だ。
あの性格も含めてな!
「・・・・まあ、確かに・・・・げふん、いえ何でもありません」
ふ、さっちん、正直なのは良い事だぜ!
「は、話を戻して・・・・
こんな強さを見せられた残りのヴァンパイアロード達は自身の最後だと覚悟を
決めました。
ですがシグリーシャ様は、残りのロード達に対して謝罪したんです」
「謝罪?」
「ええ、シグリーシャはロード達に謝罪して、改めて自身の話をしたのです。
・自身がこの世界誕生から見守り続けている『管理神』である事
・神ではあるが、別に神族の味方ではないという事
・今回は『ロード・ブレーゲル』に問題があったので降臨したが、
本来はこのテラクラム内での争いには関与しない事
(その証拠に過去の神魔争いなどに一切関与していない事)
まずはその辺りを丁重に説明しました」
「確かにシグリーシャがこの世界の神や魔と違うのは判るけど・・・・
でも『神族の味方じゃない』なんて言って良かったのか?」
「事実ですからね。次に今後の案を出してロード達に了承させました。
・今回のヴァンパイア騒動は『神族側の負け』である事
・勝者側への褒美としてロード・ブレーゲルが長年占領していた土地に加えて、
さらにその周辺の土地を『ヴァンパイア領』として授ける事
・ロード・ブレーゲルが所持していた財宝や配下の魔物などは、ロード達で全て
好きに分配して貰って構わない事
・今回人族に対して救済及び罰を与える関係で、ヴァンパイア信者や今まで
ヴァンパイアに協力していた人族全部をヴァンパイア領へ移動させるのを
了承して欲しい事。その代わり移動させた人族をどう扱っても構わない事
(その事で神族は何も関与しない)
・神族に特別な結界をヴァンパイア領土全域に1000年間張り続けさせる事
(この結界は人や動物は出入できるが、神など力ある存在は出入不可)
などですね」
俺はその話を聞いて、疑問に思った事があったのでさっちんに聞いた。
「それを聞いて不思議に思うのは、よくロード達が条件を飲んだなって点だな。
最後の『結界』のことなんて、逆に言えば1000年の間ヴァンパイア領に
閉じ込められるってことだろう?それなのによく条件を飲んだよな?
まあシグリーシャがいたから、拒否出来なかったんだろうけどさ」
「それもありますが、ブレーゲルは最古のヴァンパイアロードだけあって、
彼が住んでいた場所や有していた宝とか、他のロードが羨むものを多く占領
していたので、その話はロード達に取っても魅力が大きかったのです。
更に、主神が直々に頭を下げてお願いした事も決め手になりましたね」
マジか・・・・
俺の主神ベルゼストに対する評価が、どんどん下がっていった。
だって主神としての『威厳』ってのが、全く感じられないからだ。
別に神魔の激しい戦いをして欲しいってワケじゃない(いやちょっとは期待した)けど、でもなんだかなぁ・・・・
あと俺は話を聞いていて、何かが気になっていた。
それが何なのかまでは判らないけど、何か重要な事が語られていない気がした。
そしてその『何か』は、ひょんな事から判明した。
「あ、あの!」
横で聞いていたミルが、また口を挟んできた。
「さっちん様は当時の事をよく知っているのですよね?
な、なら、どうか教えてほしいのです。
なぜ、ロード・ブレーゲル様が異常に変わってしまったのかを!」
・・・・異常?
「どういうことだ?ミル。
今の『異常』の意味を教えてくれないか?」
「は、はい。
あの、私がお世話になっていたエルダーヴァンパイアさんから聞いたのです。
そのロードはある時を境に、姿や行動が異常に変わってしまったのだと。
その理由を、ずっとエルダーヴァンパイアさんは知りたがっていたんです」
・・・・そうだ。
俺は今のミルの話を聞いて、ピンと来た。
シグリーシャが降臨したのは、『ロード・ブレーゲル』を滅ぼすためだ。
逆にいうのなら、このロードが大問題だったと言える。
いくら最強のヴァンパイアロードと言っても、シグリーシャの息ひとつで滅びる程度の存在がどうして大問題だったのか?
その明確な理由を、聞いていなかったんだ。
俺はさっちんを見ると、さっちんは『失敗した』って思えるような困った表情をしていた。
「はあ・・・・
シュウイチさんに何とか気づかれないように気を配って説明していたつもり
だったのですけど、ミルさんにまでは気が回っていませんでした」
力なく語るさっちん。
「さっちん・・・・
じゃあ今まではワザと『ロード・ブレーゲル』の事を簡略して説明していた
んだな。何故だ?」
「シュウイチさんは別に知らなくて良いと思ったからです。
全部知らなくても、ある程度の概要さえ理解してもらえればと。
詳細は凄く醜いので、聞けばシュウイチさんがその・・・・」
ああ、そうか
さっちんは俺の事を心配して詳細は語らなかったのか。
ホント優しいよな。普段はつんつんしているけど(w
「さっちん、俺はもうこの世界に転生した『シグリーシャの使徒』だ。
ならシグリーシャがした事の意味をちゃんと理解しておきたい。
ミルも聞きたがっているし、話してくれないか?」
「あ、あのさっちん様、本当に無理を言ってすみません・・・・
でも、できれば、その・・・・」
俺をミルを交互に見たさっちんは、ため息をついた後に覚悟を決めたような表情をして語り始めた。
「判りました、全てお話しします。
ロード・ブレーゲルが異常になったこと、彼がどうして大問題だったのかを。
たっぷり1時間以上は掛かると思いますけど、宜しいですか?」
「ああ、大丈夫だ。
俺は3時間、ミルには5時間追加したからな」
「は、はい!」
こうして俺とミルは、ことの詳細をさっちんから聞く事になった。
* * *
「ではお話していきますね。
このロード・ブレーゲルの何が問題だったかと言いますと、
腐ってしまった事が問題だったのです」
「「腐ってしまった?」」
俺とミルは2人揃って首を傾げて返事をした。
腐ってしまったと言われても、何処の部分の話なのかその明確な場所を言ってもらわないと判らないじゃないか!
「その腐っている部分が『何処』なのかを説明にする前に・・・・
シュウイチさん」
「? どうしたさっちん?」
「ここから先の話は、画像を出して説明しても宜しいでしょうか?
その方がより早く理解して貰えると思いますので。ただ・・・・」
ただ?
「シュウイチさんにとって、ここから先の話はちょっときつくなります。
その為お見せする画像もきつくなりますけど構いませんか?」
さっちんが真剣な表情で聞いてきた。
さっちんがそんな表情するなんて珍しいな。
でも、俺の返答は決まっている。
「ああ、構わないよ。
ただ俺やミルが無理そうだとさっちんが判断したら、その画像にモザイクを
かけるなり多少ぼかすなりして欲しい。
その辺は全面的に信用しているからな。よろしくさっちん!」
俺がそう返事をすると、さっちんはまた『ぽかーん』とした顔をしていた。
うん、その表情だけはホントかわいいなぁ♪
ちなみにミルは『モザイク?』と、知らない言葉を聞いて戸惑っていた。
うん、こちらもかわいい♪
「判りました!あと私はいつでも『かわいい』ですからね!」
と顔を伏せて返事をするさっちん。
「素直じゃないなぁ・・・・」
「黙って下さい!
では、いきなりですけどこの画像を見てください」
『ビュイーン!』と、いきなり俺とミルが座っている場所の隣空間に、前世でいう100インチくらいの画面が現れた。
(今更だが、さっちんこんな事も出来るのね・・・・)
画面には、ナイスミドルの金髪男性と、妖艶なお姉さんが映っていた。
そして画面の横に立って、指をさして教えてくれるさっちん。
「この金髪の方がミルさんとニルさんのお父さんで、もう名前も明かさせて貰い
ますけど『ロード・ラインウェルド』です。
そしてもう片方が『ロード・カーミラ』、6体の中で唯一の女性ロードです」
おお、この金髪ナイスミドルがミルとニルのパパさんロード(?)か!
まさに前世の『男の同志たち』でさえ憧れてしまうほどのイケメンだった。
男の俺が評価するのもなんだけど、かつて見たヴァンパイア映画に出演していた『ト○・クルーズ』と同等以上にカッコいいぜ!
また女性のほうもヴァンパイアロードとして納得できるほどの美女だった。
男ならそそられるであろう冷たい眼と紫の唇が特徴の美顔。
さらに腰まで伸びた髪は、まさに『ワインレッド』って言葉がぴったり合う美しい色をしていた。そして当り前だが(ミルほどじゃないけど)巨乳だ!
[どうして巨乳が『当り前』なんでしょうね? byさっちん]
うるさいよさっちん!
女ヴァンパイアと言えば、やっぱり巨乳であってしかるべきだ!(by俺理論)
あと余談だけど『カーミラ』って名前、前世でもあった有名な女性ヴァンパイアの名前だよな?やっぱり似るものなのかね?
「でもまあ、どちらもヴァンパイアロードとして納得できる美しさだな」
俺は素直に2人・・・・じゃなく2体の容姿を褒め称えた。
「ええ、ヴァンパイアロードは『夜の王』と言われており、『美しさと恐ろしさ』
を合わせもつ存在なので当然ですね。
ですが、問題となったロード・ブレーゲルの最後の姿がこちらです」
そう言われて次にさっちんに映し出されたヴァンパイア・ロードを見たとき・・・・
「うっ!」
「ひっ!!」
俺とミルはそのおぞましさに、口を押えずにはいられなかった。
**********
=作者あとがき=
作者の獰猛死神です。読んで頂いてありがとうございます。
まずはもう定番となってしまいましたが、更新が遅れてすみません。
あと今回の話が、クドクドと長くなってしまってすみません。
医者通いで金欠状態だった為、月末の各種支払いが出来ず、
一時的にネット止められてました(涙
ちゃんと続きは書いていますので気長に読んで頂ければ幸いです
作者はチキン野郎ですので、誹謗の類はご遠慮下さい。
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