第79話 主神の決断 1

 いよいよ主神まで登場するとはな!

きっと、ヴァンパイア族に対してこんな感じだったんだろうな。


 『全神族、ヴァンパイアに対して攻撃せよ!』

  (↑銀河英○伝説・ライン○ルト風)       


 とかな(w

まあとにかく、すごくいかっちょええ事が起きたのだろう。


 さあさっちんよ、続きを話してくれい!!


「主神ベルゼスト様が伝えたのです。

 まずヴァンパイア達に対して

 『一定期間ヴァンパイア信者以外の血を吸わないで欲しい』

 という要望をね」


 ・・・・はい?


「たったそれだけの事?

 主神がわざわざ、そんな要望をする為だけに動いたのか?

 さっちん、そこはもっといろいろ盛り上がったりとかしなかったのか?」


「シュウイチさんが何を期待しているか、まあ判りますけどね。

 でもご期待しているような戦いなどは、ほとんどありませんでしたよ?」


「なんで?」


「神族としても、ヴァンパイア族だけが相手ならば神の威信に懸けて戦い抜いた

 でしょう。でも、相手にはヴァンパイア信者・・・・つまり人族が多くいました。

 ヴァンパイアロードやエルダーヴァンパイアは強力な魔族です。

 そんな相手と神族が本気で争いを始めたら、近くにいる大勢の信者たちが

 巻き添えを喰らって真っ先に死んでしまうので、戦えなかったのです」


 うわ・・・・でもまあそうなるか。

ヴァンパイア達もそれが判っているからこそ、信者を邪険に扱わず近くに置いている面もあったんだろうな。ヴァンパイアにしてはセコイ気もするが・・・・


「でもなんかそれだとこう、神の威厳みたいなのが感じらないというか、

 少しシラけてしまう気がするな」


「だからこそ主神が動いたのです。

 この後、神が決断した事を主神の名において人族に宣言する為に」


「ズバっと直球で聞くけど、その決断って?」


「人族へ神罰を与える事です」


「へ?

 神罰を・・・与える?」


「はい。

 主神が下したこの決断は、この世界では初めてとなる事でした。

 まず神は本来人族を見守る立場におりますので、人族には基本関与しません。

 また人族に攻撃も出来ませんし、治療以外の神法の使用も禁止されています」


 あ、なるほど!

その禁止があるからこそ神族は、信者を巻き込む攻撃が出来なかったのか。

「なんで信者に邪魔された程度で神族がヴァンパイアを倒せないのか?」

ってさっき思っていたんだけど、その理由がいま良く判った。


「はい、その通りです。

 悪さをしたのなら話は別ですけど、信者の大半は単にヴァンパイアの美男美女と

 エッチがしたい為だけに集まった、言うなればですからね」


 うっ! さっちんにそう言われて俺はとっさに思い浮かべてしまった。

前世の鉢巻巻いてアイドルの追っかけをしているブサイクや、必死に美少女フィギュア購入に走っているようなデブオタみたいなのがそろった集団を。


 今更だが、確かにそんな集団に守られていたのならヴァンパイアの美女を倒そうとしても無理だったろう。

あいつらのそういう時の行動力は侮れないからな。


 だからといってこの集団を殺すっていうのも、確かに違う気がするな。

そもそも神だって、こんな奴らを殺すのは嫌だっただろうよ。


「またあまり知られてはいませんが、人族が住んでいる国や領域付近の強力な

 魔物とかも、神族が可能な限り命懸けで排除しているんです。

 そこまでして守ってあげているというのに、色々この時代の人族は主神に

 決断させるほどに酷すぎたのです」


 まあ確かに、聞いている限りじゃ酷すぎるな。

弱い存在であるにも関わらず欲望は強いし、忠告は聞かないし、無茶苦茶な要望を出すし、魔族に紛れて一部の信者は陵辱を行うし、権力者は神族に金品を要求するとかだからなぁ・・・


「全部知ってる主神からしたら、さすがに神罰を与えようとするか」


「はい。この決断で主神は大きく3つの事を実行しようとしたのです。

 1、ヴァンパイア及びヴァンパイア信者を一時的に隔離する事

 2、隔離する事でヴァンパイア勢力縮小及び人族減少を止める事

 3、神及び神の使いに無礼を働いた人族に罰を与える事

 です」

 

「なるほど、『1』の隔離がこの後でヴァンパイア領域に繋がるんだな。

 でも、よくヴァンパイア達は条件を飲んだな?」


「ええ。

 まあヴァンパイア達も最初は主神の言葉に従う気なんてありませんでした

 けどね。

 ですがここで主神ベルゼスト様だけが持っている『切り札』を切る事で、

 ヴァンパイア達も条件を飲むしか無くなったんですよ」


「切り札?それはどんな?」


「それは・・・・」


「それは?」


「残念ながら、お話しすることが出来ませんね」


 ・・・・はい?


「なんでさ!?」


「シュウイチさん、ネットルームの残り滞在可能時間を見てください・・・・」

残念そうな顔で言ってくるさっちん


 ・・・・滞在可能時間??



 ・ ・ ・ ・ ・ 



「ああああっ!!!」



 忘 れ て た !!



 そうだった!ネットルームは2時間までしか滞在できない事を忘れてたぁ!

俺はちらりと滞在可能時間を確認した。

残りはあと11分しかなかった(涙


 ちなみに、このネットルーム内では現実世界時刻や滞在可能時間を確認したいと願えば、すぐ目の前に表示されるのだ。

さすがシグリーシャが作ってくれたネットルームだけあって、色々便利だ。


「あの、シュウイチ様?

 滞在可能時間ってなんですか?」

横で一緒に聞いていたミルが、その言葉を聞いて慌てはじめた俺に質問してきた。


「ああ、ミルには言ってなかったっけ?

 実はこのネットルームは基本一日2時間までしか滞在できないんだ。

 何せ、俺の前世の娯楽が詰まったような空間だからな。

 時間を区切らないといつまでも滞在しかねないからって、シグリーシャが

 定めたんだ」


「そ、そうだったのですか・・・・

 確かに、ここには面白そうな書物がたくさんありましたから・・・・」

と、コミックブースのほうを見ながらミルは言った。


 そういえばネットルームに入ってきたときも、確かミルはコミックブースを気にしながら見ていたっけな。


「もしかして、あそこに置いてある漫画を読みたかったのか?

 すまない。魔物を狩っていたのなら、その肉や核(コア)の魔石を換金して、

 それで滞在時間を購入する事ができるらしいんだけどな」


「『マンガ』というのですか?あそこの書物は?

 あとシュウイチ様、魔石なら今すこしだけ持っていますよ?

 ミノタウロスとオークの魔石ですが・・・」


「マジか!?」


 ミルはメイドスカートの両サイドのポケットからひとつずつ、前世で言うなら少し小ぶりの石鹸くらいの大きさの魔石を出した。

うっすらピンク色をしているが結構透明な魔石だった。


「これ、貰ってもいいのか?」


「ええ、これでよければ・・・・」


 俺は魔石を受け取るとダッシュで風除室のところに行って2個の魔石を置き、即座にネットルーム入口のモニターの所へ向かった。


 モニターには

『魔石 2つ 計 8000 円になりますが宜しいですか?』

との表示。


 うーん、これが適正価格なのかどうか判らんけど、シグリーシャの検査結果だから間違いがあるわけ無いよな。とりあえず『はい』をタッチした。


 すると俺の残高が表示された。

『8296円』と。


 ・・・・あれ?

なんだこの『296円』って端数は?


 まあ、後でさっちんに聞けばいいか。そんな事よりも時間延長だ!

俺は即座に『滞在時間延長』を選択肢してタッチした。


 『1時間 / 1000円 

 (追記:今回だけは初回ご利用特別サービス料金となりまぁす♡

     次回からは『1時間 / 2500円』ですのでよろしく♪

     超美女ヴァンパイアハーフと縁が出来るチャンス到来ですね!

     頑張ってくださいね~♪)



 ・・・・



 あんのアホ女神!! 覗いて楽しんでいやがるな!!

しかも1時間2500円って高くない?ラブ○テルのご休憩料金じゃねんだぞ?


 まったくもう!!

まあいい、今はそれより時間延長だ!


 俺は自分の滞在可能時間を3時間、ミルは5時間延長して戻った。

ミルから貰った魔石だし、コミックブースの漫画を読みたがっていたからな。

ミルの滞在時間を多めにしておこう!


 にしても、滞在時間の事をすっかり忘れていたな。

あとよくよく考えれば、この後の家族との対決の事すら忘れてしまっていたよ。


 でも、この転生した新しい世界「テラクラム」の事を聞くのは楽しいぜ!

この後ミルに好印象を与える為にも、もっと詳しくヴァンパイアの事を聞かなくてはな!

([↑都合のいい言い訳ですね♪ byさっちん])



 なんかツッコミがあったような気がしたが、

俺は気にせず、続きを聞きにミルとさっちんの所へ戻っていった。





 **********

 =作者あとがき=


 作者の獰猛死神です。読んで頂いてありがとうございます。


 病院にいく→金が掛かる→仕事を増やすという負の連鎖中。

 休みの日はずっと爆眠している事が多い為、

 更新が大幅に遅れました。すいません・・・・


 作者はチキン野郎ですので、誹謗の類はご遠慮下さい。

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