第56話 シュワンが壊れるまで 3
~ シュワン Side ~
僕はその日、アーレン兄様とデクスと一緒に夕食を取っていた。
ただ、僕はもやもやして仕方がなかった。
何故なら・・・僕にだけクミンの対応が冷たかったからだ。
「なんだよ。量が多いとか言っていたが普通じゃねえか」
そういって、ため息をつくアーレン兄様。
「普通だと思います」
と淡々と語ったのが、弟のデクス。
デクスは怪我をしてから、あまり感情を表に出さなくなったので少し心配だ。
「いえ、いつもはもっと・・・・」
「申し訳ありません。アーレン様、デクス様。
いつもこれくらいの量なのですが、何故かシュワンは文句ばかり仰られて。
私も本当に困っております」
クミンが僕の言葉を
普段僕にはこんな丁重な話し方などしないのに、なぜか兄弟には丁寧な口調をするクミン。僕の名前だけ「様」がついてないし・・・・
それにこの夕食の間、アーレン兄様とデクスに対しては丁重な態度と笑顔で接しているのに、僕には笑顔を見せるどころか、目を合わせないし話してもくれない。
なんだろう・・・・胸がズキズキ痛む。
クミンがこんな態度を取っていても、アーレン兄様もデクスも何も彼女に言わない。どうして注意も何もしてくれないのだろう・・・・
僕の専属だから、僕自身がもっと強く言わなければいけないという事なのだろうか・・・・?
あと、何でウソを言うのだろう?
確かに今日用意された夕食は普通だけど、いつもはもっと凄い量じゃないか。
現に昼食はこの倍以上の量だったわけだし・・・・
そんな事を思っていると、クミンがコトっと僕だけにデザートを出した。
青ブドウがふんだんに使われたパイだった。
この夕食が始まって、ようやく僕を相手にしてくれたことが嬉しかった。
けど、なんで僕だけなんだろう?
僕はクミンに礼を言ってからたずねた。
「おいしそうだね。ありがとうクミン!
だけど、なんで僕のだけなの?アーレン兄様とデクスの分は?」
「・・・これはあんたの為に作ったデザートだからよ」
見れば、それなりの完成度でとても美味しそうなパイだ。
僕の為だけに作ってくれたってことが凄く嬉しかった。
「羨ましいねぇ。
それで、ここまで尽くしてもらって何が不満だってんだ?
オマエって我儘が過ぎるんじゃないか?」
なぜかニヤニヤしながら言うアーレン兄様。
「何がご不満なのか判りません」
デクスにも言われてしまった。
「いえ、いつもはもっと量が多いのです。
今日の夕食くらいならば問題ありません。
それに僕だけの為に作ってくれたパイなんて・・・・
嬉しい限りで不満なんてありませんよ。」
正直、ちょっとだけ高級食材を使いすぎじゃないか?とは思った。
昼に出た特産ブドウを使用したパンやジュースだけでもそれなりに高価なものだったはずだ。そして、それ以上に青ブドウはかなり高価なものだと聞いた事がある。
だけど、僕の為だけに作ってくれたってことが嬉しかったから、
その事は言わなかった。
そして僕は感謝を込めてパイを頂いた。とてもおいしかった。
「おいおいシュワン・・・・顔がニヤけているぜ?
こんなに尽くしてくれているのに、不満ばかり言っているから嫌われるんだぜ。
きちっと謝罪したらどうなんだ?」
「クミンさんに謝罪するべきです」
僕は2人から急にそのように言われて、たじろいでしまった。
そう・・・・なのだろうか?
ここはクミンに謝ったほうがいいのかな?
「クミン・・・・あの、ゴメンなさい。
でも、できればその・・・・今後の食事の量とかはその・・・・
『今日のこの夕食くらい』でお願いしたいのだけど・・・・いいかな?」
「・・・・判りました。では今後の食事は、
今日の夕食くらいで作っていいのですね。
間違いありませんね?」
「ああ、お願いするよ」
するとクミンは、僕にこう言った。
「判りました。今後も頑張ってご用意しますね!」
ドクン!!
なんだろう?
今のクミンの笑顔に・・・・
何故か違和感を感じた。
「俺も間違いなく聞いたからな。よかったな、クミン」
「・・・・僕もお聞きしました。では」
そう言って席を立ち去っていくアーレン兄様とデクス。
なんだろう?さっきのクミンもそうだったんだけど、
アーレン兄様とデクスからも少し・・・・
違和感みたいなものを・・・・感じた。
*****
~ 修一 Side ~
「・・・・あのクミンの態度、おかしすぎるだろう・・・・
嘘の供述といい、悪意があるとは思わないもんかね?」
クミンの態度にも兄弟の態度にも、シュワンは違和感程度しか感じてなかった。
本当に鈍すぎだ。
「それだけ純心で、リオナさん達に守られていたという事ですね・・・・
そのリオナさんが不在なので、準備をして潰しにきた訳です」
またまた俺の思考を読んで、丁寧に教えてくれるさっちん。
たしかに、この
当然、このときのシュワンは理解などしていなかった。
**********
=作者あとがき=
作者の獰猛死神です。読んで頂いてありがとうございます。
まず、火曜に出せなかったことを謝罪します。
これだけの文章なのですが、何度も修正した為に出せませんでした。
あと更にすみませんが、主人公の設定を少し訂正させて頂きました。
訂正前 訂正後
姉2人 → 姉1人
作者はチキン野郎ですので、誹謗の類はご遠慮下さい。
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