第41話 特訓はイメージと共に 1
俺はエレベーターの「開」ボタンを押して中に入った。
大きい・・・・つうか、おかしい!
中は有に10㎥くらいあるぞ。
「修一さんの知ってるエレベーターとは別物ですので。
別に上部にワイヤーとか付いてませんよ?
さ、2階のボタンを押して下さい。
ちなみに、下のRボタンが前に紹介した出口になりますので、
覚えておいて下さい」
あ、その説明でピーンと来た。
モンスターを狩る→風除室に置く→受付で買取依頼する
→エレベーターで出口へ→出口で周囲を確認して外へ
こんな感じになるんだろうな。
「・・・・本当に話が早くて助かります。さ、早く行きましょう!」
何故かせかすさっちん。
2のボタンを押すと、扉が閉まりドアの上の表示が2Rに変わった。
当り前なのかもだが、上に登っているとかの感じは全くしない。
エレベーターの扉が開き外に出ると・・・・
・・・・
・・・・歌でこんなのがあったよなぁ。
♪山も無く 谷も無く 何も~見えはしない
まあ、管理神から貰ったスキルの内部だから不思議じゃないんだろうけど、
広い草原で地面に芝生のような草が生えている以外何もなく、地平線が見える。
「ふっふっふ。さあ、特訓を開始しますよ!」
くるりと振り返るとそこにはさっきまでとは違う、コーチ姿のさっちん!
シャツが黒スポーツブラに変わっている以外、サングラスといい帽子といい、
全部「トッ〇をねらえ」の「オオ〇コウ〇チロウ」じゃん!
早くその姿になって俺を鍛えたかったから、あんなウキウキしてたのか。
うむ、スポーツブラはグットだけど胸がシグリーシャの半分くらいなのが実に惜しいな。
「・・・・何処を見ているのですか?」
「いやなに、『桃はメロンやスイカには勝てないのか?』と考察していただけさ」
「余計なお世話です!桃には桃の良さがあるんです!
今の一言で特訓倍増が決定しました!」
さっちんがそう言うと、急に地面からモンスターが現れた!
ゴブリンに並んで初期に出てくるモンスターのコボルトだ。
犬頭のモンスターで、身長はさほど大きくないが俊敏な動きで襲ってくる。
D&〇やウィ〇ードリィで得た知識のモンスターの姿まんまだ。
「つか、なんで地面からコボルトが出て来るんだよっ!」
コボルトは生えてくる生き物じゃねえだろうが!
「ふふっ。この空間は私が自由に設定できるようになっているんです。
なので今だけは色んなものが作りだせるんですよ。
そして、このモンスターは基本は土で作った紛い物ですのでご安心を。
もっとも、動きや強さは同じくらいにしてあります。
さあ、まずは修一さんの能力検証です。
このコボルトを「念動力」や「念消力」で倒してみてください。
ただ漠然と念で動かすのではなく、「イメージ」する事が重要です。
修一さんの魂力に宿った魂元素をどのように「念動力」「念消力」に
変えて使うのか?
もっと明確にイメージできれば使いやすくなる筈です」
なるほど、一理ある気がする。
俺は、左右に動きながら迫ってくるコボルトを迎え撃った。
さあ、ここからマジ訓練モードだ。
さっちんの言う「イメージ」を意識して・・・・行くぜっ!
* * *
・・・・
・・・・
「修一さん・・・・」
「ぜぇ・・・・ぜぇ・・・・ なんだ・・・・」
俺の体がデブっているせいで、すぐ息が上がる。
「修一さんには、魔法は必要無いと思いますよ・・・・」
「ぜぇ・・・・何をいう、んだよ!」
ふぅーと、息を整えながら俺は言う。
「良いかさっちん、魔法ってのはいろんなオタクの憧れなんだぜ?
『ザーザードザーザ~』とか
『黄昏よりも暗き~』とか
『我は放つ光~』とか
最近覚えたのでは『我は神を斬獲せし~』とか
唱えて放つのがカッコいいんじゃないか!」
厨二病と言われても仕方が無いが、憧れとかロマンってやつなのかな?
魔法使いってのは、やっぱこうでなきゃって思ってしまう。
「他の方ならそうかもしれませんが、修一さんは必要ないです!
見てくださいあの残骸の山を!!」
そういって指差す方向には、さっちんが作った擬似モンスターもどきの
残骸が詰まれていた。
コボルトやゴブリン、オーク、ミノタウロスを形どっていた土の塊が。
「たった一言助言しただけで、なんでこんなに強くなるんですか!」
なんでと言われても、俺は助言のとおり単にイメージしただけだ。
そしたらそれで十分に戦える事が判明した。
というか、イメージなら前世の地球にいるオタク同志なら誰でも出来ると思う。
もっとも人によってイメージが違うと思うけどね。
まず俺が正面の敵にイメージしたのは「乱打」だ。
例えるならケン〇ロウの百〇拳やワン〇ース主人公の「〇〇の銃乱射」が該当するだろう。俺自身も空手をやっていたし一番イメージしやすかった。
正面から来た敵のほとんどはこれで撃退する事が出来た。
たくさんの『念の拳をぶつけて動かす(ぶっとばす)力』だ。
あてつけがましいと言うなかれ。これも立派な念動力だ。
これを「念拳乱打」と名前をつけた。
自身の念を最大限に発揮できるその威力は、ハンパじゃなかった。
次に攻撃、攻撃補助、防御補助として以前からイメージしていた物があった。
それは「鎖」だ。
聖闘士〇矢アン〇ロメダの「ネピ〇ラチェーン」やF〇teに出てくるギル〇メッシュの「〇の鎖」が該当するだろう。
いや、念ということでエン〇ラータイムを持つ『狩り×2』の男が近いかもな。
つまり『念の鎖を動かす力』だ。
左右に散って攻撃してくるゴブリンやコボルトを長い鎖で横からなぎ払うとか、オークやミノタウロスの足に巻きつけて動けなくしたりとか、飛び道具やジャンプして上から襲ってくるゴブリンとかの迎撃等に使えた。
これを「念攻鎖」「念防鎖」「念縛鎖」と名前をつけた。
最後に俺の念消力だが、これが少々マズイ。
なんつうか、某ガン〇ムのシー〇ック風に言うならば、
『こいつは・・・・強力過ぎる』ってやつだった。いやマジで。
止まってる相手に使うなら全然問題ない。
ただこれを動いている相手に使おうとすると、いくつか問題があった。
まず俺は、念消力を手のひらの上に球状態にして使おうとした。
ナ〇トの螺〇丸をイメージして。
けどさ、下手に外して顔上半分だけ消し飛ばすと、こう口から下が残るグロテスクな姿を見る羽目になったし、腹にぶっ放せば文字通り腹に風穴があくから、腹の中身がもろに見えてしまう。
これは土で出来てたからまだマシだったが、リアルだったらどうなってたか・・・
結果として、これは却下した。
また、融通が利かない。
スパロボ大戦の某風の機神のサイ〇ラッシュみたいに周囲に放ったとすると、
味方にはダメージを与えないなんてわけには行かず、全て巻き込んで消してしまう。
当然これも却下した。危なくて使えない。
仕方無い場合を除いて、なるだけ人には使わないようにと決めた。
ここまでで2時間くらいだったか?
このデブった元シュワンの肉体のおかげで何度も息切れしてめまいがしたが、
俺は息を整えてはすぐ特訓を続行した。
この息苦しさ、辛さ、正直キツイけど同時に懐かしくもあった。
何故なら、俺が昔空手をやってた時以来の感覚だったから。
改めて生き返っている事が実感できた。
そして・・・・なんか嬉しかった。
俺がもうずっと昔に夢見て、そして忘れていた事を出来るのが嬉しかった。
俺だけの特殊な技を身につけれる事がすっごく楽しかった。
念消力についてはいろいろ考えて試した結果、主に二つに使用することにした。
1つは爪だ。といっても指の爪ではない。
敵を殴った時、いつもならすぐ拳を引くが、これは拳を当てたまま拳の先から
念消の「爪」が一瞬生えてすぐ消えるというものだ。
超人プロレス漫画の戦争男が使ってた「ベア〇ロー」に近いだろう。
これは自分の拳で殴った時にイメージして使いやすかった。
『念の爪を刺して消す力』だ。
名前は「念消爪」とつけた。
最後、イメージしたのは牙。
敵を飲み込むくらいの大きな牙で噛み付くイメージ。
これが、俺の『力』で一番強力な技になるだろう。
『念の牙で噛み付いて消す力』だ。
名前は「念消牙」とつけた。
あとはもう、これらを組み合わせて戦うだけだ。
むろん、正々堂々なんて戦いじゃない。
巨大な敵は脚を念縛鎖で動けなくして頭とか急所を「念消牙」で消す。
近くにいるたいして強くない敵は、念拳乱打と念攻鎖で倒していった。
こうして俺は、この世界のモンスターとの戦い方を築き上げていった。
ただ、これはあくまで「モンスターや格上相手」にのみ使用する予定だ。
人族が相手の場合であれば、可能な限り「念消力」は使わずに
俺自身の拳で戦う。そう考えていた。
**********
=作者あとがき=
作者の獰猛死神です。読んで頂いてありがとうございます。
ようやく主人公の戦い方が掛けました。
そして余談ですが、どの程度まで書いていいのか判らず
試しに主人公の初めての〇シーンをすでに書き終えたのですが、
これはアウトなのかセーフなのか判りません。
その時が来たら皆さんの判断をよろしくお願いします。
次回は来週火曜頃の更新予定です。
作者はチキン野郎ですので、誹謗の類はご遠慮下さい。
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