第65話 遭遇 老執事・猿人編 1
俺は、改めてこちらに向かってきた2人を見た。
ひとりはシュワンを毎回殴っていた猿人の執事だ。
名前は知らない。
けど、この猿人だけは絶対にぶっとばす予定だ。
あと近くで見るとデケエわ。2m近くありそうだ。
もう1人の初老の執事は、シュワンの記憶からある程度は知っている。
グリトラ専属の従者(執事やメイド)を束ねている長で、ミナグラーダと
いう名だ。
こちらも猿人ほどではないにしろ高身長だ。
白髪で眼帯のような形で左目にすごく高価そうなモノクルをつけている。
猿人には報復する事が確定しているが、ミナグラーダに関しては特に何か
された記憶は無い為、報復する予定はない。
でも、今まで出会った奴ら全員クズばかりだったからな。
正直、こいつもダメな気がするんだよなぁ・・・・
ビュィーン!
さっちんの表示。
[ ◎ ] (←だたこれだけの表示)
・・・・
正解って意味だよな?
さっちん、ツッコミすんなら普通に言葉でしろよな・・・・
まあいい。とにもかくにもまずは挨拶からだ。
「良き朝に感謝を。2人とも。
そして猿人、貴様には色々と謝罪して貰うからな」
驚く顔をする執事と眉毛を少し動かした猿人。
俺に対して先に口を開いたのは、老執事のミナグラーダだった。
「これはこれはシュワン様、ご丁重に朝の挨拶をどうも。
お体・・・・というよりお心の方はもう回復されたのですかな?
こちらも『良き朝に感謝を』とご返答したいところなのですが・・・・」
ミナグラーダは俺の背後、つまり蹲っている男と倒れている女をモノクルを
動かして確認していた。
視線から女(ツミノキ)を確認すると残念とイラつきが混ざった表情をしたが、
男(オリカン)を見た後はしばし何かを考えて、その後でニヤ笑いしやがった。
ちなみに、猿人はずっとミナグラーダの後ろに控えて俺を睨んでいた。
「なるほど、そういうことですか。
これは残念ながら、『良き朝』とはいかなくなりましたな」
丁重に返しながらも、含みのある言い方だ。
何か『こざかしい企みを思いついた』って感じがバリバリ受け取れるぜ。
どうせロクでもない企みだろうが、いいだろう。
その企みを聞いてやろうじゃないか。
無論、『憑依』なんて使わずに直接な。
「何が言いたいんだ?ミナグラーダ」
「いやなに、原因が判明したと思ったのですよ、
実は今日の朝食の準備を担当する2人が来ておりませんでな。
あと調理補佐担当のメイド2人も、厨房を一度出た後戻ってこないとの事。
その為、朝食準備が少々遅れておりましてな・・・・」
そうなのか?それは大変ラッキーだ。
だってこちらとしては、すごく助かる話だからな。
「更に悪い事に、その者達全員がグリトラ様専属の者でして・・・・
その為先程、束ねている私が理不尽にも怒られてしまいましてな。
なのでこうして、来てない2人を探していた所なのですよ」
・・・・うん?
2人が来てない?2人が戻ってこない?
そいつら全員がグリトラ専属?
それってまさか・・・・
オリカン&ツミノキとメイド2人組のことか?
ビュィーン!
またまたさっちんの表示
[ ◎ 大正解♪ ] (← 目の前にこれと全く同じ表示)
・・・・
さっちん!俺は「言葉で言え」と言ったんだよ。
言葉を追加して表示すな!!
「その2人をこうして見つけたわけなのですが・・・・
この状況を見て、いろいろ理解出来たと言うことです」
「見ただけで判るのか?すごいな。常習だったのか?
あいつらは昨夜あそこの倉庫で遅くまで『お楽しみ』すぎて
寝坊したって言っていたぞ?」
「・・・・そうでございますか。
まあ、また2人そろって来てないのでそうだと判っておりましたがな。
ですが、私が理解できたと申し上げたのは今のあの状況の事でございます。
あの姿はあきらかに暴行を振るわれて、倒れておりまする。
つまるところ、シュワン様が原因であのようになった訳ですな」
「へー、なぜ俺が原因だって決めつけるんだ?
あいつらがああなった経緯を見てなかったのにどうして判る?」
「ほう?
では何故あのようになっているのか教えて頂けますかな?」
「暴力を振るってきた執事に『反撃』して、
暴言を吐いたメイドに『
あんなにはなっているが、あれでもずいぶん優しく済ませたほうだぜ?
俺への無礼の数々を考えたら、処断されてもおかしくないからな」
俺の言葉に、鼻で笑うミナグラーダ
「何を
あの者達は普段礼儀正しく真面目にグリトラ様へお仕えしておりますぞ。
暴力や暴言などを振るったり吐いたりなど考えられませぬ。
やはりシュワン様は壊れたままのようです
言葉や態度にも以前と違い傲慢さが見られますからな。
治す為にも、一度徹底的に躾け直す必要がございますな」
ぷっ・・・・
はははっ!
つい笑いが出ちまったぜ!こんなのが『企み』ってか?
「それがさっき思いついたであろうオマエの企みか?ミナグラーダ。
つまらねえし、くだらねえ「あてつけ」だな。
何が『徹底的に躾けなおす』だ?素直に言ったらどうだ?
単に『ウサ晴らし』と『責任転嫁』をしたいだけだろうが!
ホントあそこで倒れている2人と同レベルでクズだな。
その立派なモノクルも、つけている奴がクズだと価値が下がって可哀想だ。
いっそ眼鏡にでも交換したらどうだ?」
ミナグラーダが眉を動かした。
「だいたいよ、ミナグラーダ。
今、調理場ではこの屋敷全員分の朝食を作っているんだろう?
それなら携わっている人数は有に数十名は居るはずだ。
なんせ屋敷には奴隷も含めたら200人以上いるのだからな。
なら4人程が居なくてもよ、すぐおまえ自身が手伝うなり別の奴に
指示を出して手伝わすなりさせていれば、余裕で予定通りにこなせたハズだ。
おまえが『優秀だったら』の話だがな」
「これはこれは・・・・手厳しいご指摘ですな・・・・」
苦笑いするミナグラーダ。
けどその表情に余裕が無くなっている。
内心で怒っているのがまる判りだぜ。
言い争いは俺の勝ちだな。ざまあみろ。
けど、それより・・・・
「それより疑問に思うことがあるんだがよ、ミナグラーダ。
さっき『探していた』って言っていたが、探すのに同じ専属の者ではなく
何でわざわざ『アーレン直属の猿人執事』を同行させてるんだ?」
・・・・
ミナグラーダから笑みが完全に途絶えた
「普通なら手の空いている専属の者を多く連れてきて探すもんだろう?
グリトラ専属者の問題なんだからな。
なのに何故1人も連れてきてないんだ?
おかしいし、怪しいよなぁ。
もしかして専属者には見られたくない何かをするつもりだったのかな?」
わざと『見られたくない』の部分を強調して言ってやった。
すると、今度はモノクルから冷たい眼が覗いていた。
猿人は苛立っているようだが、まだそのまま控えていた。
「ほう・・・・ 前言を撤回させて頂きましょう。
今朝のシュワン様はずいぶんと鋭いようですな。
しかも、既に何かご想像がついておられるご様子。
是非とも、お聞かせ願いたいものですな」
先程までの紳士な態度と変わり、獲物を狙う獰猛な肉食獣のような態度で続きを促してきた。
ふん、後ろの猿人を連れてきた時点である程度の想像はつくさ。
いいだろう、食事が遅れてるという情報をくれた礼に答えてやる。
「そうだな、まず急いで探すのであればグリトラ専属の手の空いている者達を
もっと連れてきて探すだろう。
お前は『長』なんだから、命令すれば動かせるわけだしな。
けど連れてきたのはたった1人。
つまり、急いで探すつもりは無いという事だ」
「ほほう、それで?」
「ここで重要と考えられる点が2つある。
さっきから言ってるがグリトラ専属者を1人も連れてきていない事と
アーレンにお願いしてまで猿人執事を借りて連れて来たって点だ。
それを踏まえて推測すると・・・」
俺は後ろの2人を指して言った。
「オマエはさっき怒られたことが相当頭にきているんじゃないか?
だから、あいつらに『お仕置き』をするつもりだった。
ただ、『長』たるオマエ自身が直接お仕置きをすると遺恨が残りそうだし、
仲間が見ていたら不審を買うかもしれないから、アーレンから人を借りた。
わざわざ力の強い猿人を借りたのは、きついお仕置きにしたかったからだろう?
何しろ、そこの猿人は他者をいじめるのが大好きだし、力もすごくある。
そうとう酷い『お仕置き』になるだろうからな。
どうだ違うか?」
俺の出した結論に、ミナグラーダは手を叩きはじめた。
「はっはっは。いや~なかなかお見事な推測で御座いますな。
認めるのは癪ですが、かなり当っておりますぞ」
『嫌らしい笑み』を浮かべて話すミナグラーダ
「そうか。じゃあ完全正解を教えてくれるかな?」
「よろしいでしょう。
まず『今朝怒られたことが相当頭にきていた』『きついお仕置きをする』
という点は大当たりでございます。
違った点は、戻ってこない2人はともかく、最初から来ておられないこの
2人に対しては、『私自身もお仕置きする』つもりでいたことですな」
ミナグラーダは俺の横を通り過ぎ、オリカンのところまで歩いていく。
俺は猿人に気をつけながらも、ミナグラーダを目で追った。
「何しろオリカンもツミノキもグリトラ様に仕えている時は優秀なのですが、
2人揃って夜になると途端に不真面目になる。
要は夜遅くまでハメを外しすぎてしまう訳でしてな・・・・」
オリカンの前でしゃがむミナグラーダ
「その為、2人して朝遅れて来る事が多いのですよ。
何度も注意したのですが治らないので、少々頭にきておりました。
そしてとどめが今朝の件です。
ええ、シュワン様にお教え頂かなくても、また2人そろって来てない
時点でまた『情事』による遅刻だとすぐに判りましたぞ。
なので決めたのですよ・・・・」
オリカンの髪を掴んで顔を上げさせるミナグラーダ。
俺に膝蹴りされた顔の各所が、変色して腫れている。
「う・・・・ぐぉ・・・・」
まだ気を失うこともできず、苦しんでいるオリカン。
「まずオリカンに関しましては、自分自身で『ハンサム』と豪語しておられる
この顔を・・・・」
ミナグラーダは拳を構えて
「潰してさしあげると!」
オリカンの顔面ど真ん中に綺麗な拳が入った。
今まで気絶する事を許されて無かったオリカンが、一発で気絶した。
間違いない、ミナグラーダは相当に強い!
ミナグラーダは次にツミノキのところへ行き・・・・
今度は遠慮も躊躇もなく、彼女のメイド服を破りやがった!
彼女の下着がモロに見え・・・・
・・・・
ええぇっ!!
俺は衝撃を受けた!!
だって彼女の下着は・・・・
ブラジャーとパンツだったからだ!
なんだそんな事かと言う無かれ!
だって、最初のメイド2人の下着があんな色気の無いズロースだったんだぜ?
だから他のメイドも同様の下着なんだろうと、勝手に思っちまってたんだよ!
そしたら、上はシンプルっつうか単に長方形のタオルを途中でひねっただけのようなダサい形だけど、一応はちゃんとしたブラジャーだったんだ。
下は同じく長めのタオルを股とその横に巻いたような形だったけど、あのメイド2人組が履いていたズロースと違って太ももは見えるし、お尻のラインも一応見えるパンツだったんだぜ?
ちなみに、形的には前世で言う「ボクサータイプ」に近い。
だから「パンティー」ではなく「パンツ」と表現したんだ。
ふ、俺のこだわりさ!
あーあ、ちくしょう!
どうせなら、ツミノキにスカート捲りをすればよかった。
そうすればあんな残念な異世界最初のスカート捲りにはならなかったのに!
俺のバカ馬鹿!
固定概念なんて、だいっきらいだぁ~!!(意味不明)
そんなくだらない反省をしている俺など気にもせず、ミナグラーダは遠慮なくブラまで外していた。ツミノキのそれなりの大きさのお胸がぷるんと出た。
その後パンツまで遠慮なく剥ぎ取った。
う、止めることも出来ず全部ガン見してしまった。
俺も男だからか?前世は悲しくもチェ○ー君だったからか(涙
ツミノキは前世で言えばCカップくらいだろうか?
ちょっとB地区を囲む輪が大きい気もするが、胸も顔と同じくまあまあだな。
腰からお尻へのラインもまあまあ・・・・
おっといけない、つい色々没頭してしまった。
これ以上はさすがに止めないと。
「ふん、まあそれなりの体はしているようですな」
ミナグラーダはツミノキの体を近くで見て、そう感想を漏らしていた。
「・・・・いいのかよ?
専属長が、同じ専属のメイドにそんな事をしてよ?」
「ふ、元々こうする予定だったのですよ。
ただ残念ながら、この顔と頭だと少々萎えてしまいますが。
いえ、この部位を隠せばそれなりに楽しめるかも知れませんな」
悪びれた様子も遠慮もなく、体中の隅々を見てそんな感想を漏らすミナグラーダ。しかもツミノキの胸を軽く揉みやがった!
(正直ちょっとだけ羨ましいと思ってしまった)
でも、これ以上見過ごすのは色々違うな。
「させると思うか?俺の目の前でそんな(羨ましい)事をよ?」
「ええ、もちろんでございます。
そうでもさせて貰えないと、私の気が収まりませんのでね。
この2人はこの後、私の特別な部屋へ連れて行って躾ける予定です。
そちらのキー・スダケズカイ殿と一緒にね」
ちらりと後ろをみると、猿人はツミノキを見てニヤけていた。
興奮しているようだった。こういうところはまさに『猿』そのものだ。
しかし、「キー・スダなんちゃら」って変な名前。覚えられるかってんだ。
まあすぐ忘れる存在になるから関係ないか。
「いろいろと申しましたが、こういう事です。
私は迷惑を掛けられた2人に今回の件で激怒したので、私の特別部屋に連れて
いって男は拳で、女は体で『躾』をしようとしただけで御座いますよ。
けど1人だと大変ですし、グリトラ様や他の専属者には言えませんのでね。
アーレン様に正直にお話して、手伝って貰える方が居ないか伺ったところ、
キー・スダケズカイ殿が受けてくれたという訳です」
はっ!まあそんな所だろうとは思ったよ。
全く、シグリーシャが人族を見捨てたくなる気持ちがよく判る気がするよ。
「さて、なぜこうもシュワン様にお話したかお判りになりますかな?」
ツミノキから手を放し、ゆっくりとこちらに歩いてくる。
後ろの猿人も、近づいてくる。
「・・・・俺をぶちのめして口封じする為だろう?
お前ら2人を目撃しちまったからな」
「そのとおりです。
今日のシュワン様は実に冴えていらっしゃいますな」
「モウ コイツを殴ってイイか?」
「ええ、お待たせして申し訳ありませんな」
まあ、こうなるよな。
(我が管理神よ!『プロテクション』!)
俺はいつも通りにプロテクションの神法を使ったあと、ゆっくり近くの壁に移動して、背を壁に預け横向き状態で空手の「前羽」に近い構えを取った。
「ほう、結構まともに感じる構えですな」
「そいつはどうも」
「マタ 泣かしてヤル!」
「では、お覚悟を!」
こうして『俺 対 老執事&猿人』の戦いが始まった。
**********
=作者あとがき=
作者の獰猛死神です。読んで頂いてありがとうございます。
また時間が掛かってしまい申し訳ありません。
自分の満足いく内容になるまで、何回も書き直しているもので(汗
今後も気長に待って頂けると嬉しいです。
作者はチキン野郎ですので、誹謗の類はご遠慮下さい。
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