第18話 地縛からの開放

 俺は公園の縛りから解放された。

そして、これで成仏できるのだろう。

なんとなくだが、空へ昇っていけば成仏出来ると判った。

俺をここに縛り付けた存在・・・おそらくは神様だと思うけど、こうなる事を判っていたのか?


 実は俺は・・・・

霊になって覚醒後に、彼女が来なかった理由を知って激怒した。

殺してやろうと思った。無理ならずっと憑いて呪ってやろうって。

こんな女を待って死んでしまった事が本当に悔しかった。

でも公園から出れなかったから、どうしようもなかった。


 そして時間を置くと頭が冷えたというか、他にいろいろと興味が出てきた。

要はまあ「女性観察」になるわけだが。


 そうしているうちに、特別な『力』も使えるようになって少し楽しくなった。

そして、こんな女の為に悪霊になりたくないと考えるようにもなっていた。


 つまり神様は、俺が悪霊に成らないようにこの公園に縛り付けていたのか?

そして彼女をもう殺さない事が判ったから、俺を開放したって事なのか?


 だとしたらすげえ。さすが神様だよ。


 ・・・・


 俺は自身を落ち着かせ、彼女を見た。

正直、かなり危険な状態になってきているのが判る。

この場所で俺と同じような死に方を望んていたからこそ、肝臓癌なのに強い酒を飲んでいたわけだし。


 公園にある時計を見ると、いつの間にか深夜1時だ。

雪がまだそれなりに降り続けている為か、流石に人が見当たらない。


 別にこのまま見捨てても・・・・


 いや、これでも一度は愛した人だ。

彼女を許す事はない。二度と愛する事もない。

けど、もう殺さないと決めたんだ。


 で、あるならば・・・・見捨てるのは違うだろう。


 さて、どうしようか・・・・

そうだ!と俺はあの家の前に行った。


 バク・・・・頼む起きてくれ!


 俺は念動力を使ってバクの犬小屋を叩くと・・・バクが犬小屋からヒョコッと顔を出して俺のほうを見た。

 どうしたの?と言わんばかりに、首をかしげている。


 頼む、俺のほうを向いて吼えてくれ。お願いだ!


 バクは俺の言葉が判るのか、思いっきり吼えてくれた。

「バウ!バウバウバウ!」


 数回繰り返して吼えてもらうと、家に明かりがついて人が出てきた。

隣の大山さん家からも人が出てきた。


「どうしたんだ、バク」とバクの主の池田さん。

「どうかしたんですか?バクちゃん」と沙耶ちゃん。


「ああ沙耶ちゃん、ごめんね起こしてしまったかい?」

「いえ、友達とのクリスマスパーティーで帰宅が遅かったのでまだ起きてました。 それよりどうしたんですか?バクちゃんが夜中にこんな吼えるなんて・・・・」


 沙耶ちゃん・・・・まさか最後にひと目会えるとは嬉しい誤算だ。

ありがとうバク。

ただもう一度、今居る俺の方に向かって吼えてくれ。

最後のお願いだ。頼むバク。

「バウ!バウ!」


 俺の願いを聞いて、ベンチに向かって吼えるバク。

「こらバク!近所迷惑だろ!一体どうしたんだ」と叱る主。

「あ、あのベンチの人に向かって吼えているのではないですか?」

 と沙耶ちゃん。


 さすが沙耶ちゃん、気づいてくれてありがとう。

この後沙耶ちゃんと沙耶ちゃんのご両親、それに池田さんとバクが、彼女が寝ているベンチに向かってくれた。


 これで彼女は「今」は助かるだろう。

もっとも、そう長くないんだろうけどな。


 そんな時、俺の頭にあのツッコミ声が届いた。


[最後に大サービスです♪

 修一さんの『力』を使えば、白川薫さんを完治できますよ。

 修一さんの「念動力」はもっと便利で「消すこと」もできるんですから。

 では♪]


 ・・・・どういう意味だ?




**********

=作者あとがき=


作者の獰猛死神です。読んで頂いてありがとうございます。


さて、次回でようやく主人公は現世とさよならの予定です。



作者はチキン野郎ですので、誹謗の類はご遠慮下さい

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