第83話 詳細説明 この世界の迷宮 1

 あー、さっちんに蹴られた顔がまだ痛い・・・・

けど悪いのは俺だし時間も無いからな。さっそく次の話だ!


「それじゃあ、『ピュアホワイト』のさっちんよ」

先ほどの光景を思い出して、ついそう呼んでしまった。


「何ですか?『エロパワークリエイター』シュウイチさん?」

さっちんが負けじと言葉を返してきた。


 げっ、何それ?

訳すと『エロちから創造主』とかだよな?


 確かに俺に合っているのかも知れないが、そんな二つ名とかあだ名なんて絶対に嫌だぞ!


「そう呼ばれるのが嫌なのなら、私を変な風に呼ばないで下さい!

 まったく本当にスケベなんですから・・・・

 でもシュウイチさんがスケベなのは別にいいです。

 それがシュウイチさんの強さなのですからね」


 ・・・・『それが俺の強さ』と何度説明されても、やっぱり嬉しくねえ!


 俺の『念動力』や『夜目』のみなもとが色欲、つまり性的興奮の感情力だなんて。


 カッコ悪いし、恥ずかしくて他人には言えないし、言ったら女性には敬遠されるだろうし、2枚目主人公には程遠い内容だし・・・・

(↑ しゃがみ込んでちょっと落ち込む俺)


「ど、どうしたのですかシュウイチ様?急に落ち込んで・・・・」

そんな俺を見て、心配そうに気を使ってくれるミル。


 ホントいい子だなぁ・・・(俺の方が圧倒的に年下だけど)


 ふん、そうだとも!

別にカッコいい2枚目ヒーローな主人公じゃなくてもいいんだ。


 俺は俺らしくこの能力とシグリーシャの加護で、ミルのような爆乳美女とエロく楽しく生きていってやるんだい!


「・・・・どうやら開き直ったようですね、シュウイチさん。

 あと先ほど呼んだのは『続きを話して欲しい』って言おうとしたのですよね?

 じゃあ次は迷宮についてお話しますね」


 おお、待っていました!ファンタジー好きにとって憧れの迷宮!

それがこの世界の『癌』って言っていたが、なんでだ?

 

「私は『癌の』と言ったのですよ。

 シュウイチさんは迷宮の『コア』についてはご存知ですよね?」


「もちろんだとも!

 『ダンジョンを構成・管理している存在』のことだろ?」

ファンタジー小説では定番だぜ!


「そのとおりです。ダンジョンコアとも呼ばれていますね。

 この世界の迷宮にも『コア』があり、迷宮の作成や管理をしています。

 そこでシュウイチさんに質問です!」


 さっちんが『ばばーん』という擬音が付きそうな感じで聞いてきた。何となく楽しそうだ。


 「この『コア』というのは、一体どのようにして誕生もしくはつくられたと思いますか?」


 はい? 急にそんなこと聞かれても、当然判るワケがない。


 ミルのほうを見ても『私も知りません』とのことらしく、全力で顔と手を横に振って(ついでにお胸も揺らしながら)否定していた。


「まあ判らないけど、神とか魔族が創ったんじゃないのか?」


「神が人を罠にめたり殺めたりする迷宮の核なんて創ると思いますか?

 実力を試す『試練の塔』みたいな場所なら用意するかもですが」


 『不正解!』みたいなノリで答えるさっちん。

まあ確かに、言われてみるとそうかもな


「じゃあ魔族か?」


「魔族が創ったというのなら、なぜコアそばに居ないのでしょうか?

 だってコアは魔物召喚やゴーレム作成など色々出来るのですよ?

 魔族が創ったというのであれば手元に置いておき、強敵と戦う際に使うと

 思いませんか?

 そのコアを神族も入れる迷宮に置き去りにする理由とは何なのでしょうか?」


 そう言われると・・・・こっちも確かに不自然かな?


「じゃあ『ワード○ー』のようなく大魔導師が『マハリ~クマハ~○タ』とか

 呪文を唱えて創ったとか?(笑)」


「・・・・確かにそうして創られた核が別世界にはあるのかも知れませんが、

 少なくともシグリーシャ様が知る限りでは無いですよ・・・・」

呆れながらも丁重に答えてくれるさっちん。

しかも否定はしないのか(w


「大魔導師ワード○ー? マハリ~クマハ~○タの呪文??」

こちらはまたもや意味が判らず首をかしげる可愛いミル♪

可能であればミルの愛と爆乳は俺だけにふりまいてほしい!


「まったく、ちょっとは真面目に考えて下さいよ。

 どうして私が先に『感情力』の話をしたと思っているのですか?」


 感情力・・・?

あ、そういう事か!


『魂にもっとも近い力』

『同じ感情力は引かれあい集まる』

『次元の狭間だろうと無数に散らばる』

そうさっちんは説明した。


 つまり・・・・

「核っていうのは、『感情力』だという事か?」


「はい、そのとおりなのです。

 次元の狭間などで長い年月をかけて大量の感情力が集まって結合収縮し、

 力と自我を得て擬似魂へと覚醒したのが『コア』なのです」


 へぇー、そんな経緯で『核』って出来るのか。

ちょっと感動してしまった。



 * * *



 引き続きさっちんは、コアについて詳しく説明してくれた。


「こうして生まれた核は、ほとんど霊に等しい存在です。

 言わば『姿を持たない生まれたての力を持った霊』みたいな感じですかね?

 また霊に近いからなのでしょうか?『実体化』できそうな世界を探しだし、

 その世界の『現実世界』へと移動しようとするのです。まさに本能ですね。

 シュウイチさんも元地縛霊だったのですからお判りになりますよね?

 霊にとって『実体』こそ、凄く欲するモノであることを」

 

「もちろんだとも!」

俺は即答した。


 霊のままだと色々出来ないことが多すぎるからな。

特にエッチ系が出来ないのは辛すぎだ!

さわれない・揉めない・キス出来ない・バースト不可(?)等々(w


「(思いつくのがエッチな事だけですか!このスケベ男は!)

 ですが現実世界へ入ろうとした途端、世界からの抵抗を受けるのです。

 世界にも人間と同じく外部から『異物』が入ろうとすると抵抗して排除しよう

 とする性質がありますのでね。

 残念ながら大半の核は『現実世界』に入ろうとしても、抵抗に負けて弾かれて

 その衝撃で消滅してしまうのです」


 あらら・・・・

せっかく長い時間をかけて魂にまでなったというのに。

厳しい現実というのは魂にもあるってことか・・・・


「なんかかわいそうです・・・」

そうつぶやいたのは当然ミルだ。優しいな。


「ですがなかには現実世界に入り込むことの出来た強い核もあるわけです。

 ちなみにですが、このテラクラムは他の世界より抵抗がので、

 多くの核が入り込んでいるのです。

 『とある管理の女神さま』の性格が大きく影響しているからですね」 


 あ~、あの面白大好き女神ならそう設定するだろうな


「しかし現実世界に入り込めた核でさえ、まだまだこれからなのです。

 ここからコアにとって本当の試練が始まるのです!」


 急にさっちんが力を入れて説明し始めた。

そして自分の所に教卓を出現させていた!(いつの間に?!)

 

「何でそんなにノリノリなんだ? さっちん・・・・」


「私も核の話は面白くて大好きだからです!」

興奮気味に答えるさっちん。


 ちなみにミルもワクワクしながら聞いている。


「コホン、では話を続けますね!

 まず先にネタばらしになりますが、全部の核が『迷宮核』になるワケでは

 ありませんし、なれるワケでもありません。

 迷宮となる核は凄く少ないのです」


「それは何故だ?」


「現実世界に入り込めた核にとって、ここから存続を賭けた戦いが始まる

 のですが、その大半が迷宮核となる前にすぐ消えてしまうからです」


「核にとっても、現実世界は危険がたくさんあるってことか」


「その通りです。核も例外では無いという事ですね。

 入り込めた核は、まず最初は何を置いても『実体化』をします。

 周囲の物質を用いて、球体や立方体などの指先程度の小さな『器』を創って

 同化するのがほとんどで、以後はその器が『コア』となります。

 現実世界に存在する物質と同化しないと、世界とのえにし(=記憶・記録)が

 無い異物の魂として、またすぐ世界に排除されてしまいますからね」


 現実世界の物質と同化することで排除からは逃れられるって事か


「でも、なんで『器』なんだよ?

 どうせなら人族みたいな『肉体』を作ったほうが色々便利なんじゃないか?」


「そう考えてしまうのはシュウイチさんが『無知』だからですね」

さっちんは『チッチッチ』と指を振りながら否定した。


「核が出現した場所に運よく仮死状態の肉体があるとでもお思いですか?

 また肉体を作成しようとした場合、水はあるかもですが肉体を構成する

 他の物質全てが近くに揃っているとは限りませんよ?」


 う、確かにそれは・・・・


「まだまだあります。

 仮に肉体を構成する物質が全て揃っていても、作成するのに力を使いきって

 その結果、同化する前に消えてしまう可能性もあります。

 シグリーシャ様の記憶には、実際そういう核がいくつかありました」


 あったのかよ!

可愛そうに、あと一歩のところで力尽きるとは・・・・


「また肉体を得たのなら衣食住がほぼ必須となりますが、この世界に来たばかり

 でどうやって確保するおつもりですか?

 服は?必要な道具は?食材の探し方は?調理方法は?寝る場所は?」


「すんません!俺が無知でした!」

俺は両手を上げて降参した。

言われてみると、肉体は維持していくのが色々と大変なんだな・・・・


「わかればよろしいです。

 そもそも、核が必ずしも動かせる実体を欲しがるワケじゃないですから」


「うん?それはどういう事だ?」


「例えば元となった感情力が『幸せ』だとか『喜び』とかの核だった場合、

 他人にも同じ思いを分け与えたい為に『ホーリースポット』や『癒し系道具』

 になろうとする核もあるということですよ」


 おお、そうだったのか!

こうした核が『癒○の杖』とか『回復の指輪(ヒールリング)』とかになるって

ワケか!なるほどなぁ。


「それに小さい器というのは、色々と理に適っているのですよ。

 ある程度の石や土などでさほど力を使わず且つそれなりに強固な器が

 作れますし、小さければ自身の移動に使う力も少量で済みます。

 それで岩の隙間とかに核たる身を隠せられるのでね」


 ふむ、そう説明されると小さい事も納得できるな


「核はこうして、身を保守しながら力の回復をするのがほとんどですね。

 そして回復しながら、この世界で存在していく為の知識を必然と

 学んでいくのです。

 もっともかなり長い時間の回復となりますけどね。

 なにしろ、ここまでに相当な量の力を使いますので」


 そりゃあそうだろうな

強引に現実世界へ入り込んで実体化したのだから、それまでに使った力がどれ程のものかなど想像もつかない。


「ある程度の力を回復した核がその後どのような選択をするのか?

 ここから大きく分かれていくのです。そしてここからが楽しいのです!」


 バーンと教卓を叩くさっちん。

俺とミルは、そんなさっちんの説明に没頭していた



 * * *



「先ほども少し言いましたが、このテラクラムには多くの『核』が存在してます。

 その中でも『絶望』と『恐怖』に近い感情力が元の核は、ある程度の力を得たら

 ストーンゴーレムやアイアンゴーレムになるケースがすごく多いですね。

 何しろ自身の核をゴーレム内に隠せば強固な鎧で守れる上に、敵として人族の

 前に姿を出せば大抵の人から『恐怖』や『絶望』の強い感情力を吸収できます

 からね」


「おおっ!なるほど!

 野生(?)のストーンゴーレムやアイアンゴーレムは

 そうして生まれていたのか!」


「私も初めて知りました・・・」

ほえ~と関心しながら返事をするミル。


「ミルはストーンゴーレムやアイアンゴーレムに会った事はあるのか?」


「は、はい。会ったというか見かけた事は・・・・

 ヴァンパイア領内には居ませんでしたけど、ヴァンパイア領を出てからこの

 ドルフィス王国へ来るまでに何度か見かけました」


「戦ったのか?」


「え?い、いえいえとんでもありませんっ!!

 ゴーレム系は動きは遅いですけど、頑丈そうですし・・・・

 そもそも戦いが怖いですから・・・・」

両手を振って否定するミル。

『戦うのは怖くて嫌です』って気持ちが、すごい伝わってくるな


「でもオークとミノタウロスの魔石を持っていたじゃないか。

 あれって、戦って倒したから持っていたんじゃないのか?」


「そ、その、オークやミノタウロスならので、

 背後から何とか・・・。あとその・・・・お肉が美味しいですし・・・・」


『一撃』ってオークとミノタウロスをか?

さすがヴァンパイアロードを父にもつ半吸血鬼人ヴァンパイアハーフ(汗


 あと戦うのが怖くても、お肉の為なら勇気が出せるのね(w


「はいはい、雑談はそこまでにして私の話を聞いて下さい。ちなみに私からしたら

 ゴーレム系になるのは選択ミスであると、そう言わざるを得ませんね」

さっちんは『残念』って感じで首を振りながらそう言った。


「何で?」


「確かにアイアンゴーレム等は人族からしたら強力ですが、ドラゴンからすれば

 ちょっと固い程度のかたまりですからね。

 ある程度力をつけたゴーレムの核は、大抵が古代龍エンシェントドラゴンに狩られて

 食べられてしまうのですよ」


 せっかくの頑丈なボディも、ドラゴンの牙の前で無力なのね


「他にも核には色々と脅威があって大変なのですよ。

 力を取り戻している途中で魔族や魔物に見つけられたら、食べられて力を

 奪われてしまいますし、かといって力が戻ってないのに強力な体を作っても、

 今度はその体をロクに動かせず力尽きて消滅しちゃいますのでね」


 まじかよ・・・

「じゃあ核にとって現実世界って最悪じゃんか。

 ホーリーサークルとかホーリーアイテムになる核はともかく・・・・」


「そうですね。そういった話を聞いてしまうと・・・・」

俺の意見に、ミルも同意していた。


「ふっふっふ。

 お2人さんは、そもそもどうして核の話になったのかをお忘れですか?」


「え?」 

「あ?」


「じゃあ核にとってどうすれば効率よく力を回復させられるのか?

 それには感情をもつ生物の近くに居るか、もしくはその生物の方から

 なワケです。

 その為にもっとも有効な手段のひとつが・・・・」


「”迷宮ダンジョン”って事か」




 俺はこうして、迷宮核の誕生理由を知ったのだった。





 **********

 =作者あとがき=


 作者の獰猛死神です。読んで頂いてありがとうございます。


 この回も更新が遅い&話がくどい&長くなってすみません。

 さすがに今回は1つにまとめきれませんでしたので2つに

 分けました。

 

 無論この設定は作者の想像であります。

 他の作品設定とは異なっているかもですがご了承ください。


 作者はチキン野郎ですので、誹謗の類はご遠慮下さい。

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