第58話 シュワンが壊れるまで 5

 ~ シュワン Side ~

 

 日が暮れて辺りが暗くなってから数時間が過ぎたころ・・・・

僕は外に出て、夜空の星を眺めていた。


 綺麗な星を見ていると・・・・どうしてか涙が溢れ出てきた・・・・





 僕は・・・・ジャスティス公爵家の3男・・・・のはずだ・・・・


 それなのに兄弟であるはずのグリトラ兄様の命令で・・・・

本来なら庭師が住む為に建てられた『離れ』で・・・・1人住んでいる・・・・


 何故僕だけ、兄様達が住んでいる本館に住ませて貰えないのだろうか?


 何度もグリトラ兄様に直訴しようと本館に入ろうとした。

でも、その度にあの猿人執事に見つかっては殴られて・・・・外に放り出された。



 僕は・・・・ジャスティス公爵家の3男だ。


『公爵家の息子は人の上に立つ宿命を背負っています。

 なので常に威風堂々と!

 そして優しくかつ礼儀正しくなくてはいけません』


 先代メイド長たるアマーリエさんと僕の専属だったリオナさんから、そう教えられた・・・・


 だから僕もその教えを守り・・・・まだ威厳は無かったかも知れないけど・・・・

でも・・・・それでもどんな相手にも礼儀正しく接してきた


 執事であってもメイドであっても・・・・

平民であっても、奴隷であっても・・・・優しく接してきた


 それなのに・・・・


 今まで仲が良かったと思っていた執事でさえも・・・・

あの猿人執事と同様に殴ってきた。


「おや?こんな場所に家畜のブタが入り込んでいますね?」

そんな言葉を笑みを浮かべながら言われて、その後で殴ってきた。

僕が痛みで動けなくなったら、男奴隷に命じて僕を引きずって・・・・


豚臭ぶたくさいので、入って来ないで下さいね」


 ・・・・そう言われて、僕は放りだされた


 引きずられる間に会った他のメイドや執事は・・・・僕を全く存在しないかのように目を背けて無視をする・・・・

中には憎しみを込めた目で、僕を見るメイドや執事もいた・・・・


 


 なんで・・・・僕はこんな目に合わなければいけないのだろう?


 僕が・・・・いったい何をしたっていうの?



 

 そして何より・・・・ 


 クミンに会えてない・・・・






 クミンは・・・・部屋を移ってから一度も会いに来てくれない・・・


 そして・・・・先日のあの日・・・・



 僕が殴られて苦しんでいるのを見て・・・・



 何故・・・・彼女は・・・・











 のだろう?









 判らない・・・・どうしても判らない・・・・

僕はクミンに何か悪い事でもしたのだろうか?

僕はクミンに嫌われてしまったのだろうか?




 考えると胸が痛くて・・・・涙が止まらない




 クミンと話がしたいのに・・・・クミンに会えない

本来なら、僕の専属メイドたるクミンが食事を運んでくるはず。

それなのに・・・・クミンは運んできてくれない・・・・


 替わりにグリトラ兄様に仕えているメイドが・・・・不満そうに運んでくる


「あなたなんかの為に、わざわざ食事を持ってきてあげましたのよ。

 感謝してほしいですね。ほら、さっさと受け取ってください」


「なんでグリトラ様にお仕えしている私たちが、

 あなたのようなブタの為に料理を運ばなければいけないのでしょう!」


 毎回この2人のメイドが持ってきてくれるのだけど・・・・態度が悪い・・・・


 名前は覚えていないけど・・・・確か2人とも準男爵家の娘だったはず・・・・

貴族ではなく、予備貴族的な平民のメイドだ。


 平民だからと言って、僕は彼女達に何か酷い事をした覚えはない・・・・


 それなのに・・・・何故彼女達は、僕にこんな態度を取るのだろう?


 

 更に日が経つに連れて・・・・料理の内容が酷くなっていく・・・・

スープなんて多分・・・・肉や野菜の余りを入れただけ・・・・


 正直・・・・食べれた物じゃない


 ただデザートだけは相変わらず

使が添えられていたので、

それでなんとか空腹を満たしていた・・・・



 本当に判らない・・・・



 何故、グリトラ兄上は僕をこんな場所に住まわすのだろう?

 何故、プメラ姉様にアーレン兄様やデクスは助けてくれないのだろう?



 そしてなにより・・・・

クミンはどうして姿を見せてくれないのだろう・・・・


 クミンに・・・・会いたい


 どうして、僕に会いに来てくれないの?





 ちゃんと会って・・・・話したいよ・・・・





 *****



 ~ 修一 Side ~ 


 シュワンの記憶を思い返して見ていると、俺はいつの間にか握り拳をしている。

当然、イラつくからだ。


 周りの態度にも、そして・・・・シュワンのあんな馬鹿女クミンへの執着にもだ。


「さっちん、一応確認しとくけどよ・・・・

 クミンの代わりに食事を運んできた、あの2人のメイド・・・・

 いくらグリトラに仕えているからといって

 シュワンに対してなのか?」


「もちろんそんな訳がありません。

 彼女達はあくまで公爵家に仕えているです。

 もしシュワンさん以外の他の爵家息子にあんな口を叩いたのならば、

 その場で即座に処刑されますよ。

 無論、シュワンさんを殴った執事さんも同様ですね。

 平民ではないですけど、公爵家に仕えている立場なのですから」


 まあ、当然そうだよな・・・・

シュワンが怒らないから、つけあがっていじめてウサ晴らししているだけだよな。


 

 本当に・・・・ああいうバカは何処にでもいるものだ。

まあ、すぐ後悔する羽目になるだろうけどな。



 いや必ず・・・・




 **********

 =作者あとがき=


 作者の獰猛死神です。読んで頂いてありがとうございます。


 更新が遅れていて、本当に申し訳ありません。

 大まかなストーリーはほぼ完成しているのですが、

 なかなかそれを納得いく文章に出来なくて・・・・

 この話の出来も、自分的には70%くらいかな・・・・


 今後も週2ペースであげる予定ですが、

 今回のように1週間お待たせする場合もあるかもです。

 どうかご容赦頂ければ幸いです。



 作者はチキン野郎ですので、誹謗の類はご遠慮下さい。

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