第77話 この世界のヴァンパイア 1

 さっちんは俺にヴァンパイア領の事を説明してくれた。


 ヴァンパイア領は特別な結界が張ってあって、その結界内の時間の流れは結界外(つまり現実世界)よりかなり遅いとのこと。

このネットルームとは逆ということだな。


「ミルさんが結界を出てから400年経過しておりますが、

 ヴァンパイア領内ではまだ40年しか経過してないです」


 マジか?

つまり現実世界の10年がヴァンパイア領内ではたった1年ってことか。


「そうだったのか。

 でも40年も経過しているなら、やっぱりもう終わってるんじゃないのか?」


「いいえ、まだ終わっていません。

 何しろアンデッドの頂点に位置する存在同士の戦いですからね。

 守りや逃げに徹すると、どちらも凄くしぶといんですよ。」


「ほ、本当ですか?良かったです。」

横で俺たちの会話を聞いていたミルが、ほっと安堵の息を吐くミル。


「よかったな、ミル。

 でもさ、なんでヴァンパイア領はそんな結界を張ってあるんだ?

 ミルは理由を知っているのか?」


「すみません、詳しい理由は聞いてないです。

 ただ、父は『神族に勝った証だ』とか言っていましたが・・・」

と、申し訳なさそうに答えるミル。


 神に勝った証? ますます判らないな・・・


 けど大丈夫

ここで答えてくれる、頼りになる俺の能力がいるからな!


「わー頼りにされて嬉しいです(棒読み)

 (ちゃんと普通に頼めないのですかこの人は!)

 ・・・・まあ1番の理由はやはり『人族が醜かったから』になりますね」


 ここでも人族が問題になるんかい!!


「シュウイチさん、そもそもヴァンパイア領なんてものがあったら

 神が放置しておくと思いますか?」


「え?なぜ急にそんな質問を?

 まあ・・・・神なんだから普通は放置しないだろうな」


「その通りです。

 それなのになぜヴァンパイア領なんてのを黙認したと思いますか?

 さらに補足すると、実は結界作成には手を貸したくらいなんです」


「そうなの?それほどの話なんだ・・・・

 えーと、さっきのさっちんの話から察すると人族が原因でそうせざるを

 得なかったからとか?」


「大正解です。全くその通りでたくさんの人族が

 なんですよ」


「・・・・は?

 人が神でも魔王でもなく、ヴァンパイアを信仰するのか?

 この世界の人にとって、ヴァンパイアって有益だったのか?」


「もちろん違いますよ。

 シュウイチさんはヴァンパイアロードやエルダーヴァンパイアに血を

 吸われた美男美女が、その後どうなると思っています?

 前世の記憶から、吸われた直後はともかく時間が経過すると共に

 醜く変貌するとか思っていませんか?」


「ああ、そう思っている。

 全身から血がなくなるから、皮膚は変色して身体中が腐りぼろぼろになっていくとか、

 化物のような姿に変身するとかな」

吸血鬼関連の映画とかでは、もはや定番だったからな。


「この世界では違います。

 血を吸われた後でも容姿は変わりません。

 変わるのはむしろ中身のほうですね

 ・人族から魔族へ変わる事

 ・牙を意図した時に出せる事

 ・成人男性数人分の力を得る事

 ・必然的に魔眼になる事

 ・強力な魔力が宿り、教わらずとも高度な魔法が使えるようになる事

 ぐらいですかね?

 蝙蝠や狼に変化することもできません」


 へー、それはいいな

やっぱり俺的には、女ヴァンパイアなら美しい容姿のままで居て欲しいからな。


「その美男美女たち・・・・まあここでは美女に統一して話しますね。

 その美女たちが、今度は主となったロードやエルダーのために人族から力を

 吸収していくことになります。

 その方法が人族からしたらとても魅力的な内容だった為に、

 信者が爆発的に増えていったんです」


 魅力的な方法?


「美女たちが数名ずつに分かれて、月が出ている夜に人族の町や都市に平然と

 出現するのです。

 シュウイチさんが好きそうな実例ですと、

 とある町の場合では夜の月明かりの中、

 透けて見えるほどの薄い純白ワンピースを着て降臨しました」


 な、なんだと!!

確かにそれは魅力的だよ!!

ロードは判ってないようだが、ロードの美女たちは『男心』ってものをしっかり判っているようだな!


 夏とかの暑い時期、なぜ日本の女性が魅力的に見えるのか?

それは間違いなく、薄くて身体のラインが良く判る服を着ているからだ!


 中でも薄くて白いブラウスはいい!

なぜなら盛り上がりがはっきり判る胸部と、そしてうっすら映るブラジャー・・・・

通称『透けブラ』が見れるからだ!


 透けブラ・・・・最高じゃないか!


「シュウイチ様、また黙りこんでどうしたのですか?」

「ミルさん、シュウイチさんは度々こういう妄想突入状態になるので、

 いちいち気にしてはいけませんよ」


 ええい、外野がうるさい!

そして白いブラウスの更に上に位置する(と勝手に思っている)のが、

『純白ワンピース』なのだ!!


 よく漫画とかで見かけるかと思うが、ヒロイン的美女が純白のワンピースを着ていると、夕日やら月明かりやらで身体のラインが透けて見えるんだ!

(いいよなそういうのって!(力説))


 しかも、純白ワンピースの良いところはそれだけじゃないんだ!

下着に関しては、ブラだけなくパンティーまでも透けて見える点なんだ!!

 

 これぞ、まさに男心に突き刺さる極上のシチュエーションだと言えよう!


 まさかそれが、この世界では遥か昔に既に行われていようとは・・・・

異世界、恐るべし!!


「あの、シュウイチさん?

 言っていませんでしたが、ロードの美女たちは?」




 ・ ・ ・ ・ ・



 

 な ん で す と ー ー ー ! !



「いえ、だって血を吸われた後だと容姿は固定されてしまいますし、

 排泄などもしなくなりますから・・・・」


「それじゃあ、透けブラじゃなくて『透けB地区』とかになるのか?」


「まあ、そうなりますね」


 くう!!それは盲点だったぜ!!想像できなかった!!

凄いぜ異世界!


 あ、ならもしかして・・・・

俺はつい、隣りにいるミルをチラ見したら・・・・


「わ、私は違いますぅ!!

 ちゃんと下着をつけています!まだ私は『人』ですからぁ!!」

俺の視線に気づいて、両手で身体を隠すようにして高速で下がっていった。


「そうか(ちぇっ、残念!)

 でも、それは凄く魅力的な光景だったろうな」


「ええ、そうでしょうよ。

 ただでさえロードやエルダーが目をつけるほどの美女たちですからね。 

 そして美女たちが男性1人を、魔力で作成した建物の中に連れ込むのです」


 おおお!!

そんなシチュエーションの中で選ばれた男性は、さぞ嬉しいだろうな!

たとえ相手がヴァンパイアであってもな。


「指定した男性以外は魔力で防がれて建物内には入れませんが、

 窓から覗くことはできます。

 他の男達が覗き見していても全く気にせず、美女たちはゆっくり衣服を脱ぎさり、

 男性に肌を重ねるよう求めるのです」


 『ごくり』と、俺は唾を飲み込みながら想像してしまった。

月明かりの中、ゆっくり肩から落ちていくワンピース・・・・


 男なら絶対に、興奮すること間違いなし!!


 俺は夢中になって続きを聞いた。



「そしてその後は当然、男性を心から篭絡させる情熱的な『行為』をします。

 その『行為』に関しては、さすがに説明はしませんけどね。

 ただ、覗き見している男達に凄い興奮を与える程の

 濃い内容だったとだけ言っておきますね。

 そうして男性を心の底から籠絡させて、その後で血を含めた

 あらゆる『力』を吸います」


 まあ、ヴァンパイアだから当然の行為だな。


「しかし、ここからがおそらくシュウイチさんの知っている内容とは違うと思います。

 美女たちはワザと吸いつくさずに少しだけ残しておいて、

 逆に少しだけ自分達の力を一時的に。」


「一時的に力を貸し与える?」


「そうです。

 そうする事で男性を一時的にですが、必ずヴァンパイアに出来るからです。

 ヴァンパイアになった男性は体や容姿が人族時よりたくましく美形になり、

 人族時には有してなかった力を得た存在に変わるのです。

 男性にとってそれは、とても素晴らしく感じるわけですね」


 そりゃそうだろうな。

いうなれば、変身した戦隊ヒーローや仮面ラ○ダーみたいな感じだろうな。


「その男性は覗き見している男達に、その事を自慢するわけです。

 得たパワーの凄さとか、美女たちとの行為の素晴らしさ等をですね。

 そして美女たちと夜が明ける前に去っていくわけです。

 さて、覗き見していた他の男性がそれを見てどう思うか、

 シュウイチさんには判りますか?」


 ああ、それは判る・・・・判ってしまう。

当然『俺にもして欲しい!』ってなるだろうな。

もてない男達からしたら、まさに夢のような話だ。


「ええ。

 何しろ人族の男性からしてみれば

  →美女とエッチなことが出来る

  →ヴァンパイアという不死で強力な魔族になれる

 など、魅力的に見えるでしょうからね。

 こうした事を繰り返して、ヴァンパイアは信者を増やしていったのです」


 確かに聞く限りでは、もの凄く魅力的な内容だった。

これじゃあ信者が爆発的に増えていっても不思議じゃないな。


 あれ?

でも、どうしてそれがヴァンパイアの『結界』に繋がるんだ?



 俺は引き続き、さっちんに説明を促した。







 ・・・・ちなみに・・・・






 この時の俺は、残り滞在時間のことなどすっかり忘れていたのだった。





**********

 =作者あとがき=


 作者の獰猛死神です。読んで頂いてありがとうございます。


 またまた更新が遅くなり、申し訳ありません。

 言い訳させてもらうと、会社から休日出勤の要請がきたからです。


 凄く大きい倉庫内で複数の会社が入って仕事をしているのですが、

 どうもコロナに感染した人と近しかった人を休ませているようで

 人が足らないみたいで・・・・本当に申し訳ありません


 作者はチキン野郎ですので、誹謗の類はご遠慮下さい。

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