第37話 その名は・・・・さっちん!!

 ロッカー室を説明していたシグリーシャ似の彼女が説明を続けた。

「ちょうどいいので、ここから出口のほうも案内しますね」

と、ロッカー室の奥にあった下り階段を指した。

結構大きくて緩やかな階段だった。


 降りていくとこれまた立派で大きな両開きの扉があった。

「ここが出口となりますので覚えておいて下さい。

 イメージでは

 風除室→更衣室で本館(ネットルームの場所)用に着替える→本館で楽しむ

  →更衣室で現実世界用に着替える→出口

 と言った感じでしょうか?

 もちろん本館からも出口に通じる場所があります」


 なるほどな、遊びの場合は、「着替えて遊んで着替えて帰る」って感じだな。

彼女について降りていき、扉を開ける。


 ・・・そこは四方がガラス張りルームのような部屋だった。

出口もガラスのような両扉だ。

周りに見えるのはシュワンの閉じられた部屋。


「ここが出口です。入口と分かれているのは出入での衝突を避ける為ですね。

 出る場所は入口と全く同じです。

 ちなみに滞在限界時間5分前になると、ここに強制的に飛ばされます。

 更衣室に戻る事は可能ですが、風除室には戻れません。

 早い話が、5分で着替えするなり準備するなりして出ろという事です。

 四方が見えるようになっているのは、周囲確認用の為です。

 出た直後の危険を減らす為の、シグリーシャ様の慈悲ですね。

 部屋の中はともかく、危険な森とかでは重宝するかと思われます」


 なるほどね。いろいろ気を使ってくれているんだな。

確かに、例えばドラゴンに襲われてネットルームに逃げ込んだとしたら、

ここでドラゴンがいるか確認して、居なくなったら出ればいい訳だ。


 ちなみに、ここから外に念動力は使えるのか?

俺はここから見えるシュワンの部屋のテーブルが動かせるかどうか、

試しに念じてみたが・・・・動かないな、残念。

ということは念消力も無理だな。


 まあ、出る時に危険察知が反応しなければ大丈夫かな?

俺の、この危険察知スキルはかなり優秀っぽいからな。


「そうです!優秀なんです!もっといろいろ確認すると良さがわかりますよ!」

と、急に喜びながら言ってくるシグリーシャ似の彼女。


「・・・・」


「あ、いえなんでもありません」


 ・・・・


 ・・・・・・・・


 ふ、ふふふ、 ふふふふふふふ。


 判ってしまったよ。

彼女を「ビシッ!」っと擬音の表示が出るような指差しをしながら言った。


「お前はシグリーシャから姿と意思を与えられた、俺の『危険察知』能力だぁ!」


 びっくりして後ずさる彼女。

「な、な、なんで判っちゃうんですかぁ~!!!」

「ふ、簡単な事だよ、ワトソン君」

「誰がワトソン君ですか!」


 いや~、この台詞がスムーズに言える時がくるとはな。

でもラノベ好きとかならピンとすぐ来るだろう。

・俺の能力たるネットルームの中にいて、シグリーシャに似ている彼女

・俺の思考を読み取って、危険察知の事を褒めると嬉しがる


 それらを考えると、答えはおのずとすぐ出てくるってもんさ。


「でも普通なんて考えないでしょう!?」


 ふ、それは甘い!!


「甘い、甘いぞ我が能力よ!俺の元いた世界を舐めるなよ?

 俺の前世の世界はなあ、戦艦から馬、反物や魔道書や日本刀など、

 なんでも美女に変えてしまうすっごい世界だったんだからな!

 ならば、『能力』だって美女に変わってしまっても、

 俺の居た世界の同志達ならば驚きなどしない!」


「一体どんなのだったんですか? 修一さんの前世の世界は・・・・」

はあ、とため息をつく彼女。

まあ、夢と妄想だけはもの凄かった世界と言えるだろう。


「そして、今から君の名は『さっちん』だ!」


「急になんですかその安直な名前は!!」


 ふ、シンプルだからこそ覚えやすいのだよ。

君は俺の能力なんだから俺のものだ。

なら、どう名前をつけようと俺の自由のはずだ。


 そして・・・・俺のものなら抱きついたりしてもいいはずだ!


「さっちーーん!!」


ひらり。さっちんはひらりとかわした。


「まだだ、さっちーーん!!」


ひらり。さっちんはまたひらりとかわした。


「ふふ、私は『危険察知』なんですから、簡単にかわせますよ?」


 ふ、俺もその程度の事は予測できている。

だがしかし、ここは限定された空間なんだぞ?

しかもさっちん自身は、そんなに動きは早いほうではなかった。

ならば、俺の「念動力」をどうかわす?


「!? それはずるいです!」


 俺はさっちんを念動力で四方から取り囲むように念じる。

事前にさっちしたさっちん(笑)は急いでドアから出ようとする!


 が、一歩俺が早い!


「きゃああああ!!!」


 俺は念動力で足止めしたさっちんに抱きついた。

「改めてこれからよろしくね。さっちん!」

頬ずりしながら胸をまさぐる。


「自分の能力に、あん、欲情しないでください!」


 欲情なんかじゃないさ。だから脱がすとか最後までとかなんてしない。

あくまで挨拶だよ。

きっと可愛くて頼りになる妹が居たらこんな気持ちになるんだろうな。

やっぱ愛だろ、愛!



「欲望しか感じられません!」



・・・・俺の愛は伝わらなかったようだ。




**********

=作者あとがき=


作者の獰猛死神です。読んで頂いてありがとうございます。


ここ数日でフォロワー数が5倍に増えてびっくりしてます。

ありがとうございます。

作者的に面白くと思っているのは、この後予定している

シュワンの兄弟との顔合わせ以降になります。

可能ならそこまでお付き合いして判断してもらえたらと思います。


作者はチキン野郎ですので、誹謗の類はご遠慮下さい。

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