エピローグ
さて、長い長い逃避行も終わってようやく王国に帰ってきたアレン達。
以前とは違って、忘れかけそうになるが帝国の第一皇女から褒美として領土の一部をもらえる。ちゃんと戦争をしたかと言われれば趣旨が途中から変わってので首を傾げそうになるが、戦争を終わらせたので約束は約束。
これで、遠征に出かけた分の帳尻はきっちり合わせられるだろう。
さらに───
「……おにいさまはハーレムじゃなくて最強美少女メイド軍団を作りたかったわけなんだね」
「おっと、新たに偏見によって俺の性癖が捏造されたぞ」
ウルミーラ王国、王城のアレンの一室にて。
妹のアリスは帰ってきた兄と遊ぼうとやって来たのだが、開口一番にそんな言葉が漏れてしまった。
まぁ、それは仕方ないのかもしれない。
何せ、アレンの部屋にはメイド服を着た女の子が二人もいるのだから。
「……メイド服、ヒラヒラ。ちょっと動き難い」
「いずれは慣れますよ。住めば都、着れば晴衣裳、ご主人様もきっと目を輝かせて鼻の下を伸ばすこと間違いないしです♪」
「俺さ、別にメイド服着てのプレイってあんまり好きじゃないんだよね……」
「あら、私はお似合いではないと?」
「いえ、ぶっちゃけいつもめちゃくちゃ似合っております」
「ふふっ、そうですか」
セリアが即答を受けて上機嫌そうな笑みを浮かべる。
ただ一人、状況変化についていけないアリスだけは、ソファーに座りながら対面に座る兄に向かってジト目を向けた。
「……それで、なんで亡命した賢者のお弟子さんがメイド服を着てるの?」
此度の戦争の収穫……と言ってもいいのか分からないが、魔法国家から正式にジュナが王国へ亡命してきた。
元々捕虜の扱いだったが、王国はジュナを王国民として受理。
セリア同様、この度晴れてジュナは弱小国家の一員となったのだ。
「なんでも、セリアがタダ飯食らいは許さないんだと。だったらメイドとして働けって」
「もう、メイド二人で国が落とせるんだけど……そこんところおにいさまはどう思う?」
「え、めちゃくちゃやばいと思ってる」
ジュナの話が大国四つに知れ渡ったら、迂闊に戦争など仕掛けて来られないだろう。
それぐらいのネームバリュー。ただでさえ魔術師のセリアと英雄と呼ばれるアレンがいるのだ。弱小国とは思えないほどの戦力である。
「いいですか、ジュナ様。メイドとして働くのであれば、私は先輩です。ご主人様と一緒にいられるようポジションを計らいましたが、ここからはそこのところのご理解をよろしくお願いします」
「……いえす、ぼす」
「あと、私が第一夫人です」
「……なるほど、先輩後輩の序列がここに現れる。先輩の命令には逆らえないので二番でも可」
後ろではいきなり反応のし難い話題が。
アレンはあえてのスルー選択。そっとジュナが初めて淹れてくれた紅茶を一口飲んだ。
「おにいさまおにいさま」
「ん?」
「聞いたよー、セリアさんからいっぱい」
何の話だろう、と。アレンはニマニマしている妹を見て首を傾げる。
「帰ってくるの遅いなーって思ってたら、またまた
「いつでもウェルカムだぞ、妹よ。兄妹のスキンシップのために俺はいつでも両手を空けている!」
「えー、その両手はもう枠が埋まってそうだし、私は背中でいいよ」
「いや、別に俺の両手は先約が入って───」
そう言いかけた時、ふと両手に柔らかい感触が訪れる。
右を向くと、そこには愛らしい笑みを浮かべて抱き着いているセリアの姿。反対側を見ると、いつもの端麗な顔立ちを見せながらしっかりと抱き着いているジュナの姿。
本当だ、両手が妹のスキンシップを受け取る前に埋まってしまった。
「はい、もうこのポジションは私のものです♪」
「……後輩の私は余りものポジ。でもこれはこれで満足」
魔法国家が誇っていた最高戦力の二人。
それ以前に、誰もが目を引くような美少女と美女。
最近『し』の字も出てこない娼館では絶対にお目にかかれない美しい方々のスキンシップに、アレンは頬を引き攣らせてしまった。
その時───
「……アレン」
ジュナがアレンの腕を引っ張る。
そして、少しだけ頬を赤らめてしっかりと口にした。
「……ありがと、私を助けてくれて」
息苦しかった、楽しいこともなかった。
そんな女の子は、一緒にいたいと思えるような人とずっと座っていたいと思えるような場所を見つけた。
もちろん、そこに至るまでに多くの困難があった。
しかし、
それは、今この表情を見れば一目瞭然。
セリアも、アリスも、柔らかい笑みをジュナへ向ける。
そして、アレンもまた同じように笑みを見せるのであった───
「よかったよ、ちゃんと
これにて、無事閉幕。
客席の皆様はご退場ください。
囚われの
「いやーっ、疲れた疲れた! 長い戦争も終わって家に帰った瞬間、俺のお話は終了! 超有名人も加わって各国ビビってもう戦争なんて起こんねぇだろ!」
「おにいさま、ちょっとそれフラグ───」
「アレン、いるかい?」
コンコン、と。ドアがノックされてロイが姿を現す。
美少女美女二人に抱き着かれている弟を見て一瞬だけ苦笑いを見せたが、無視して軽く咳払いを一つ入れる。
その姿を見て、何やら嫌な予感をヒシヒシと感じたアレンは頬を引き攣らせた。
「……なぁ、アリス。俺、さっきの発言を訂正したいんだけど」
「ちゃんと立てたフラグはおにいさまが回収して。私知らない」
妹に見捨てられたお兄ちゃん。
そして、そんな心が折れそうになるアレンへロイは容赦なく口にするのであった。
「連邦の黒軍服様よりお手紙が届いててさ……何やらこっちに別枠のお仲間が攻めてきてるってあるんだけど、様子見てきてくれないかな?」
アレンの動きは早かった。
即座に二人の腕を振り払い、脱兎のごとく窓枠へと足をかける。
しかし、この場には魔術師が二人。
セリアが生み出した霞の腕がアレンの首根っこを掴み、最近覚えた『
「ぐぇっ!?」
「ふふっ、ご主人様」
そして、倒れ込んだアレンへ向けて、可愛らしいメイドの相棒は口を開いた。
「帰ってきて早々ですが……どうやら、今回も戦争のようですよ」
「やだよもぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉさっさっとこの国出て隠居してぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!」
ウルミーラ王国、第二王子。
彼は今日もまた、戦争に愛されているご様子であった。
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お久しぶりです、楓原こうたです。
本編、これにて一旦完結になります!
また更新させていただく際も、どうかよろしくお願いします!🙏🙏🙏
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