宵澤ひいな

作者様の完結作『序曲 プレリュード from season to season』の続編です。 序曲では高校生だった慎一と真智子が、それぞれの進路を決めて大学生になりました。二人は互…続きを読む

儚さと遣る瀬無さが伝わる掌編です。 忘れたくない記憶がモザイク加工に蝕まれるさまは、 モザイク模様の薔薇窓が不可抗力に壊れるような切なさです。 生きてきた証をひとかけらずつ失っ…続きを読む

失恋した美中年が美青年を拾い上げるところから、物語は始まります。 ずぶ濡れ子犬もとい美青年・奏くんの抱える或る事情を慮る美中年・海斗さん。 彼らは心の空隙を埋めあうように自然に寄…続きを読む

つきのさんの第四詩集です。 ｢月の道標｣に始まって、 ｢月想うひとありて｣、 ｢三日月想詩｣と続き、 第四詩集は「十六夜書簡」です。 つきのさんが「月の欠片」で綴られた御言葉は…続きを読む

見過ごすのは簡単です。 傍観者は安全です。 見過ごされ被害に遭った少年の心の傷は、 はたして如何ほど、深かったでしょうか。 主人公は帰国子女の十四歳の少年・紘一。 フランス帰り…続きを読む

肉と魂は調和して然り？　 それとも背反して然り？ 冒頭、病院のカウンセリングから語られ始める若き人の悩み。 既に「肉と魂」の、せめぎ合いに耐えかねているのだろうと思わされる。 生…続きを読む

少年少女の心の傷に宿る精霊。 精霊の力を借りて戦う彼等の弱さは強さに変化します。 各々が宿命を背負い、切れそうな心を持ちながら優しさを失わず、消せない迷いに逡巡しつつも一途に健気に…続きを読む

もう無くなって行けなくなった場所。 嫩（わか）い日の微笑ましくも少し苦い記憶。 双眸（ひとみ）を見開くよりも伏せることで見えてくる風景があります。 それは「懐古」というエッセンスを…続きを読む

作者様独特の感性が聖書を紐解く世界です。 此処には後世の哲学・文学・絵画……あらゆる芸術に聖書が与えた影響の大きさが読み取れます。 聖書がイエス・キリスト以前・以降に分類された経…続きを読む

美しき桜の園に舞う少女の時代。彼女たちを切り取る独特の視点。 交錯する少女の姿と心を、写真と絵画という芸術を媒体に結実させる百合物語。 学園に集う少女たちは『本当にやりたいこと』…続きを読む

誰の視点で、えがかれているのか。
謎解きと言葉遊びの要素も秀逸な純文学です。

武蔵野の美しい自然を舞台に巡る「ミドリ」、
その色と意図を是非、お確かめください。

『ジュールの森』は純文学であり、ボーイズラブの要素を持つ青春小説であり、物語の色は人生を映し、必ずしも瑞々しい森の翠色ばかりではありません。19世紀のフランスを舞台に、ジュールとい…続きを読む

Webで楽しむゲームブックです。 リンクをたどってスピーディーに読み進めることができます。 たとえば 「右の道へ行く→８ページへ 　左の道へ行く→９ページへ」 という選択肢に出会…続きを読む

「この闇は、やがて必ず明ける」から、 闇を歩く時間にも意味がある。 生じてしまった心の溝が埋まる先には、 夏の海のように輝く瑞々しい笑顔が、 きっとあるはず。 だから焦らず歩き…続きを読む

閉塞的な部屋から広々とした海へ、 心が船を漕ぎ始めるように、前向きで綺麗な短編です。 細胞が、あたたかく瑞々しく充たされました。 本物の海のそばで……少年の決意が輝きます。 美…続きを読む

『カムパネルラによろしく』 読了時、タイトルの意味が明瞭になります。 『銀河鉄道の夜』へのオマージュ。 それだけでは言い尽くせない魅力が溢れる作品です。 魂を水辺に置くときの遣…続きを読む

「僕」の正体に驚かされます。
上手に騙されてしまいました。
ホラーテイストのミステリー。
是非、ご一読ください！

地球温暖化が進む地で、原因不明の奇病が蔓延します。 或る特定の女性だけを侵す病は、若くして老化を進ませて精神を狂わせます。 塾講師の青年・良弘は、恋人を奇病に奪われ、妹を奇病に侵さ…続きを読む

植物標本（ハーバリウム）。 植物を長期保存する方法であり、 研究や鑑賞目的で用いられる綺麗な壜詰めの花です。 壜にはオイルが充たされて、無菌状態を保持します。 このハーバリウ…続きを読む

何度か読ませていただいています。 あまりにも、この世界に惹かれ過ぎていました。 人間は本当に美しいものや怖いものを目にすると、 足が竦むと云いますが、私は指が竦みました。 わざと難…続きを読む

空は染まる。 気圧は上がる。 世界の終わりが危惧される世界にて、 形而上は形而下に。 墜落した天使は科学者と共に還れぬ天を仰ぐ。 その心には寂寞より、むしろ平穏を感じる。 墜ちそう…続きを読む

「バレンタイン・デーの朝に下駄箱を開けると、半分に割れたハート型のチョコレートが置いてある」 それは或る高等学校に伝わる七不思議のうちの、ひとつ。 さらに、 「放課後までに、他の誰…続きを読む

音楽ゲームが題材のeスポーツラブコメです。 eスポーツの持つ「競技性」と「興行性」の魅力が見えてきます。 高校生の紫帆ちゃんを巡って、ちょっとした恋のバトルも、ありました。 登場…続きを読む

不穏な病が蔓延する２０２０年の夏。 少年は或る大会への参加を諦めざるをえなかった。 諦めることは、つらい。喚き出したいほどに。 しかし彼は或る有識者に「戦略」を提示されて、 更なる…続きを読む

一枚の絵のように美しい。 と云うと陳腐だけれど、 実際、そのように美しい。 風景を見る瞳が研ぎ澄まされ、 即興は永遠に、なる。 花筏は嫩者たちの心をのせて、 いずこへと消えるの…続きを読む

三年後のオリンピックの日がきたら、果たされるべき約束がありました。 迎えた2020年、コロナウイルスの蔓延によるオリンピックの延期。 しかし、約束は思わぬ形で果たされます。 人の…続きを読む

学校で習うことのない常用外漢字。 造形が美しい画数の多い文字。 古文の中に匿われる言葉。 実用性より装飾性が心地好いこともあるのですね。 文學の「物語性」を超えた「文字そのもの…続きを読む

年齢を問わず読んでほしい、幸せの書です。 一話あたりの文字数が多過ぎず、その控え目な文字数の中に、作者さまの想いが満ちています。 たいへんなことを乗り越えてこられた作者さまだから辿…続きを読む

現代日本で植物学に通じていた学生が、自己犠牲の交通事故で亡くなり、異世界に転生します。その地で「先生」と呼ばれる学者に成りました。 四季折々の花が一斉に咲き誇る王国の花姫さまが病…続きを読む

研究者は命がけでした。それは利益を追うためではなく、自分の生命のためでしたが結果、拡散したのは平和であり、レンゲであり、幸福でした。 これは、弱肉強食の上昇志向より共存共栄の秩序を…続きを読む

張り巡らされた謎が明らかになるとき、心が補填されたような気持ちになりました。 新興宗教への依存や共依存など、現代社会の闇に近付くなかで、主人公の病みも浮かび上がります。 読み手…続きを読む

きれいに咲いた桜に会いに来るのは誰でしょう。
約束が果たされたとき、散った花びらは嬉し涙のように綺麗。
春の訪れのように心あたたまる御話です。

失恋から未来への希望に変わるストーリー。
友情あふれるハッピーエンドが、
春の訪れのごとく温かい短編です。

あたたかい季節に是非、どうぞ。

先天性の残留思念視能力により、視界に人間の『色』が見える主人公。 彼の名は甲斐健亮。彼が想いを寄せる少女の名は折賀美弥。彼女の兄の折賀美仁。 3人の周りに頻発していた超常現象の全貌…続きを読む

四季折々の自然を表す語が五七五という形式に折り込まれ、更に作者様の文学的かつ哲学的で確かな真実をなぞる随想が、独特の余韻を残すエッセイです。 不図、立ち止まって自然の中に身を置き…続きを読む

三日月の許、
花がほころび、散り、
次の季節に、ほころぶのを待つような、
繋がる生命と、弱さの裏にある強さが、
ひたひたと寄せる麗しい詩です。

アイヌ語で白く濁った川のことを「ヌブルベツ」と言うらしい。 「喪失」とは、いつまでも鮮やかな色ではなく、徐々に時間の膜に蔽われて、ヌブルベツの風情を醸すのかもしれない。 「蟻の枝…続きを読む

焼けるような痛みと熱さをもたらす「痛熱病」 それは不治の奇病ゆえに、高校生の少年を絶望させる。 希望無き病床で、彼は「雪女」と名乗る少女に出会う。 青い瞳を煌めかせる天衣無縫の真…続きを読む

『文字』の連なりから成る『物語』とは何でしょう。 『物語』を構成する『文字』を奪われると、記録・保存が不可能に成るでしょうか。 疑問を重ねられた後に展開される『物語』は、弱肉強食…続きを読む

詩花ノ園。 匿われた詩人の心の花が、 刹那の宵闇、 絶妙な韻に誘われて咲く。 したたる文字の色は、 荊棘かベリーの赤色。 金木犀は生きて漂う。 芳香に巻かれた韻律の花片が正直に咲…続きを読む

作者様の多種多様な心の絵が、一見無秩序に実は秩序を保って、飾られているような趣きです。 一編の長さもタッチも各々違います。連作もありますが、基本的に一話完結の掌編で手に取り易く、擬…続きを読む

思い出の公園。 黄緑色の似合う彼女の大切な人が失われた空間の遣る瀬無さ。 書きかけの手紙。 サクサクという雪の擬音。 すべてが鮮やかに切なく伝わってきます。 雪降る夜の静けさの中…続きを読む

ＡＩと聞くとＳＦを連想しますが、この小説は現代ドラマです。 イヤイヤ期の一人娘と多忙なシングルマザーを助けに来たＡＩ。 話しても相談しても無駄。 決め付けて悩みを抱え込む母に手を差…続きを読む

等身大の作者様の近影で在り 時として痛みを伴う句であり 「自身」を客観的に見詰める視点である 融け出す前の生命の揺らめきを拾い上げて魅せる その妙なる韻律 現代を生きる歌人の心が…続きを読む

『恋愛』に興味の無い男の子が、 女の子の真剣な告白を断りました。 失恋したばかりの少女・亜貴は、 その様子を他人事とは思えず、事情に立ち入ります。 『恋愛』に興味の無い男の子。…続きを読む

はたして、純文学とは何でしょう。 この御作品に於いては「文体に純粋な熱情が乗っていて、その熱が読み手に伝播する」に尽きます。 音楽をテーマに疾駆する若者の想いには、表現者の魂が乗っ…続きを読む

中学２年生の少女・泉は、教室に閉塞感をおぼえながらも、心のバランスを保つ。 うまくバランスを保てない少女が居る。 教室より理科室に馴染む少年が居る。 教室という箱に、個人の別世界が…続きを読む

法の裁きが届かないところで、人知れず泣いている者が居ます。 傷付けられた側は心を閉ざし、時間を薬に傷を癒やそうとしますが、 「味わえ」 自分と同じ傷を味わえと、真実は、そう叫びたい…続きを読む

ノルウェーの作家アルフ・プリョイセンの名作『小さなスプーンおばさん』が、 現代日本に甦ったら……きっと『小さなスプーンおくさん』に成るでしょう。 身体が突然、ティースプーンの大き…続きを読む

『ヒーロー』ではなく『傍観者』と『当事者』が居ます。 地球の災害を阻止するべく、選ばれし脳波を持った少女が英雄と言う名目で犠牲になります。 事実を知る少年の同情、そして悔恨の念。 …続きを読む