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作者 夷也荊

72

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★★★ Excellent!!!

ううぉー(感嘆のため息)最新話まで拝読しました。ものすごく面白かったです。
この面白さは間違いなく夷也さんでないと出せない持ち味ではないかなと。
人間を掘り下げるように暗く陰鬱な部分をしっかりと描いて、それを面白さに繋げていく。これがオリジナリティだよ、と私は思います。
前回拝読した『獏の見る夢』もメチャクチャ面白かったんですが、こちらも凄まじいものがあると思います。

式という鬼を飼い、蔓延る鬼を式に食わせる能力者のお話なんですが、肌に纏わりつくような不快の描写が素晴らしく、微妙な心の機微を描いて読者の心を物語の中へと引きずり込む。目に浮かぶ、鮮やかなまでの文脈に惹きつけられてゾクゾクするという方も多いのではないかと思います。
夷也さんの作品に触れて「ああ、私ってこういう作品好きなのだな」と発見でもありました。

章ごとに主人公(能力者)が変わりまして、特にお気に入りの章は『羊の章』と『雉の章』なんですが、その他も面白い。全部を読み終えてもう一度読み返したいような衝動にかられます。
まだ、物語途中なのでぜひこれは追いかけて頂きたいなと。
おススメいたします!

★★★ Excellent!!!

神代の御代、黄泉平坂で恋しい夫にイザナミノミコトは呪詛を放った。
「いとしいわが夫(せ)の君よ。こんなことをなさるなら、私はあなたの国の人を一日に千人絞め殺しましょう」
それに対し、イザナキノミコトは呪詛返しを行った。
「いとしいわが妻の命よ。あなたがそうするなら、私は一日に千五百の産屋を建てるだろう」
こうして放たれた鬼たちが、ひとの生命を喰らい続ける――

感情を麻痺させて常にgive & takeで生きる千砂は、「受信」現象に悩まされていた。ある日「何か」に狙われた彼女を救った令は、式「犬」を使う式使いだった。彼は千砂にも「鶏」がいると言う。
親にも級友たちにも疎んじられる少女・巴は、必死に生きようと足掻いていた。彼女に憑く鬼の正体は――
幼馴染の改と甲は、甲の姉・菜摘をめぐる愛憎のただなかにいた。そこへ、鬼たちが現れる。


日本古来の鬼道・陰陽道・卦などが複雑に絡み合い、現代日本を生きる青年・少女たちの葛藤を巻き込んで繰り広げられる、暗く、激しく、心が痛くなるような伝奇ファンタジーです。民俗好きにお薦めします。

★★ Very Good!!

この物語は、現代日本が舞台と思われるが、ファンタジーめいた非科学的な要素も含んでいる。はじめのうちは、正直、物語についていけない、そんな雰囲気を感じるのだが、いつの間にか、物語に引き込まれ、夢中になる。
確固たる理由を述べる。ずばり、この国においては、特に夏の季節、ホラー映画やホラー特番が「当たり前のように」持ち上げられることが多い。
夏の間は、ホラー特集番組を見ながら、「もしかして幽霊とかいるんじゃね?」って思ったりしている人は多いはず。または、自動車の運転中にぎりぎりのところで事故を免れたりすると、「守護神が守ってくれたのかな」なんて思う人もそれなりにいるはず。交通事故防止の御守りを車につける人が結構いるのもその証である。
夷也荊さんの今作は、心のどこかで幽霊とか神とか魂とかを信じているけど普段は口に出さない、そんな人たちの心を、不穏にわくわくさせてくれる。
「式」が今作のキーワードとなっている。はじめは計算式のことかと私は思ったが、どうやら、「言葉にできない怨念」とか「当人を縛り付けている憑き物」が「式」のようである。
是非、はじめは難解ですが、どうか耐えて、第一章までは読んでみて欲しいです。
退屈な現代社会の私たちの苦悩や嘆き、憂いを、式使いの主人公たちが代言してくれています。

★★★ Excellent!!!

『文字』の連なりから成る『物語』とは何でしょう。
『物語』を構成する『文字』を奪われると、記録・保存が不可能に成るでしょうか。

疑問を重ねられた後に展開される『物語』は、弱肉強食の現代日本、「give&take」の信念で生きる若い女性の価値観の発露から始まります。仮の名をレイ。零を暗示する響きです。彼女の日常生活に謎の現象が襲いかかります。

受信とは? 式とは? 謎の中、恐怖感と睨みあうレイの真名が『物語』のキーに、なっていくのでしょうか?

日常に、さり気無く歩み寄る幽遠の足音は、聴こえ始めたばかりです。