今この瞬間の大切さ

まるで民俗学だ。
初見で思ったのは、まずこれだった。
細かな設定は、どこまでが実際に語り継がれているものなのか。
どこまでが作者によって作り出されたものなのか。
知識を詰め込むように、読み進めていった。

鬼と式。
大切な人を奪われてしまった事への復讐と、大切な人が向かう先を案ずる思い。
集められた東西南北に指名された者たちは、それぞれが苦しい現実の中を生きていた。
心がとても苦しくなる場面につらさが覆いかぶさり、悔しさに身もだえもした。
世の中の理不尽が読者を物語りに引き込んでいく。

人は、醜く弱い。
甘い言葉を信じ、ふらりと近寄ってしまう。
何が本当で何が嘘なのか。
判断力が鈍るほどの口のうまさにとりつかれ、己の目的に憎悪が加わる。
救いはあるのだろうか――――。

この物語に入り込み、確認してもらいたい。
誰もが持つ弱い心に目を瞑ることなく、最後までご覧になってもらいたい。
是非、ご一読を。

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