蝶と華の契り

作者 夷也荊

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★★★ Excellent!!!

その《死病》に侵されたものは生きながらにして、地獄に落ちる。
処女だけが掛かるその《死病》は、罹患すると急激に老いていき、知能も理性も損ない、やがては腐乱した骸だけを残して息絶える。患者らは一様に、みずからのうちに《赤ん坊》の鼓動を感じるという。赤ん坊にたいする執着と多幸感に蝕まれ、患者は恐怖を覚えるまでもなく朽ちていく。
まさに呪いの如き《死病》……

その発端となった悲しき伝承が紐解かれたとき、あなたはなにを想うのか。

遠い昔日の幻想が現実を毒す、薄気味悪くも美しい怪奇譚――です。
頁を進めるほどに、此岸と彼岸の境がじわりと侵されていくような錯覚に襲われ、嵌りこむように物語に没入していきました。
蝶、華、契り。それらの謎が解けていくと、単なる恐怖の対象でしかなかった《死病》もまた、悲しい由縁あってのものだったのだとわかります。そうして事の発端となった《ふたり》が、地獄から救われることを祈らずにはいられなくなるのです。

民俗学を根として、そこから幻想の枝葉を拡げていくような著者さまの技術は、まさに圧巻でした。
ほんとうに素晴らしい小説を拝読させていただきました。

★★★ Excellent!!!

非常に不気味なこの世界観、あっという間に虜にされます。
もう次がどうなるのか、続きが気になって仕方がなく、連載中に出会わなくてよかったと思いました。

恐ろしい物語の展開の仕方は、むしろゆっくりです。ですが、着実に真実へと導かれるホラー感は、読了後この世界観に取り残される強い余韻に包まれます。
決して生易しい話ではないですが、そこが騙しのない本格的なホラーを実現している傑作だと思います。

わたしはしばらく蝶を見たら、恐怖を抱きそうです。そのぐらい影響力の強い作品でした。

綿密に練られた展開、すぐにその場の情景を想像できる描写、ストーリーと、何をとってもレベルが高いホラー作品、是非とも多くの方に読んでいただきたいです。

★★★ Excellent!!!

地獄の蝶と血の華はかつて約束を結んだ。
その約束は「かんな」によって破られ、少女たちが次々と死ぬ奇病が起こる。

地獄蝶とは妖、鬼のようなもの……。
血華とは不死身の体、転生……。

思わず目を背けたくなるような、繰り返される惨劇。丁寧に描かれた情景描写、作者様の独特の世界観。

じわじわと迫りくる切なくも美しい恐怖の世界に、冒頭から引き込まれていく。

信仰と人間の尊厳についても書かれていて、生と死についても考えさせられます。

★★★ Excellent!!!

人が求めるのは秩序か無秩序か。
この世とあの世の境目が、救いと犠牲との間で揺れ動く。

ひとつの解放は新たな縛りと苦悩を呼び込み、信仰の深い側面を覗かせる。

蝶という形をしたそれを断ち切れるのか。
その人がその人であるための始まりの位置、そこへ立った若い2人の前途が、明るいものとなるように願わずにはいられない。


ただこのことはひとつの終わりであって、全ての終わりではないのだ。
切なく美しく静かな恐怖の世界はこれからも、この先もたぶん、きっと続いてゆく。

季節がめぐり、美しい蝶を見かけた時、あなたはきっとこの物語を思い出す。この蝶はいったい、どこから来たのかと。

★★★ Excellent!!!

早い段階でページ(画面)を繰る手が止まらなくなります。「早く次のカードを捲らせろ」と呟きながら、ページを繰ってしまいます。
作品紹介文にて「人間の尊厳を扱った作品」と有ります。私自身が確固たる尊厳イメージを持ってないので何とも言えませんが、作者の心意気は十分に感じます。
読了後に作品を振り返ると、設定の妙に唸ってしまいました。蝶と華を巡る設定は極めてシンプルです。でも、この設定が秀逸なので、枝葉を伸ばした物語は大木を成して真相を隠し、読んでる最中には結末を予想し難い作品に仕上がっているのです。
ちょっと改行回数が少ない感じがしますが、閲覧者の皆様は匙を投げずに是非、読み進めてみてください。物語としては、かなりハイレベルだと思いました。
また、スプラッター系ではありません。そう言うホラー映画が苦手な方でも、本作品は十分に楽しめると思います。

★★★ Excellent!!!

味わい深い恐怖。
静かにゆっくりと、不気味な恐怖を味わせてくれます。

また、独自の魅力的な世界観を構築するセンスには、目を見張るものがあります。一度この世界に浸ってをしまうと、もう抜け出すことは難しいのではないでしょうか。

この世界観。この空気。
──おすすめ、です。

★★★ Excellent!!!

ドロドロと湿った血生臭い忌まわしい呪いが、まるで下水溝の沈殿物のように始終横たわるホラーです。

まるで、角川ホラー文庫作品を読んでいるような筆力に感服。
繰り返される惨劇や絶望に気が滅入りますが、不思議と読み続ける手が止まりませんでした。

春になって蝶を見かけても、邪な存在に見え、明るい気持ちにはなれなさそうです。
それくらい、読者の心に訴えかける名作。

ホラー好き必読です。

★★★ Excellent!!!

とにかく、作品全体に漂う、得体の知れないものに対する恐怖感が、赤黒いイメージをともなって襲い掛かります。
蝶にまつわる伝奇、そして少女たちが次々と死んでいく謎の奇病。
非常に緻密に作られた世界観の中で、読み手もその恐怖に引きずり込まれていきます。
ホラーファンならずとも、ぜひ読んでもらいたい作品です。

★★★ Excellent!!!

蝶、病、少女、歴史、さまざまなモチーフが絡み合い、綿密なストーリーを織り成す。ものすごく完成されたホラー小説です。

脅かすような怖さというより、心理的な怖さ。スプラッタではなく、本当のホラー(恐怖)を描いている作品。

ホラー作品は、ストーリーもさることながら、それ以上に演出的な部分が重要だと思っていますが、この作品は文章も上手く、ホラー的な演出に成功していると思います。脱帽です。

★★★ Excellent!!!

序盤は淫靡で、しかしおどろおどろしい…2000年以降に作られたジャパニーズホラー映画を彷彿とさせますね。
蝶が引き起こした奇病。そして過去から続く因果。
読み手に恐怖心を与える技法が非常に巧みで、設定自体も資料などを駆使して、かなり練られていると感じました。
正直なところ、この著者様の腕はプロ…それもベテラン作家さんのレベルなのではないでしょうか?
書籍化していても全く不思議はありません。

★★ Very Good!!

地獄蝶との契約によって生まれた血華――
その呪いとも呼べる力を得た人々とその家族との心の葛藤を描いた作品。
濃密に練られた設定と世界観は圧巻の一言です。
文体はけっして軽いわけではありませんが、そのぶん雰囲気作りは完璧だと思いました。
人と人との出会い、生まれたしがらみ、その様がありありと描かれていて、読んでいるうちに寒気すら感じてしまいます。
重厚なホラーをお探しの方には、是非おススメの作品です。

★★★ Excellent!!!

こちらの作品を読ませていただいて、まず一番最初に思ったのが、作者様はプロの方なのでしょうか、ということでした。
巧みな文章力と情景描写で、読者を物語の中に引き込み、掴んで放しません。一度読み始めたら、ついついページをめくる手が止まらなくなってしまうような、そんな魅力を持った作品です。

美しくて妖しい伝奇ホラー。皆様に胸を張っておすすめします!

★★ Very Good!!

最初の奇行や奇病の部分に怯みつつ読み進めると、時代を越えて続く一族の秘密が明らかになっていくにつれて面白くなり、前のめり気味に読み切ってしまった。蝶に人格があるかのような錯覚に陥りそうになるが、しかしその利己的で容赦のない行動が、ただの虫でしかないのだという不気味さを突きつけてくる。
さらっと読める文体や話ではない。作品の世界にどっぷり浸かりたい人向け。

★★★ Excellent!!!

作品全体が緻密な文で構成されており非常に読んでいて引き込まれました。また、緻密な文であるのにわかりやすく物語がどのように進んでいき、物語がどのような結末を迎えるのか読者に想像をさせる点もすごく魅力的でした。
じっくりと読めば読むほどこの作品は面白いです。読んでいて飽きさせないように山を張っていたりと飽きさせない工夫もきちんとされておりすんなりと全部読むことができました。
独特な世界観、恐怖系が好きな人にお勧めです。

★★★ Excellent!!!

文字量に圧倒されつつも読み進めていくにつれ、どうしてこうなったのかがわかっていった。
歴史や宗教、それぞれの背景が事細かに描写されているからだ。
これを書くのにどれほどの資料を読み漁ったのかと考えると脱帽だ。

重厚感のある物語の世界に入り込み、気づけば睡眠時間を奪われていた。しかも頭が冴えてしまった。のめり込みすぎて……。

個人的にはバイオホラーということも好きなのですが、この作品については人と人とのかかわりあい、つまり、しがらみとでも言えばいいのでしょうか。
僕が一番ぐいぐいひきつけられたのはそこにあります。

多少読み終えるのに時間がかかりそうなので、読破していませんが、ここでレビューさせていただきました!


★★★ Excellent!!!

謎の奇病が発生し、その根源を突き止める話です。

様々な方がレビューしていらっしゃるので、思ったことを書かせて頂きます。

ジャンルを超えた作品ですね!


ホラーでありながら原因を突き止めるミステリー、そして前世から記憶というファンタジー、様々な内容に手を加えているので、一度で理解するのは難しいでしょう。

ですが、その分、魅力的な部分をたくさん含んでいます。

それはジャンルに関わらず、多くの読者の目を惹くことになるであろうと思いました。

さらっとは読めませんが、煮込んだスープのように味のある小説です!

次の話にも期待して、星3つ送らせて頂きます。

★★★ Excellent!!!

非常に綿密に調べられた歴史背景のもとに立てられた舞台設定だと思われます。

謎の奇病がはびこる事件。
前半は貴志祐介氏作『天使の囀り』を髣髴とさせるような、バイオホラー。かなりのインパクトがあります。(作者、夷也荊氏は『天使の囀り』を読んだことはないとおっしゃっておりますが)
中〜後半はその謎を紐解くパートです。
歴史、民俗、宗教。さまざまな要素が組み込まれ、全体的におどろおどろしい世界観に満たされています。

長編小説で、多少読むのに時間はかかりますが、よく練られた作品だと思います。

★★★ Excellent!!!

3回読み直したのはこの作品が初めてかもしれません。序盤からぐいぐい引き込まれ、最後のメッセージに辿りつくまでノンストップでした。
ホラー(伝奇)小説ですが、現代ファンタジーでも十分勝負できる内容です。

是非多くの人に読んでもらいたい! そして感情を共有したい!

★★★ Excellent!!!

現代に現れた奇病、地獄での邂逅、過去の苦難、そして再び結ばれる縁。なんと豊かで広がりを持った物語だと驚嘆し、一体どこへ連れて行かれるのかと心が躍りました。
物語に深みが増すのが第15話。それまでは「奇病VS人」ぐらいの認識でしたが、ここから時代背景が描かれ、そこに付随する人のしがらみ、業や情念が織り込まれ、一気に引き込まれました。
蝶は確かに忌まわしい存在かもしれない。けれど、同時に憎みきれない愛嬌のようなものもある(といえば、カンナに怒られるでしょうか)。この辺り、作者の懐の広さを感じさせます。そうそう、この「カンナ」のキャラクターが良い意味で歪んでいて、個人的に大変好みでした。
追記:作者様はジャンルについて検討されているようでしたが……なんでしょうね。広がりを感じさせる作品なので逆に限定するのが難しく、悩ましい。