グロテスクな官能に酔え。少女たちの胎内を蝕む、血の華を吸う黒い蝶の呪い

物語は、処女だけが罹る死病が蔓延するところから幕を開けます。
胎に病の種を宿した少女たちは精神が壊れ、やがてグロテスクな死を迎えます。
感染した妹を救うために動き始めた兄は、その原因が母方の血族の呪いにあることを突き止め——

獲物を狙うかのように、少女たちの周りに現れる黒い蝶。白い首筋の、赤い華のような痣。
印象的な色彩と共に綴られていく、忌まわしき血の呪いと隠れキリシタンの歴史。
官能的かつ重厚な文章で、一気に物語世界へと誘われます。

血の通った登場人物の中でも、ストーリーの鍵を握る少年『カンナ』の精神性が非常に魅力的でした。
存在自体が異端である彼の存在意義。運命に抗おうとする姿が、痛々しくも美しい。

死の影がまとわりつくような輪廻の中、ラストは生への希望が開けました。
まさに死の淵から蘇ったような、稀有な読書体験。素晴らしい読み応えの物語でした!

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