その世界の深さに浸かり込んでください

夷也さんの作品はいくつか拝読しているのですけれど、この作品もまた素晴らしい物語であったように感じています。
どうしてわたしはこんなに感動するのか、それはやっぱり世界観の深さだと思います。

世間に処女だけが感染する奇病が流行り、それには蝶が関係していることを良広は知る。
良広の妹の咲もまたその奇病に感染してしまうのですが、物語が進むにつれてその蝶にまつわる呪詛の歴史が明らかとなっていく……

わたしはこの作品を惹きつけられたように拝読しました。
足の先から頭のてっぺんまでどっぷりと浸かりこんで。
社会を巻き込む奇病、そして人の澱みをこんなにも浮き彫りにした作品にはなかなかお目にかかれないのではないかと思います。
人間の汚さやこびりついたような感情をまざまざと描き出し、読者を深い世界へと連れていくのは作者様ならではだと思います。

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