夢見里 龍

太平洋戦争で撃沈したはずの海軍士官が意識を取りもどすとそこは靖国……ではなく現代日本！ しかも現役アイドルである大和ナナのからだのなかだった！？ 奇想天外、でもいつだって真剣な命…続きを読む

夏休みの思い出づくりのために廃校を探検していた少年ふたり、無人の教室のなかに拡がっていたのは奇妙な水族館だった。水族館の館長に案内されて様々な海の生き物たちを観覧し、楽しい時間を過…続きを読む

空気感のある小説というものはとても希少です。 まず、描写が巧くなければならない。ですが、語彙があって、読みやすく巧妙というだけでは空気感というものは産まれてきません。 存在感、実在…続きを読む

「あなたの命を１分間だけ下さい」 読み始めたときはいったい、どういうことなのだろうとおもったこの言葉が、読み終えるときにはずうんと暖かな重さをともなって、胸に響いて参りました。 …続きを読む

都の市場で安い豚肉を扱う年若い商人、彼のもとに頻繁に訪れる穏やかな初老の男がいた。 商人は彼のことを「仙人」と呼んでいた。 彼はなぜ、こんなに嬉しそうに安物の豚を購入してくれるのか…続きを読む

箱に妄執する手記。 密封された衣装ケースのなかで自殺した、女性の遺体。 手記にはこうある。 ＞もし不透明な箱に何かを入れて不透明な蓋をしてしまえば中は暗闇である。入れた物が何か…続きを読む

呑まれました。 これはすごい。五感すべてをあますことなく刺激する怒涛のような表現。それでいて静かでなまめかしく、せつない。 恐怖を掻きたてられるような。欲をあおられるような。 参り…続きを読む

干支に何故「猫」がないのかと想い続けて早三十年が経ちます。 「寅」に吸収されがちな「猫」ですが、むしろ「寅」のほうが「猫」に吸収されるべきだろう！ とおもう読者様はかならず読んでく…続きを読む

港町の外れにある廃墟の館にしのびこんだ少年は青い眼をした老紳士と逢う。老紳士はその廃墟を「今は別のところに暮らしているが、ここが私の家だ」といい、お茶会を催してくれる。 老紳士はそ…続きを読む

地球儀が地球の海水を飲みほし、惑星図鑑はアンドロメダ銀河を指先でまわしながら引き延ばしてマヨネーズをかけ、ライターが煙草を吸う奇妙な空間。混沌の坩堝。でも読み進めていく読者の視線は…続きを読む

ある日突如として異星人がやってきたら―― 侵略される？　宇宙戦争がはじまる？ いえいえ、あれは映画のなかでの話です。そもそもはるか遠く銀河のかなたから地球まで飛来できる異星人が、…続きを読む

殺し屋である滝戸左膳が盗賊だと教えられ、斬ったのは伊賀者の忍者だった。はからずもおこなってしまった忍者殺しは贋金製造で打ち首にされた父親の真実に繋がっていき―― ハードボイルド時…続きを読む

死者に殺された「母親」……その「娘」である空のまわりで連続する奇妙な殺人事件。果たしてその真相は――張りめぐらされた伏線。章を跨ぐたびに切り替わる視点。 「え」「いったいなにが」「…続きを読む

婚約者である氷の令嬢イアリスを溺愛するガトー殿下には悩みがあった。 それはイアリスが「ガトーを愛しているかどうか」である。 なぜならば、イリアスは氷の令嬢。甘い言葉をかけても微笑ん…続きを読む

寒い季節になりました。 熱々のおでん、あったかいココア、湯たんぽもよいですが、心が暖かくなるような物語はいかがでしょうか。 母親と息子。母親になった娘。 そんな母の日の１コマで…続きを読む

主観による所感を語ること、他者の心を諒察すること、不文律であるかのように共感性を語ることが禁じられたら。 これは理想郷なのか、反理想郷なのか、読者さまによって受け取りかたが変わると…続きを読む

十日間経つとそれまで経験したことをわすれてしまうとしたら、愛する人との想い出までなくなってしまうとしたら、あなたはどうしますか？ これはそんな難病を患った「彼」を愛する女子高生 美…続きを読む

キリコの男友達であるアサギは変わっている。綺麗な風貌で、教室でも教師にあてられない窓際の席を好み、親しいはずなのに、時々キリコには理解のできないことをぽつりとこぼす。 そのときもそ…続きを読む

静けさの描写が巧みな小説はきわめて良質だと私は考えています。 こちらの小説がまさにそうです。 流麗なる文章で紡がれる美しい森の描写。言葉と言葉のあいだに漂う静けさ。星の瞬きまで聴こ…続きを読む

身におぼえのない罪で死刑になった「ぼく」 二十八世紀の死刑は四次元の建物のなかで自然死を待ち続けることで、暮らしは案外と快適だった。だが、ただひとつ、大きな問題がある。 「ぼく」は…続きを読む

その竜（ワイバーン）が運ぶのは「本」！ でもそれだけではありません。 「夢」「希望」「勇気」「友情」「努力」……かたちのないものを乗せて、竜は森を越え、山を越え、海を越えて旅をし…続きを読む

「よそはよそ、うちはうち」 昔からそんなふうにいわれて育った経験はありませんか？ それはまさしくそのとおりで、「他人」とくらべて劣等感を抱いたり優越感に溺れたりということを繰りか…続きを読む

日々の細やかな食卓を暖かくいろどる《はるのごはん》の御惣菜はいかがですか？ たかが食。されど食。 食事の風景にはその御方の人となり、経験、その時の細やかな心境が現れるものです。ひ…続きを読む

読み終えた後、近況ノートを拝読させていただき…… すべての創作者にたいするエールがこめられた素敵な物語にあらためて胸が熱くなりました。 好きなことを続けるのは楽しいけれど、楽しい…続きを読む

古今東西 様々な魅力にあふれたヒロインがいます。 ですが、１万字に満たない短編において、これだけ素敵なヒロインと出逢えるとは想像だにしていませんでした。 髪で眼元を隠した小さな魔女…続きを読む

チリトリのない部屋というのはいったいどういうものだろうか。 タイトルから誰もが疑問におもうはず。読み進めていくうちに理解する。 ああ、私達が現実に生きる社会こそが「チリトリのない…続きを読む

干支に不満をもったことはありませんか。私はあります。猫派として。鶏がいて、ねずみがいるのに、猫がいないのが常々悲しいのです。 ほかにもキツネ派、タヌキ派、カンガルー派、カメ派の御方…続きを読む

宮廷に迎えられた天才料理人と、神の舌をたずさえた天才毒味人。互いを認めあい、だからこそ時に衝突する熱い関係を築きあげていたふたりの運命はある大規模な悲劇をもって一転する。 料理を…続きを読む

最後に小説を読んで胸が熱くなったのはいつだったか。 挫折を繰りかえし、傷だらけになり、葛藤し、時に大事なものを奪われながら、懸命に希望にむかって腕を伸ばすヒーローの姿に憧れたのは…続きを読む

共感が……溢れてとまりません…… わがままで傍若無人で、なにもかも思いどおりにならないと気が済まない最強に可愛い《推し》！！　それは訓練されたオタクですら、慌てふためくほど！ 私…続きを読む

龍久国は九に分かたれた龍の亡骸から建国された。死んだ龍の腹からは九柱の大魔が産まれ、其々を従える九人の皇子は妖術をもちいて国を護ったとされる。 時は流れ、九の大魔のひとつが封印され…続きを読む

小学五年生の頃、母親の降りまわした中華包丁があたって、できてしまった頭蓋骨の穴。漫画雑誌を詰めこんで塞いだことで一命を取りとめたが、それからというもの、幽霊が視えるようになってしま…続きを読む

特殊な刀を操る半妖の少女と現代からの転生者である男の娘の巫女が織りなす、明治妖奇譚！ 登場人物ふたりがとにかく、魅力に溢れています。男の娘のつぐみの可愛さと、たまにみせる男らしい…続きを読む

創作とはなにか。 あらためて考えさせられました。 私にとって小説を紡ぐことは呼吸をすることで、愛で、呪縛です。 楽しいことばかりではないけれど、書かずにはいられない。それが書けなく…続きを読む

毛深族のうつくしき娘は、毛無族のうつくしい娘と逢った。自身とはまるで異なる彼女のあまりの美しさに、毛深族の娘はみずからのうつくしさを疑うようになる…… 言葉にならないうつくしさを…続きを読む

》あの子ほど美しい人を、私は知らない。 からはじまって、おなじ言葉で終わる。それなのに、こんなにも意味が違う。 二千五百文字に満たない小説、それなのにこの重さはいったい。ああ、…続きを読む

その娘の背には竜の鱗がある。 それは神に背いた反逆者にして罪人の証だった。 国を護る竜の生贄に選ばれたにもかかわらず、愛する人と逃げ、罰として永遠に終わることのない呪いを受けた香…続きを読む

クトゥルフ神話を題材にした小説は数えきれないほどにあれども、これほどまでに重厚な小説を私は呼んだことがありません。 これは２２９８年、地球が"滅び"に見舞われた後の話ということもあ…続きを読む

まさに《カクヨム作家たちの祭典》と称するにふさわしき素晴らしいイベントです。 この度のテーマは《再会》 匿名であるがゆえ、参加者は公平にただ小説だけで競い、それぞれの想像力と創…続きを読む

雪山に暮らすセマザサ族は生を享けたそのときに布を与えられ、みずからの人生を克明に刺繍していく。 ……刻むように。……祈るように。 刺繍は多岐に渡る――祝い事の記録から悪い精霊を遠ざ…続きを読む

これは人に頼られ、人に疎まれ、人に愛されたひとりの魔女の物語です。 度重なる戦争で心に傷を負ったかつての英雄。戦地でのことを思いだしては悪夢に侵され、眠れぬ晩を過ごしていた彼は、…続きを読む

《心》 其れは視ることも聴くことも触れることもできず、然れども、人を人たらしめるものである。《心》があるから人は誰かを愛し、細やかな幸福に喜び、楽しみを捜すことができる。だが《心》…続きを読む

美容室にいく度に職業を偽り、嘘を重ね続ける「僕」。ある時は消防士と名乗り、ある時は建築士だと騙る。そのうちに段々と《自分》というものが瓦解していき…… 《自己》とは果たして何処に…続きを読む

ジェンダー論が社会現象を起こし、男女だけではないセクシャリティマイノリティが話題になったのはいつ頃からだったでしょうか。 レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダー等、多…続きを読む

大学生の《私》のもとに配達された《私》からの小包。段ボール箱のなかには手紙がひとつ、貼りつけられていた。彼女を励ます、他愛のない手紙だ。けれどもそこには私自身でなければ知らないよう…続きを読む

「僕さ、余命半年だから、……だから、良かったら一日だけ、僕の彼女になってくれない？」 医者から余命宣告をされた《僕》は、ずっと想い続けてきた相手に「最低」で「最悪」の告白をした。《…続きを読む