概要
ピアノという名の楽器が生まれる、そのずっと昔からこの場所にあった音だ
地球儀が地球を飲み、惑星図鑑がアンドロメダを調理する、不可思議な可能性の世界に迷い込んだ主人公。案内役の男に連れられて世界を歩く主人公は「お前になる前のお前はなんだった?」と聞かれて答えに窮する。僕が僕になる前──その答えを探す主人公の脳裏をかすめていく幼い頃の記憶たち。主人公はすべてが不可思議なその世界で、たった一つの揺るがない自分に出会う。
おすすめレビュー
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- ★★★ Excellent!!!此処は"何か"が"何か"になる前の場所
地球儀が地球の海水を飲みほし、惑星図鑑はアンドロメダ銀河を指先でまわしながら引き延ばしてマヨネーズをかけ、ライターが煙草を吸う奇妙な空間。混沌の坩堝。でも読み進めていく読者の視線は妙に落ちつき、心地よい。それはこの物語が、その奇妙な空間にちりばめられた心や想いを拾いあげるような優しい筆致で紡がれているからにほかにならない。
推察するに、ここは"何か"が"何か"になる前の世界らしい。
ゆげのような輪郭の曖昧な男は「僕」に尋ねる。
「お前さんになる前のお前さんは、どんなだった?」
……
この奇妙に静かで美しい小説の世界観に身を浸して、今晩はじっくりと思索の海を漂ってみませんか?
例え…続きを読む