此処は"何か"が"何か"になる前の場所

地球儀が地球の海水を飲みほし、惑星図鑑はアンドロメダ銀河を指先でまわしながら引き延ばしてマヨネーズをかけ、ライターが煙草を吸う奇妙な空間。混沌の坩堝。でも読み進めていく読者の視線は妙に落ちつき、心地よい。それはこの物語が、その奇妙な空間にちりばめられた心や想いを拾いあげるような優しい筆致で紡がれているからにほかにならない。
推察するに、ここは"何か"が"何か"になる前の世界らしい。

ゆげのような輪郭の曖昧な男は「僕」に尋ねる。

「お前さんになる前のお前さんは、どんなだった?」

……

この奇妙に静かで美しい小説の世界観に身を浸して、今晩はじっくりと思索の海を漂ってみませんか?


例えば、あなたになる前のあなたは、どうだったのか。
なんて。