なんて素敵な物語なんでしょうか。鳥辺さんにしか創り出せない世界、生き物の姿、人間らしさ。しみじみと感じ入りました。
全高40000メートル。エベレストが8848メートルだそうですからその途方もない大きさがよく分かります。生態も何も分からない、人知の及ばないような存在が巨人。しかしそんな巨人にも死は訪れ、そうなれば人の手が届きます。肉は食料、血は燃料、果てには遺骸そのものを街へ、捨てるところなしと人の強かさでもって活用し尽くします。遺骸掘り師と巨人。今際の際の短い交流。そして始まる新たな人生。短編ながら壮大な物語を読んでみてはいかがでしょうか。
最初に読んだ時は巨人が可哀想だと思った。読み直した時は巨人は優しいと思った。巨人と遺骸掘り師の静かな物語です。