文字数以上に余地が語る。妃のそもそもの目的とは何であったのか。「貴方だった」とは何を指すのか。新帝の死因が前二代と同じなのは何故か。転じて老いたる初めの夫の死の直因とは何か。これらの解釈によって物語の感触は変容する。筆者自身には大筋として答えがあるのやもしれないが意図的に抜かれた説明によって逆に幅が広がっている。不躾な物言いで申し訳ないが筆者はかなり頭の良い方なんだと思う。この文字数でそれはミステリとして成立しており、それでいてネット上に転がる所謂「意味がわかると○○な話」のような安っぽいものとは一線を画す。何かと答えを求めがちなのが人であるけれどそのような姿勢は時に頭を打つぞと寓意も感じ取れて恐れ入りました。
私なりの解釈だと妃には宮入りする折に堪え難い屈辱があり、帝達の死が全て彼女の計画だったのではないかと。最初の夫とは三人の誰でもなく心より愛した描かれなかった誰かなのだと思いました。