「死に物狂いで死んでいる。だから生きられる。」

ひとこと紹介の言葉に心惹かれた読者さまはぜったいに読みましょう。読めば、刺さります。
小説から氾濫する語彙力の海に溺れて、こちらの語彙力は喪われましたが、それではレビューにならないので。

「エンターキーの連続だった。」
廊下の壁に貼りだされた前衛的な美術部のデジタルアートに視線を奪われた想は、部員のはからいで、その絵を創作した璃愛に直接、感想を伝えることになる。他人が聴けば、取りとめのない感想。だが、最も絵の核心に触れた感覚的な感想――璃愛は眼を輝かせて、叫んだ。
――――「『わたし』だ!!」


これは『わたし』と逢ったふたりの青春物語。

璃愛の感性は独創的で。でも他人の理解を拒絶するような独創性ではなく、もっとこう、通じあえる一部のひとのこころにそっと寄りそうような。優しさのある独創性なのです。そんな璃愛に惹かれていく想。
ですがこれは恋愛でもなく、友達でもなく。そういうこの社会における「所属する関係」ではなく、もっとかたちのない……かたちがないから意味のある『わたし』という関係。
脆くて強くて。
ああ、もうとにかく言葉にならないので、ぜひともご一読ください。読んだらわかります、刺さります。