帝は最期まで賢帝だった。彼に寄り添ったひとりの《料理人》のおかげで。

敏腕の女料理人宵鈴は、退位された皇帝の専属に抜擢される。だがそこにいたのは毒におかされ、幼い子どものような知能しかなくなってしまった悲しき帝……彼女は誠心誠意彼に務め、よき食を作り続けるが……

涙腺が熱くなりました。食とは幸福をつくり、命を繋ぐものです。それを誰よりも理解し、誇りとしているのが料理人。それなのに。
皇帝の、いとけなくもやさしい言葉がいつまでも胸に残っています。

おいしい粥を、誰が独り占めするでもなく、みなで平等においしいねといいあえる。それだけがきっと彼の望みであり、そんな世界ではなかったことが彼の最たる不幸なのでしょう。でも帝は、最後まで幸福だったはず。宵鈴のおかげで。
彼は知能を壊されましたが、こころまでは毒にも壊せなかった。
彼は賢帝のままで、逝ったのです。

この素晴らしい小説を、ひとりでも多くの読者さまに読んでいただきたいとおもい、つたないながらも他薦を書かせていただきました。

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