概要
運命か、意志か。
山暮らしの源は、偶然行き会った女を娶る。妻は時折「花を摘む」といって出て行くが、花を持ち帰りはしない。気になるが詮索すまいとする源は、ある晩、恐ろしい夢を見る。
※「円城塔賞」最終選考対象に選出いただきました。ありがとうございます!
※ノベルアップ+にも掲載しています。
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おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!女はなぜ《花》を摘むのか
呑まれました。
これはすごい。五感すべてをあますことなく刺激する怒涛のような表現。それでいて静かでなまめかしく、せつない。
恐怖を掻きたてられるような。欲をあおられるような。
参りましたといわざるをえません。
これではレビューにならないので、まずはあらすじを。
……
幼い頃に父親が死に、母親に捨てられ、それからは山から降りることなく暮らし続ける男が訳ありの女に逢う。やがて女と身も心も重ねあい、ふたりは夫婦になった。
幸せな日々。やがて妻は子を身籠った。
だがひとつだけ、妻には秘め事があった。
彼女は時おり「花を摘む」といって姿をくらます。
はじめは疑わなかった。だがなかなか帰って来ない…続きを読む - ★★★ Excellent!!!その意味がわかった瞬間、鳥肌が立ちます。
母に捨てられ、山で育った男。
身売りの直前に逃げ出し、男の嫁となった女。
二人は愛を育み、やがて女は子を宿しますが、彼女には奇妙な習慣がありました。それは、「花を摘みに行く」こと。彼女は度々そう言って出かけては、時に不審な様子で帰ってくるのです。
男は妻の不貞を疑いますが、しかしその恐るべき真相は……
という、短編和風ホラー。
時代や作品全体の雰囲気にあった、しっとりとした文体に惹かれます。
性的な描写が含まれますが、不気味かつ荒々しいのに艶っぽく、どうしても魅せられてしまう不思議。「何の飾りもまとわぬ、獰猛な嬌声」という表現が刺さりました。
また、ストーリーの展開も見事です。
それまで…続きを読む