その意味がわかった瞬間、鳥肌が立ちます。

母に捨てられ、山で育った男。
身売りの直前に逃げ出し、男の嫁となった女。
二人は愛を育み、やがて女は子を宿しますが、彼女には奇妙な習慣がありました。それは、「花を摘みに行く」こと。彼女は度々そう言って出かけては、時に不審な様子で帰ってくるのです。
男は妻の不貞を疑いますが、しかしその恐るべき真相は……

という、短編和風ホラー。
時代や作品全体の雰囲気にあった、しっとりとした文体に惹かれます。
性的な描写が含まれますが、不気味かつ荒々しいのに艶っぽく、どうしても魅せられてしまう不思議。「何の飾りもまとわぬ、獰猛な嬌声」という表現が刺さりました。

また、ストーリーの展開も見事です。
それまでの何気ない伏線を回収していくときの気持ちよさ。その意味がわかった瞬間、鳥肌が立ちました。真相がわかってから、改めて恐怖がじわじわと募ります。
しかし、後味はどこか切なく、二人の運命に想いを馳せずにはいられませんでした。
最後の海についての部分、源の呟きが切なすぎて最高でした。

実に見事な作品です。楽しませていただきました。