オススメレビューを書くときに、読んですぐに熱狂のまま書く時と、読了後にしばしば思い出し後日「やっぱレビュー書こう」と思う時があり、本作は後者でした。
また、私は「小説を読むからには、その作品から何かしら驚かされたい」という欲求が強いタイプなのですが、本作は読み始めと読み終わりで、味がまったく味が変わります。
ブロマンス作品を好む読者が食べやすい前半パートと、作者の個性が発揮される後半パート。
前半と後半どちらも美味しいのですが、私はやはり物語のテイストが転調した後半からの味は作者独自のスパイスが効いていて、とても好きです。
小説と料理は通じるところが多いと思います。
本作はとても美味しかったです。
ごちそうさまでした。
客の望むものを届ける──それは商売において最も重要な技術だろう。
けれど、それが本物の天才を幸せにする方法かと言われると、僕は少し疑問を持ってしまう。
器用な天才は世の中と折り合いをつけながら、才能を還元している。けれど、どこかに孤独を抱えているようにも思うのだ。
本作の作者が天才か商売人かは凡人の僕には判別しかねる。
しかし、この作品を世の中に届けてくれた作者様に最大限の賛辞を贈りたい。
なぜなら、純粋に、面白かったからです。
男同士の関係で一番尊いこと。それは、才能がありつつもその才能故に周りから浮いて孤独な二人が、ある時出会って親友になることだと思うのです。
天才料理人ラウルは、本物の料理を作る腕を持ちながら、生活のために「客が求める偽物」を作っていた。そのおかげで彼の店は順風満帆だった。しかし、金も名声も得ているはずの彼は、心のどこかで渇きを感じている。
ある日、ラウルの店に「神の舌」を持つもう一人の天才、レナートが現れる。
彼は、王の毒見役としてラウルの料理を食べ、ラウルの瑕疵を指摘した。
そしてそれを材料に、ラウルを宮廷に引き入れようと、脅迫をする。
こうして、宮廷料理人となったラウルと毒見役レナートの生活が始まった。というのがこの物語のあらすじ。
才能を持つ人間は賞賛より、自分の作品に対する瑕疵を認めてくれる方が嬉しかったりする。それは、天才は孤独を宿命とする生き物で、凡人は自分のことを理解してくれないことを、目の前で何度も何度も見せつけられているからだ。
この世には、天才より凡人の数が圧倒的に大きい。
そして、才能を才能と正面から見ることが出来る人間は果てしなく少ない。
結末は、是非読んでください。
レナート、王様のためとか言って、実はラウルのご飯をずっと食べていたかったから目をつけたんじゃないかなぁ──と妄想したくなるくらい、二人が互いを認め、必要としている様子が丁寧に描かれています。
めちゃくちゃ面白いです。
天才料理人ラウル、天才毒見人レナート。二人の天才が出会うところから、物語は始まります。
ラウルが国王に提供した料理の食材偽装を見抜いたレナートは、その弱みを握ってラウルを市井の料理人から、城の料理長へと引き上げます。その場面は、まさに天才同士の掛け合いといった印象であり、とても見応えがありました。
そして、物語は急展開を迎えます。そこまでに二人が積み上げた関係は、詳細には語られないのですが、精神的な深いつながりを感じさせるものであり、作品の結末がそれを見事に物語っていると感じました。
この作品は短編ですが、シリーズ作品がいくつも公開されており、二人の掛け合いをまた追ってみたい…そう思わせる作品でした。
5000字程度の短編なのに引き込まれる人間関係が描かれている、希有な短編だと思います。
料理に関しては、仔グリフォンの肉といわれても想像もつかない私なので、こういった架空の料理がメインであったなら、そこまでの印象は残らなかったでしょう。
しかしメインは料理人と、王の毒味役の関わり方にあると思っています。立場も考え方も違う二人の出会い方は、私が抱いた感想では最悪よりちょっとマシくらいなものでした。縄に填めるに等しいやり方で、主人公を宮廷料理人にする訳ですから。
しかし3話目で再会する二人の、それ程、長いともいえない会話の中には、確かに友情を感じたのです。男同士は簡単に友達にはなれないし、一目惚れなど存在しないと思っている私だから思っただけかも知れませんが、この物語に書かれていない部分で、二人が過ごしたであろう時間を想像できる遣り取りが、3話に書かれていました。
そしてクライマックスの4話。
果たして彼らは笑顔になれたのか? 物語が終わり、書かれていない最後の瞬間にあった表情は何なのか? それを考えずにはいられません。
それだけ書かれていない部分を想像してしまう、10万字でも少ないかも知れない、書かれなかった物語の事を考えてしまう程、この短編の完成度は高いです。
ただただ痛快です!