何を見て、何を感じて、何を想うか。
まずじっくりとありのままに物語を追ってください。
遠くに光る星々の明かりと妙に静かな列車。ホームからそこに乗り込み、列車はある場所に向かいます。
音もなく、単調な響きがどこか冷たい中で、その温もりはまだその手の中。
そして、列車は静かに止まり、その温もりは永遠に消えていく。
それから、もう一度物語に入りましょう。
あなたの中に小さな命があることを想像してください。
それは、どのような命ですか?
あなたは、その命を愛おしく感じますか?
そして、想像してください。
その命を、あなたは一人で守らなければなりません。
あなたという命とあなたに授かった命の二つを。
そこから先の事は、私が語るべきではないでしょう。だけど、この物語は読むべきです。
ただそれだけを語ります。
名作「銀河鉄道の夜」を想起する作品かと思いきや、現代における妊娠と堕胎に無責任・無知識な若者についての風刺を描いた文学作品でした。
非常に好きな作風です。こういった風刺は文学に慣れ親しんでいない読者でも読み取れると思いますので、道徳の教科書に載せて若い人達に読ませたい作品だと思いました。
本作はある一人の女性が見た夢の話であり、しかし決して夢ではない話。誰かにとって身近な話です。
誰にとっても、この話を軽んじる事は出来ないでしょう。
少なくとも彼女(主人公)はジョバンニの様に「本当の幸福」を知ることはありません。
彼女がまた銀河鉄道に乗るその日までは。