概要
ひとりの孤独な少年がさまざまな人間と出会い、過酷な青春を乗り越えて大人になるまでを、19世紀末のフランス・パリを中心に描きます。
序盤はゆっくりです。中盤から少しずつ加速します。
R15ですが直接的な性描写はありません。
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!人生の明暗について、繊細に深く描かれている素晴らしい物語
一言では言い表せられない、深い余韻を与えてくれる作品に出逢えたことがとても嬉しく、真摯に物語を綴ってくださった作者さまに心から感謝を伝えたいです。
人間の弱さや強さが、本作品では誠実な文章で綴られています。人間の心理が豊かに奥深く描かれているため、登場人物たちの思いや考えがまっすぐに胸の中心へと向かい、時には刺されるような思いにもなりながら読ませていただきました。痛切な苦しみや思いは、現実的な実感を伴って読者に訴えてきます。そんな素晴らしい作品や文章を書ける思慮深さに、大きな感動を覚えました。
ジュールとヤンの台詞には、考えさせられる言葉が随所に光っており、立ち止まりながら読ませて…続きを読む - ★★★ Excellent!!!純文学とは何か
「カクヨムにおける不朽の名作」と一部で称されているこの作品。読み始めてすぐに、私はかつて読んだ数々の純文学の名作を読んでいるような気分になった。
言い換えれば、読者として手加減をするのを忘れてしまった。「素人が書いているとは思えない程素晴らしい・尊敬・羨望」ではなく、プロの作品を読むように読み手として真剣に対峙し、物語に入っていった。
勿論、物語の構成も見事で、心理・心情、情景描写もまるで自分がそこにいるかのように感じられる素晴らしい筆致である。
その上で、自分の魂を揺さぶられる。作者の人間に対する洞察力と深い愛情で描かれた登場人物の言動に一喜一憂してしまう。主人公の過酷な運命に何度泣…続きを読む - ★★★ Excellent!!!人が人を愛するということ
この小説を読んで思ったのは、国がどこでも、時代がどうでも、愛する相手が同性でも異性でも、人間の営みは普遍的だ、ということ。
小説の中でジュールは本当にひどい目にあうけれど、でもそれは多分、ジュールだけに起こっていることではない。
フランスでなくても、19世紀でなくても、ジュールと同じ思いをして生きている人はたくさんいると思う。
泣きながら苦しみながら傷つきながら、それでもジュールが生きていけたのは、ヤンがいたから。一度でも誰かを心の底から信頼し、信頼され、愛し、愛された、という経験があるからなのではないか。それこそが、自覚はなくとも「自分はそれでも生きていく価値のある人間なんだ」…続きを読む - ★★★ Excellent!!!限りなく純粋で、限りなく悲しくて、限りなく美しい愛の物語です。
背景は19世紀のフランス。
山羊飼いの貧しい少年ジュールとブルジョワの子息ヤン。
惹かれあう二人。
引き裂かれる二人。
そこには数知れない壁があった。
過去のしがらみに苦しみながら抗えない運命の波にどこまでも翻弄され続けるジュール。
ジュールとヤンの二人に未来はあるのか?
登場人物の一人一人が人間味に溢れ、人間の根底の善悪、明暗が鮮やかに描かれていることも見逃せません。
この物語は『カクヨム』史上に残る名作です。
二人の運命の過酷さに胸が締め付けられます。
二人の純粋さに涙が溢れます。
涙なしでは読めません。
私は10回泣きました。
是非、ご覧ください。
きっと、あなたの心を揺さぶります…続きを読む - ★★★ Excellent!!!美しき少年の人生を真心を込めて綴った愛の物語
主人公ジュールの人生において得られたものは何か。読み終えてそれをふと考えました。
苦難多き人生を歩んできた彼の本当の望みは幸せにいきることだったのだろうと、それは疑いようもありませんが彼にはそれを得ることがとても難しかった。人々の思わぬ悪意に晒されて、喜びを見つけるたびに不幸に突き落とされて光を見失うんです。
汚泥のような日々の中でもがき、やっと見つけた幸せさえも手の中から滑り落ちてしまう。ああ、ジュール!
もう泣かないでジュールとは言えませんでした。辛いものね、平気なふりして冷めたふりして笑うのがジュールもこちらもまた辛いんです。
そんな中で彼にとっての太陽、ヤンという存在は特別で埋もれて…続きを読む - ★★★ Excellent!!!この物語には人の強さ、弱さ、美しさと醜さがある
この物語の主人公は二人。
一人は魔性ともいえる美貌を持つ少年『ジュール』。
もう一人は不遇な出自ながら、太陽のような明るさを持った貴族の子『ヤン』。
ある日、森の中で行き倒れになっていたジュールを、ヤンが見つけ介抱するところから物語は始まります。
男性同士でありながら互いに惹かれあう二人。
それは友情なのか、恋なのか、それ以上のものなのか?
同性愛をモチーフにした作品だけあって、この辺りの感情表現、愛情の表現がとても美しく描かれています。
そう。この物語で特筆すべきはやはり作者の表現力です。
フランスの風景の描写、少年・青年たちの心の描写、二人をとりまくキャラクター達の描写。
それらがな…続きを読む - ★★★ Excellent!!!読み始めたら止まらなくなり、涙が溢れてきました
舞台は十九世紀、今よりも更に窮屈な価値観に縛られた世界。
貧しい羊飼いの少年ジュールと、裕福な家庭の青年ヤンは運命的な出会いを果たします。
それは癒しと希望をもたらす奇跡のような出会い。
純粋に愛を育む彼らが望むのはほんの少しの静かな幸せでした。
けれど、周囲の悪意によって引き裂かれ、めちゃくちゃに振り回されて深く深く傷ついていきます。
これでもか、これでもかと襲い掛かる悲劇。必死で顔を上げても踏みつけられて、救いを求めて差し伸ばした手は更なる底なし沼へと引きずり込まれる。
理不尽な世間、社会の暗部を押し付けられた姿。
見守る私たちはこの二人に救いは無いとあきらめそうになる…続きを読む