★★★★★Brilliant!!!!!
星が足りなかったので足しました。
今年読んだ短編の中でも、一番出逢えて良かった作品です。
物語の始まりは、ある夫婦の日常を切り取ったような食卓風景。具体的な背景は描写されず、彼らが口にする「スープ」の名称さえ避けられているのですが、現代社会に生きる人には察しがつくかと思います。
実際、帝政ロシアやソ連の時代から厳しい情報統制や弾圧が行われ、その抑圧下でアネクドートなどが生み出されてきたわけですが、この作品もそうした社会構造を示唆するかのように、様々な暗喩が巧みに用いられています。
鉛のカーテン、赤いスープ……一つの言葉を、シーンを、思い浮かべる度に、その向こうに「言葉にできないもの」が見えてくるような気がします。
それだけに、読み返すたびに深みが増し、想像が広がります。
本当のところは、その地で暮らしてきた人にしかわからないでしょう。善悪の基準すら時と場合によって変化します。
この作品は何かを断じることも押し付けることもしません。読んだ人が想像し、その先を自分で考える、そんな作品だと思います。
たしかな文章力で短くまとめられた、読みやすい物語ですので、ぜひ一度読んでみてください。
ウクライナ侵攻を題材にしたお話です。
この作品の主人公は、ロシア側にいる初老の夫婦。彼らの娘は、ロシアから見て西側の国に住んでおり、ロシアで流れているニュースが間違っていることを連絡してきます。
しかし、夫婦はそれを頑として受け入れません。読者はきっと、彼らもロシア側のプロパガンダのせいで、本当のことを知らずにいるのだろうと思うことでしょう。ですが、夫婦がそのような態度をとるには理由があるのです。
ロシアとウクライナの間にどんな摩擦があるのか。詳しくは分かりませんが、何かしらの理由はあるからこそ戦っているのでしょう。しかし、戦いは何をもたらすのでしょうか。
兵を集め、兵器を使って侵略し、得するのは誰なのだろうかと想像します。少なくとも市民ではないでしょう。
街を破壊し、緑はなくなり、人は死に、そこは荒野と化します。戦いなどしなければ豊かな麦が育ったでしょうし、子どもたちがのびのびと過ごし、人々は良くも悪くも、大きな抗えない力に左右されることのない「人生」を送れていたはずです。
この作品を読むと色んな感情が渦巻きますが、難しい中でも小さな希望も見いだせると思います。気になった方は読んでみてはいかがでしょうか。
これは多くの人に読んで欲しい。
初めて読んだ時に、泣きながらそう思いました。
ですが、レビューがなかなか書けなかった。思い出す度に胸が詰まり、涙が溢れ、心がざわついてしょうがないのです。
実を言うと、今もそうです。人前で読むのは危険な作品かもしれません。
内容はお読みいただくとして、感じたことをひとつだけ。
この作品には、「色」が象徴的に使われています。
お皿の白、野菜スープの赤、瞳の青の三色。そしてカーテンの鉛色。それらが余計に、部屋の情景をリアルな映像としてありありと浮かび上がらせるのです。
そして最後、その映像はテレビの画面に切り替わります。
その対比によって、私達が普段テレビで見るだけの映像は実際に起きていることなのだと、改めて現実を突きつけられました。
作者さまの構成力、表現力に感服するばかりです。
もし、この作品に続編があるのならば。明るい青空の下で黄金色の向日葵が揺れ、大勢の人が手を取り合い笑いあっている…そんなシーンで終わって欲しい。
そして、できれば、現実の世界でも。
この物語、決して他人事ではありません。
自由とは与えられるものではない。
日々に獲得し、互いに分け与えるもの。
伏せられた情報。
流布される情報。
混乱のなかで、無惨で不条理な事態が留まることなく進行していく。
…今、現実に起こっていることだ。
2022年2月24日、突如としてそれは始まり、今なお進行している。
――この国にも歴史があるように、我が家にもささやかな歴史はある。
その歴史が決して自分の思い描いていたような足跡を残さないとしても――
呆然と手をこまねいていたら、狂気なる未来へと流されかねない。いや、流されてしまうだろう。
ならば。
我が家の歴史は、自分が知っている。
我が家の未来を守るため、何をすべきかを自分は知っている。
たとえ小さなさざ波であろうと。次の瞬間には呑み込まれてしまう逆流だろうと。
一人一人の歴史が、時代という大きなうねりに収斂していくのだ。
今、そこで起こっている出来事を真摯に見据えた作品です。
『自由の味とは、なんであろう』
しっかりと噛み締め、考えたいです。
是非とも、ご一読を。
かの国に暮らす、ある家族の物語です。
まさに今進行しているリアル。
まるで取材してきたかのような、あの国の現状がまざまざと映し出されているような見事な筆致。
大切な家族が、もしもこんな目に遭ったら…
想像だけで涙がこぼれます。でも、まだ想像で済んでいる私たちは幸せです。あの国の人々は、今この時も眠れぬ日々を過ごしているのでしょう。
何故、残酷な歴史ばかりが繰り返されるのか。過去に学ぶものは何もなかったのか。
戦前にタイムスリップしたような感覚さえ覚えます。でも、これが今起きているリアル。
とても胸が痛くなる話ですが、それでもぜひ皆様にも読んでいただきたいと思います。
まさにです。
先日テレビで全くこれと同じ状態で、父や母とは話が通じないと言っているロシア人の方のインタビューを見ました。
今日の朝のニュースを見ていたら、日本も危ないなと思ってしまいました。あの独裁者は、21年も前からウクライナへ侵攻することを決めていたそうです。
北方領土のことも、どう考えているのかと思って、恐ろしくなりました。
この戦争が、世界の大きな分かれ道になる気がしてなりません。
なんとしても、戦争のない平和な世界を、子供たちに残したいです。
たくさんの方に読んでもらいたいです。
そして、想像してください。まるで自分の身に降りかかったことだと。
そうすれば、きっと同じ体験をしなくても、痛みを知ることが少しはできる気がします。私は、戦争のない世界になって欲しいと心の底から望んでいます。
どうか、ご一読を。
そして、想像し、創造しましょう。
戦争のない、平和な世界を。
子供たちの未来に残すために。
作者の怒りが作品に漲り、渦を巻いている。読み終えて、まるで太い剣が胸に突き立ったような強烈な痛みが残った。
独裁者の一存で、国が動き、国が傷つけられる。
大切な人の命が、家族の歴史がこうも簡単に奪われる。
目の前の不条理に憤り立ち上がった人々は、一瞬にして捕らえれ、撃ち殺され、その名すら残らない。
誰も、悪魔を抑え込めない。
こんなことが許されるだろうか?
この理不尽に、私達はどう向き合えばいいのか。
狂った独裁者が好き勝手に暴れるのを、今すぐに阻止する方法はないのか?
「世界の全ての国々が従うべき法」というのは、ないのだろうか。
全ての国の法律の上に置かれ、狂った指導者を捩じ伏せるほどの強力な力を持った、世界平和を目指す「上位法」のような存在が。
そうでもしなければ、世界の平和など到底訪れないのではないか。個人個人が口々に叫ぶだけでは、世界は変えられないのではないか。
悔しいが、そう思わざるを得ない。