この物語と同じことが、きっと今も海の向こうで繰り返されている。

これは多くの人に読んで欲しい。

初めて読んだ時に、泣きながらそう思いました。
ですが、レビューがなかなか書けなかった。思い出す度に胸が詰まり、涙が溢れ、心がざわついてしょうがないのです。
実を言うと、今もそうです。人前で読むのは危険な作品かもしれません。

内容はお読みいただくとして、感じたことをひとつだけ。
この作品には、「色」が象徴的に使われています。
お皿の白、野菜スープの赤、瞳の青の三色。そしてカーテンの鉛色。それらが余計に、部屋の情景をリアルな映像としてありありと浮かび上がらせるのです。
そして最後、その映像はテレビの画面に切り替わります。
その対比によって、私達が普段テレビで見るだけの映像は実際に起きていることなのだと、改めて現実を突きつけられました。
作者さまの構成力、表現力に感服するばかりです。
もし、この作品に続編があるのならば。明るい青空の下で黄金色の向日葵が揺れ、大勢の人が手を取り合い笑いあっている…そんなシーンで終わって欲しい。
そして、できれば、現実の世界でも。
この物語、決して他人事ではありません。

その他のおすすめレビュー

霧野さんの他のおすすめレビュー871