おとうと

作者 柊圭介

298

102人が評価しました

★で称える

レビューを書く

★★★ Excellent!!!

今まさに考えるべきテーマを題材にした短編小説。
はてなインターネット文学特別賞受賞に恥じない、素晴らしい展開と文章力に圧倒されました。

15年ぶりに偶然再開したおとうとは、似ても似つかぬ容姿をしていた、性別まで。それぞれの思いと過去の過ち。時の歯車は凍りついた二人の時間をゆっくりと溶かしていく。

とにかく最後まで目が離せません!
おすすめです♪

★★★ Excellent!!!

設定は衝撃的で、出だしにその衝撃から始まります。
偶然入ったバーで女装している双子の兄と再会する。
その時の主人公と兄の反応は、生々しい。
互いにそのことを口にしないまま、周りを憚る様子は世間に対して当たり前のようでいて、当たり前であることが少し寂しくもある。
さらに、つづく衝撃は兄弟の間に決定的な亀裂をもたらしかねないものだった。でも……。

キャラクターが皆、普通の人なんだけれど、優しさもちゃんと持ってる。
特に主人公の奥さんが、すごく良い。
子はかすがい、というけれど彼女を見ていると、人は人と人のかすがいなのだと思う。
今、癒されたいなと思っている人。そんな人にお勧めします。

★★★ Excellent!!!

おかまバーで15年ぶりに再会した双子の兄弟。それぞれの選んだ生き方は全く違っていて、この二人が和解する術など何もないのではないかと感じます。
短いお話の中に二人のそれぞれの強い思いと葛藤、大切にしたいものが込められていて、ふわっと幸せな心地になるラストもとても素敵でした。ぜひ読んで欲しい短編です。

★★★ Excellent!!!

心温まる人間ドラマ、というにはあまりにも衝撃的な始まり方。
わだかまりを抱えた兄弟の再会から物語は始まります。
けれど兄弟は短慮な行動の末、溝を深めてしまいます。

兄と弟は、才能も嗜好も生き方も違う。つい相手を羨ましく思ってしまうのは兄弟あるあるですね。
相手の幸せそうな姿に嫉妬を覚えてしまいますが、その幸せが自分の幸せのカタチとは違うこともある。
兄には兄の、弟には弟の幸せのカタチがある。
相手の幸せのカタチを横で見ながら、嘘偽りのない自分の人生を生きるのがいいのかな。

物語最後のゆきどけには、ほろりとしてしまいました。
雪が降るからこそゆきどけがある。そのゆきどけ水は田畑を潤し、人々の飲み水となる。
憎しみや苦しさが巡りめぐって未来の幸福に繋がるのなら、過去の過ちも捨てたものではないですね。

人間の明暗を描いた素晴らしい作品がここにあります。

★★★ Excellent!!!

道を違えた双子の再会、過去と確執。それらを綺麗にまとめて昇華させる文章力はお見事です。
なかなかに難しいテーマですが、引っかかるところもなく、するっと読めてしまうのは作者様の力量によるものでしょう。
まさに雪解けを思わせるラストシーンにぐっとくること間違いなし。
心に残る何かがある、素敵なお話です。
ぜひたくさんの人に読んで欲しい、おすすめの作品です。

★★★ Excellent!!!

両親を同じくし、この地上で最も近しい遺伝子を持ち合った存在。だからこそ、その差異が余計に目についてしまう。

二卵性双生児。一卵性とは異なり、発現する特徴の差異は通常の兄弟同様に大きい。同じ母からほぼ時を同じくして生まれ落ちても。一方は兄として、他方は弟として、それぞれの立場を与えられる。
近しいのに。近しいからこそ。自分の当たり前が、彼にとっての当たり前でないことに戸惑い傷つく…

とってもハートフルな作品です。涙がボロボロこぼれて困ったことになるかもしれませんので、その点だけはお気をつけて。
この年末に、是非ともお読み頂きたいイチオシでございますっ!

★★★ Excellent!!!

兄も弟も命の花を精いっぱい咲かせているが、どうにもならない現実があって。
登場人物たちの健気さが愛しくて切なくて、一話ごとに胸がゆすぶられました。

世界は葛藤に満ちているが、人間っていいものだと思わせてくれる豊潤な小説。
混沌の極みだった今年の歳末、すばらしい作品にめぐり会うことができました。

★★★ Excellent!!!

双子の兄と弟。
大人になってそれぞれ違う人生を歩んでいた二人が、あるきっかけでまた顔を合わせるようになります。

過去に二人が離れた理由は、とても胸の痛くなるような出来事で。
兄弟だからこそ容易には修復できなさそうな大きな亀裂に、この再会は間違いだったのかとハラハラしてしまいます。
でも、そんな二人のもとに救世主?が現れて……。

兄弟だからこそ難しい。
一番近くにいたはずの存在が、大人になれば簡単にバラバラになってしまう。
遠くて近い、何よりも微妙な人間関係かもしれません。

では、この二人の場合は?
ぜひ、その目でお確かめください。
兄弟ならではの素敵なエンディングに、間違いなく浸ってしまうことでしょう♬

★★★ Excellent!!!

ある事情で音信不通になっていた双子の兄弟の偶然の再会は、まさかまさかのおかまバー!
まじか⁉︎ まじか⁉︎ とハラハラドキドキの予想外の展開でありながら、胸はキュンとさせられる。
いつの間にか読者もその場に引き込まれて、兄弟と一緒に泣き笑い顔になっているんじゃないかな?

★★★ Excellent!!!

家族だからこそ言えないことや、近しいからこそ遠慮してしまうことってありませんか?

15年間会っていなかった双子の兄弟。
弟は幸せな家庭を築いて仕事では出世、まさに順風満帆の折に偶然再会した兄は、女装で水商売。そこに勝ち負けなんてきっとない。ただ、それぞれに抱えている想いがあるのです。
二卵性双生児という絶妙に近くて遠い間柄だからこその葛藤が、見事に描かれたドラマです。

★★★ Excellent!!!

たまたま訪れたおかまバーのママが、15年間音信不通となっていた双子の兄だった……という衝撃的な幕開けで始まる物語。
2人の関係に溝を作った15年前の出来事が、また衝撃的でした。
もう修復は不可能かと思いきや、待ち受けるのは奇跡のようなラスト。展開のあまりの巧さに唸りました。

兄・礼一郎にものすごく人間味があり、非常に魅力的です。
リアリティある会話の端々から伝わってくる感情の機微に、血の通った人間の清濁を感じました。

素晴らしいお話でした。読了後、温かな感動で胸がいっぱいです。
みなさん、ぜひぜひ読んでください!