西奈 りゆ

普遍的な感情を扱っているのに、 その中身はとても濃密だ。 この物語では、ある再会が逆説的な痛みを主人公にもたらすが、 それは屈折しているようでいて、何よりもまっすぐな思いでもある…続きを読む

著者様は「縮図」という言葉を使われていましたが、 子どもは大人の縮図であり、付け加えるならば、社会の縮図でもあるのだと思います。 表に出ない暴力の被害に遭う方が、今も大勢いる。 …続きを読む

写実的に時代の一コマを切り取った、まさに現代ドラマ。 私はその時代にはいなかったのですが、それはただの偶然でしかなく。 今もこの問題は、解決することなく誰かを追いやっているのでし…続きを読む

作者様のお人柄はもとい、小さな命を助けようとする人たちのリレーが心に残る、 とても読みやすいエッセイ。 単に大変でしたという話に終わらず、言葉のひとつにふと作者様の感性が垣間見れ…続きを読む

精緻に織り込まれた言葉が、言葉にならない思いに言葉を与えてくれます。 響きあう音、淡い恋情を感じさせる十首の歌が、 遠いどこかの返らない日々を連れてくるようです。 丹念に編み込…続きを読む

逆に、こちらを非難する「正解」が正しかったほうが救いがあるようなことって、 あるんじゃないかと思うんです。 でも、よほどのことがない限り、おそらくそれは、現実的ではない。 その隙…続きを読む

この物語に象徴的に記されているように、時代とともに様々なものが、失われていきます。 「死と再生」のテーマを持ち出すまでもなく、万物、そして歴史、文化は流転していきます。 ですが…続きを読む

主人公は、本。十刷が出た、本。 もう一度言います。主人公は、本です。 なのに中身は、まるでヒューマンドラマ。 それも、いぶし銀の、ちょうどほどよく日焼けした本たちのような。 え…続きを読む

十代の暗さを孕みながらも、同じ者にしか持てない爽快感を持つ物語だった。 けれど肝心の「〇〇」に当てはまる言葉を、じつは私はまだ見つけられないでいる。 それは、大人になって知った…続きを読む

殻を破れないでいる剝き出しの魂が、出会った。 本作は葛藤を抱えたまま役を演じきれずにいる女優・舞花と、 同じアパルトマンに住む絵描き・「かける」や、その関係者たち。 小さな町を…続きを読む

切なくて、痛く苦しい。 二人だけで温めていた世界も、乱反射するミラーボールのような“声”の嵐に、 あっという間に砕かれてしまう。 私も、表面上だけでも、レイくんに近い境遇だった…続きを読む

この作品が好きだ。 そう、心から思わせてくれる作品でした。 浮遊したような、交点を持たない言葉のやりとりが、 少しずつ物語の輪郭を縁どっていきます。 その基調は、「生」。 「生…続きを読む

書かれているのは自分のことではないのに、 自分の中の「子ども」の部分をくすぐられてしまいます。 子どもの頃の冒険譚。 私にはそういう記憶はないのですが、なんでしょう、この懐かしさ…続きを読む

喫茶店のメニューとして、さりげなく出題される「本日の謎」。 解けるようでいて解けない、絶妙なそのさじ加減。 そして解決後に得られるのは、単なる回答だけに留まらない、 人間ドラマの…続きを読む

恋を叶える魔法。 ファンタジーでも私たちを惹きつけ続ける、永遠のテーマではないでしょうか。 非常に短い物語ですが、恋することの可愛らしさと危うさを、 端的で比喩的、けれど示唆に富…続きを読む

なぜ作者様がこのような作品名にしたのか、 読了した今、しみじみと感じ入っています。 ある種の幻想譚でもありながら、人々の歴史と愛、受け継がれていくもの。 そして、それを変わらない…続きを読む

迫力のある格闘描写に始まり、平穏な日常、まだ見ぬ試練の訪れを予感させる、 シンプルでいて、水のように自然と流れる展開。 キャラクター同士の会話ひとつとっても、その光景が自然に浮か…続きを読む

レビュータイトルに使用した言葉は、すべて作者様が本文、ないしキャッチコピーで使用されている文言です。 本来、読者である私自身が独自に応援の言葉をあてるべきですが、この作品のあまり…続きを読む

わずかな哀切をまといながらも、この穏やかな温もりは何だろう。 著者様の文章は、町と町の淡いを辿るように、パリを、そしてその他の、フランスという国を生きる人たちの息遣いを、細やかに…続きを読む

以前に拝読した「雪忘花」と併せて、作者様の作品は、 SF、あるいはファンタジーというジャンルに一括りにできない何かを感じさせます。 その根底には、人間というものの残酷さ、愚かさを…続きを読む

うーん、楽しい！　あ、読み終わったから、「楽しかった」ですね。 作者様の構成力、そして知識量という軸を得て、キャラクターたちが何て活き活きと輝いていることか。とにかく自然に、明る…続きを読む

ここまで純粋に和を軸に据えたファンタジー小説は、 なかなか読めないのではないでしょうか。 ほのぼの、シリアス、謎・・・・・・。 細かな描写に様々な示唆のある本作ですが、 やはり主…続きを読む

なんともユニークな「バス亭部」や、自転車を物語の主軸に据えた本作。 爽快感もあるのですが、なんともやわらかな水のような魅力が青春を彩っていて、 まるで風にあたっているような気持ち…続きを読む

一度沈んだものは、二度と浮かび上がってこない。 そんな怪異を孕んだ沼をめぐる、連作短編。 最終的に怪異には結末が訪れるのですが、 そこは作者様の得意分野。 読者を惑わす手練手管に…続きを読む

実現することのなかった未来。 奪われるかもしれない未来。 主人公・夕貴の時間は、流れているようでいて、 どこかで止まっているように思えてなりません。 冬の山へと登る、凍り付きか…続きを読む

信頼している作家さんの一人です。 何を信じているかというと、押羽様の文章はそのものに向き合う熱量があり、 読み手をけして裏切らないからです。 本作の中で、押羽様は「SUVIVE…続きを読む

作者様の作品は、どこかにふっと、忘れられない一言が置いてあり、 夢の景色を追っているような気持ちになります。 本作は、「クリームソーダ」を通して「あこがれ」の気持ちを描いた作品。…続きを読む

正統派の人間ドラマ。 私たちだって、推して推されて、 そうして誰かの手を取っているのかも。 どんな些細な手でも。 昨日、知り合いと、お互いの仕事についていろいろなことを話したん…続きを読む

作者様の、なんとも可愛らしい回顧。 私は当該作品を見たことがないのですが、うんうん、 とっても光景が思い浮かびます！ たぶんなんですが、ここにいらっしゃる方は、多かれ少なかれ、…続きを読む

長いような、短いような。 まるで船旅のような、心ごとたゆたうような、不思議なエッセイでした。 作者様の体験のひとつひとつを、こうしたかたちでお裾分けしていただけたこと、 今はただ…続きを読む

設定からして、面白いです。 あだ名はあるのですが、怪異に名前を奪われた少女・■■の表記は今のところ変わらず。 朴訥（天然ともいう）でイケメンの、少女にはある意味刺激の強い半妖の美…続きを読む

初めてお読みする作者様に、タメ口のようなレビュータイトルでごめんなさい💦 でもでも、この気持ち、どうしてくれようか！ 本来、絶対交錯しないはずの題材を織り込んで、 ちょっと臆病で…続きを読む

姉妹編の、「【完結】結末のないモブキャラは仕方がないので王宮のありとあらゆるネタを駆使してベストセラー作家始めます」を先に読んだのですが、こちらから読んでおくとよかったなと、ちょっ…続きを読む

シンプルな「純狂」に彩られた本作。 愛だった。それは愛だったし、むしろずっと愛なんだ。 だから、一歩沈んでしまえば、あとは・・・・・・。 そんな人間の本性と業を、じわじわと炙り…続きを読む

商店街の化けネコさんたちが活躍する、ほんわかストーリー。 落語のようにも、朗読のようにも、童謡のようにも聞こえる、読める。 そんな響きの良い文章が、とても心地よかったです。 作…続きを読む

作者様が別の創作論で仰っていた、小説執筆の肝と、豊穣なアイデアが調和して、 とても個性的な物語に出会うことができました！ そういう意味では、創作論（「カクヨムコンの迷い方」）を経…続きを読む

成仏できない囚われの魂と、役目を担った半妖の物語。 なぜ、彼女は囚われているのか？ 明かされていくのは・・・・・・。 徐々に徐々に心を通わせていく二人の、距離感。 近づくと足元が…続きを読む

カヌーですらあやふやですが、カヤック、という存在を初めて知りました。 作者様は、実際にカヤックを操っておられる体験があるということで、 初心者にも優しいカヤック講座も楽しめます。…続きを読む

作者様が仰る通り、ラストの一文まで読んで、読まれてこそ、 それに相応しい輝き方をする物語でした。 それが、どんな輝きであっても。 最近、結婚についてのトークショーを見たせいもあっ…続きを読む

物語に、こんな豊穣な感情を持たせることができるんだと、感動しました。 最後まで、先が読めなかったです。 孤独を好む灯台守の語り。 変わらない毎日に飛び込んできた、偶然。 葛藤の末…続きを読む

題材自体はごくごくシンプルな、文字通り扇風機を買う買わない、だけの話なのですが。 え、それでここまで面白くなるの！？　というのが、読んで、 そして読み終わっての感想です。 そもそ…続きを読む

動物病院を舞台にした、オムニバス形式の、命を主題にした作品。 すごいです。どんどん、深みが増していきます。 まず、描写の使い分け。 弾む部分はしっかりと弾ませ、宥める場面はしっか…続きを読む

実質、ノンフィクションではないでしょうか。 というのは私個人の勝手な誇張ですが、 「幸福度98％の日本」「8という存在」、 このような裏表は、確実に今も日本中、 ひいては世界中に…続きを読む

旅情と余韻、人情の詰まった、口にすれば、ほどけてとけていくような物語です。 何なんでしょうね。シンプルで短めなお話なのに、文章を追いかけるたびに こころが揺さぶられます。 風景が…続きを読む

ありそうでなかった物語。 ちょっとポップでキャッチャーなあらすじと、どこか苦さを感じさせる作品のタイトル。予感を裏切らず、不思議な魅力が、同居しています。 少し回りくどい言い方…続きを読む

恋愛に対して刹那的に生きる、主人公・沢渡くん。 彼がまず第一に優先するのは、愛する感情よりもカラダの関係が成立するか／させたいか否か。いわゆるバイ・セクシュアルで、男女問わず「キ…続きを読む

分かる人には分かる。そんな感覚ではないでしょうか。 ふとした記憶に、ざらっと混じるものがある。 もっと手を浸すか、手を引くかは、その人次第。 だって今日は、「さむいよる」だから。…続きを読む

当初軽い気持ちで読み始めて、実際サクサクと進んでいくストーリーだったのですが、 読み手に感情移入させるのが、とても巧みな作家様です。 主人公・ノエルが、影では人気作家、けれど表で…続きを読む

主人公のようなキャンパスライフではなく、私が実家にいたころの話ですが、 漫画や小説に出てくるレシピを仕入れてきて、家族に振舞っていた頃がありました。 当時、けして彩のある生活では…続きを読む

場面ごとの空気の使い分けが、お見事。 ストレートなのに言葉にはできない、夜闇のけだるい暗礁のようなストーリー。 これは、共感を呼ぶお話だと思います。 私は、そうでした。 短い中…続きを読む