この作品はシリーズ三作目です。
内容的にはミステリーに分類されるとは思うのですが、凶悪な犯人が登場したり誰かが死んだりはしません。主に学園で発生する謎や問題を、軽やかに解決してゆくコージーミステリーです。
主人公と、ヒロイン星原さんの安定のやり取りは日常のお供にピッタリです。登場人物の描写が瑞々しくて、半端なラブコメを読むより余程キュンキュンします。しかも深みがあって面白くて、読むほどにこの世界にのめり込んでしまいます。
何を読むか迷ったら、この作品を選びましょう。ほぼ間違いなくハマります。
これ程の完成度の作品を無料で読ませてくれる作者様に感謝です。
激推し!🌟
シリーズ三作目となる本作。
主人公の男子高校生、月ノ下君とヒロインの星原さんが事件やトラブル、果ては珍事に巻き込まれてしまうことに、このシリーズの一愛読者として耐性が付いてきたと自負していたのですが……。
当然のことですが、読み手だけではなく作者さまもさらに筆力を増しているんです。
元々プロ顔負けの筆力、構成力を持つ本作の作者さまはさらにそのレベルを高みへ持っていったようです。
ミステリー作品だけあってシリーズ一作目から謎解き要素は毎回ふんだんに盛り込まれているのですが、章を追うごとに謎が洗練されていくので毎回すんでのところで読み手側は謎を解き明かせず歯噛みすることになります。
その匙加減は見事としか言いようがありません。
さらに特筆すべきは各章ごとに主題となるテーマが掲げられており、それを元に物語が進行していくことです。
難解なテーマにも関わらず読み手側にきちんと伝わるように緻密に計算された構成にはただただ脱帽させられる筈です。
一片の誇張もなく、本当にプロ顔負けの作品です。
読専の方だけでなく書き手の方々にも読んでもらいたい作品として紹介させていただきます。
やれやれ系少年×小説家を目指す少女の、周りの人間を助ける哲学ミステリー!
いよいよ二人が探偵をしているのが周りに伝わって、依頼が舞い込んできちゃってる感じです!(笑)
第三段になって、ミステリーや哲学だけでなく、
ギャグは冴え、主人公二人の仲も進展してました!
面白かった……本当に。
私が一番好きなのはシリーズもっともギャグが冴え渡る「心理テストと疑似相関」ですが、考えさせられるエピソードなら最終話の「『弱者の強み』と見えない監視者」です。社会風刺的な部分もあるのですが、何よりも「人を救うってどういうこと?」と、問いかけるようなミステリーでもあります。
どちらもレギュラーキャラの日野崎勇美(女子サッカー部・ボーイッシュ・シスコン)が活躍した話なのですが、このキャラのギャグとシリアスの振り幅が激しくて思わず笑ったり感動したり。
主人公の月ノ下くんと星原嬢の仲も甘酸っぱく進んでいて、これぞ青春ミステリーという感じです!
言うまでもない事ですが本作は「放課後対話篇」「放課後対話篇2」の続編にあたります。
ですからまずは、そちらから読み始めていただきたい。
そうすれば、あまりに見事に活写されているキャラクター達の「成長」を堪能する事が出来るでしょう。
それはキャラクター個人の成長というわけではありません。
主人公・月ノ下真守を中心とした人間関係も、また成長、あるいはこれは「熟成された」と言うべきかも知れません。
前作二篇と同様、圧倒的な筆力で紡ぎ出される掲げられたテーマに対する、鋭い視点はそのままに、瑞々しく描き出されるキャラクター達はさらに魅力を増しています。
青春群像劇としても見事。
「放課後対話篇2」において「欠落の美」という言葉が出てきます。
まさに、学生という完成途中であるキャラクターたちの、どこか欠けた、いやどこか足りないと自覚しながらも、懸命に答えを探そうとしている姿に胸を打たれる事でしょう。
今回、ラストにおいて大きな変化を彼らは自分で選択して、そしてきっと「成長」するのでしょう。
見逃したくはありません――その瞬間を。
前作から引き続いての拝読です。
人一倍お人好しでまっすぐな性格の主人公・月ノ下真守。彼よりも少し実際的あり、豊富な知識を蓄えている頼れるヒロイン・星原咲夜。二人の高校生が学校内で起こる様々なトラブルを解決しながら、気づきや教訓を得てともに成長していく『放課後対話篇』シリーズの3作目です。
ミステリの楽しさ、社会的風刺の刺激、そして学園モノの醍醐味である爽やかな読後感を与えてくれるのが本シリーズです。本作は5つの短編で構成されております。(特に気に入った1編を選んで紹介するつもりでしたが、どれにするか決めかねるほど全篇が面白かったので全篇紹介したいと思います。)
1)「金の価値と「落書きの止め方」」
ヒロイン・星原さんの家の堀にスプレーで落書きされる事件を主人公・月ノ下くんが”金の価値”をうまく使って解決へと導くお話です。
個人の表現方法とそれを行う場所、そしてお金や他者からの評価という報酬について、とても勉強になるお話でした。
2)「怪談とアジテーター」
ある日、月ノ下くんがクラスのメンバー数人と肝試しをする計画が持ち上がった。しかしその肝試しを中止にしてほしいという依頼がクラスメイトの平井くんから月ノ下くんのもとへ来る。平井くんはなぜ肝試しを中止にしたいのか、どのようにして計画を中止にさせるかというお話です。「作り出された雰囲気にどう立ち向かうか」というテーマを、学園内にありがちな同調圧力に落とし込んでくれているため、誰にも理解しやすいです。また、本作には珍しいホラーチックなストーリーも見所です。
3)「幽霊部員とマクガフィン」
演劇部の部員に佐藤進くんという人がいる。しかし彼は幽霊部員のようで、演劇部の仙川さんは彼の姿を一度も見たことがないらしい。仙川さんの依頼を受けた月ノ下くんと星原さんは、幽霊部員・佐藤くんの正体を突き止めることになりーー。
興味を惹かれる謎から、意外な答えが飛び出てきます。リドルストーリーやマクガフィンなどの文学技法についての勉強にもなりました。星原さんのホームズっぷりと月ノ下くんのワトソンっぷりにも注目です。
4)「心理テストと疑似相関」
本作のサブヒロイン・日野崎さんからの以来で、彼女の妹を尾行することになった二人。なんでも妹と相合傘をしていた男との関係が気になるらしい。妹と彼の下校の様子を観察し、そこから彼について様々なことを推測する3人はエスカレートし、相関関係から心理テストまでを駆使し、彼のことを分析していきます。
結果として誰よりも意外な一面が明かされたのは日野崎さんの妹でもなく、妹と相合傘をしていた彼でもなく、日野崎さん自身であったことが面白いです。月ノ下くんと星原さんの関係にも進展があったりなかったりします。
5)「「弱者の強み」と見えない監視者」
日野崎さんから「うちの部の様子がおかしい」と相談を受けた二人は、日野崎さんの所属する女子サッカー部を調査する。本来伝わるはずのない情報が、顧問である飯田橋先生に伝わっていることが頻発しており、部内の誰かが顧問へ告げ口をしているのではという考えが部内での疑心暗鬼を生んでいた。事態の収束を図る二人は、誰が顧問への告げ口を働いているかを特定することにした。
ミステリー色が強めだったこともあり、冒頭から一気に集中して読ませていただきました。この章のテーマである「弱者と強者の立場の違いによって浮き彫りになる人間性の一面」に関する文章に、星原さんの意見がかっこいいなーと思いつつ、つい我が身を振り返ってしまいます。月ノ下くんも星原さんも日野崎さんも、それぞれに考え方が違って、それでもお互いのことを心から尊敬し、またそれを相手に素直に伝えることができることがとても眩しく映りました。
全体を通して文章がとても綺麗で、ライトに読めながらも深みのあるお話にいつも胸を打たれます。全体的にダークなテーマを取り扱いつつも、それをただダークなままでは終わらせないところが、私はとても好きです。
星原さんの知識や、月ノ下くんの考え方や行動を目にするたび、こんな人たちが実際に自分の周りにいたらいいのになと、つい考えてしまうのが止められません。しかしそれは無論無茶な願いだとわかっているので、せめてこの作品を通して、また二人に出会える日を心から楽しみにしています。
素晴らしい作品をありがとうございました。
大人しくてクールというよりは草食系の月ノ下君。
そして頭脳明晰で黒幕的ポジションだけど、なんか不器用な星原さん。
この二人が学園で起こる不思議な事件や出来事を解決していく物語です。
ミステリーの謎解き要素、学園ならではの青春ドラマ、ちょっと変わった雑学要素のあるテーマ性。
これらが見事に絡み合い、独創的なエンターテイメントを作り出しているのが一番の魅力です。
善意でやっていたことがお金をもらった瞬間に意味合いが変わっていく不思議。
まわりの意見・雰囲気にたやすく呑み込まれてしまう人の心の不思議。
論理的なものに騙されやすい不思議。
弱者を名乗っている人がいつのまにか強者になっている不思議。
どれも今回のエピソードのテーマになっているものです(読み違えてなければ)。
こう言った事柄は日常生活でも散見される不思議なテーマでもあります。
そう言ったものを扱いつつ、読者にもちょっと考えてみてよと優しく導きつつ、しかも物語としてしっかりと面白い。
こういう作品はなかなかありません。
なんだか感想を語り合いたくなる作品でもあるのです。
もちろん主人公の二人の恋の行方も気になったりするのですが、それも含めて魅力いっぱいの物語。
語り口も軽やかで、どこから読んでもしっかり楽しめます。
ぜひ読んでみてください!
前作「放課後対話篇2」から引き続きの拝読です。
月ノ下と星原の二人はあいかわらずの名コンビ。
そして、本作品では、明彦や日野崎といった二人を取り巻く仲間との絆がどんどん深まっていると感じます。
知識と切れの良さ、本質的に優しく、誰も傷つけないよう問題を解決していく姿など、本当に彼らは学生の鑑と言えます。
個人的に今回の章で一番気に入ったのは「心理テストと疑似相関」。
妹想いの日野崎の暴走振りが面白く、本作品の中では一番コミカルだと感じました。
主人公の月ノ下とヒロイン星原が前作よりほんの少しだけ距離を縮めるその微妙な塩梅、これはなかなか狙ってできる技ではないと思います。
作者様の並外れた感性と計画性、そして何より登場人物が自ら動いていることが生み出した成果だと確信しております。
素晴らしい作品に会えてとても嬉しかったです。
ありがとうございました!
放課後対話篇シリーズ③
日常ミステリー。
主人公の月ノ下君とヒロイン星原さんの安定した存在感と、軽快でコミカルな会話。
その仲間たちも個性的なキャラクターの持ち主で、読者を飽きさせることはありません。
寧ろシリーズが進むにつれ、テンポのいいストーリー展開を存分に楽しむことができます。
シリーズ③で特に印象に残ったのは、『「弱者の強み」と見えない監視者』です。
強い立場の場合攻撃本能が現れ、弱い立場の場合自己保身となる。
人間の本性や虐めの構図に鋭く斬り込んでいます。
主人公とヒロインの関係性も素敵ですが、私は日野崎さんの人間性に惹かれました。
――「ただ正直に、自分の気持ちにまっすぐに生きること」
簡単なようで難しい、でも、そうありたいですね。