概要
生きる張り合いもなく孤独な毎日の中で、ある日安くて美味いという評判の食堂へ行ってみると、そこにはとびきりの食事を作る料理人がいた。
日々の楽しみを得たように思えた男だが、彼には向き合わねばならない仕事があり……。
それぞれの過去を抱えながら今を生きる男女のささやかな人間ドラマ。
全5話。
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!居場所を見つける時、人は何に救われているのだろう
孤独で鬱々とした日々の中、「とびきりの昼ごはん」という楽しみを見つけた男。
5話全てにおいて、それぞれのメニューが色を添えます。
けれども読者の誰もが「飯テロ」などというワードを使いません。
主題がそこではないことに、すぐさま気づくのです。
こちらはフランスの片田舎を舞台に繰り広げられるヒューマンドラマで、心打たれる映画を見ているような読書体験が得られます。
今置かれている状況は、過去の出来事の成れの果て。
でも失敗しない人なんて居ないし、完璧な美貌、抜群のスタイル、順風満帆な旅路……そんなツマラナイ人生なんて、と思ってしまうほどに、人間たちから染み出す滋味がここにはあります。
特筆す…続きを読む - ★★★ Excellent!!!中年の勇者! 輝きそこなったけれど、ワケアリ食堂でみたされる😋
柊圭介さまは、フランス在住で、主にフランスが舞台の作家さまです。
カクヨムファン多い💕レビュー祭りですね~。
短いお話ながら、言葉に深みのある作品でグッときますよ。
さてお話は、本社から左遷、田舎の工場で所長となった元エリートの主人公は五十代。
妻にも愛想尽かされ。知り合いもいない。だがプライドも高いので、田舎の柄の悪い工員たちとも距離をとる日々。
あるとき、本社では行かないような安い食堂に吸いこまれるように入るのですが――。
食堂の女主人のノラ。安くて美味しいと定評で人気のお店です。
彼女は前歯がない、カラッとした話し方で主人公にズケズケいうが、
ノラの料理が心に体にしみしみ。食べ…続きを読む - ★★★ Excellent!!!自分が手にしたいと願っているそれには、果たして真の価値があるのか?
とある理由で、会社の出世コースを踏み外した男。田舎の工場の所長に左遷され、工員たちとも距離を置きながら孤独な日々を送る主人公は、安くて美味な料理を出すと評判の小さな料理屋へ足を向けます。最初は蔑み立ち寄らずにいたその店の料理の美味しさは、彼の冷えた心を一気に元気付けます。店を営む主は、色黒で痩せた前歯のない女。彼女との出会いで、彼の人生は大きく変わっていきます。
「何を救い、何に救われたいのか」。作品中で主人公が自分自身に問いかける、深く痛く突き刺さるフレーズです。自分の信じているもの、自分の支えとは何なのか。自分が手にしたいと願っているそれには果たして真の価値があるのか。挫折の痛みを噛み…続きを読む - ★★★ Excellent!!!心を揺さぶる極上の一編
物語は、どのように出来上がるでしょうか。私は誰かと誰かが出逢って、関わって、話が進展していくことによって出来上がるのだと思います。
そんな私は、この『ノラの食堂 輝きそこなった星の群れ』を、心を揺さぶる、極上の物語だと、心の底から確信しました。
わけがあって、本作の主人公は『シェ・ノラ』という食堂に入ることになります。そこで出会った一人の女性、そしてその女性が提供した料理が、主人公と密接に関わる。そして主人公は様々な人と——といったお話です。
本作は緻密な文章と、繊細かつ瑞々しい描写で構築されていて、止まることなくスラスラ読めるだけでなく、読んでいる最中、情景がありありと浮かび上がり、…続きを読む - ★★★ Excellent!!!大事なことを教えてくれる物語
人生、上手くいかない……。
そんなふうに考えてしまう時、読んでみてほしいお話です。
主人公は本社から町工場の所長になった自らの境遇にちょっと腐りつつ毎日を過ごしています。
工員たちの輪にも入れず、また入る気もなく。
でも、ランチを食べに立ち寄る小さな食堂の女性店主が、美味しい料理と一緒に道しるべのような言葉をたくさんくれます。
それは押しつけるでもなく、自然に染みていく言葉です。
そして主人公が取った行動には思わず拍手したくなります。
大事なのは結果よりも、その時にどう動いたか。
後悔しない選択をしたかということだと思わされます。
とても心に残る、上質な短編です。 - ★★★ Excellent!!!輝きそこなっても、それでも人は生きていく。心揺さぶられる人間ドラマ
誰しもが輝きたい願望を持っていると思います。
たとえば、夢が叶う。
華々しい活躍をして注目を集める。
望むものをすべて手に入れる。
生きがいを見出して、楽しい人生を送る。
自分の人生が、存在感を放つ一等星のように輝くものであったら、どんなにいいでしょう。
星の等級は一等星から六等星までありますが、肉眼で見える限界が六等星。
つまり、肉眼で見えない星もある。
『ノラの食堂 輝きそこなった星の群れ』は、そんな肉眼では見えない、でも確かにそこにある星の群れのお話であるように思います。
作者である柊さんの作品は、人を見つめる眼差しが温かいのが特徴のように私は感じているのですが、この作品も温かみ…続きを読む