この物語には人の強さ、弱さ、美しさと醜さがある

この物語の主人公は二人。
一人は魔性ともいえる美貌を持つ少年『ジュール』。
もう一人は不遇な出自ながら、太陽のような明るさを持った貴族の子『ヤン』。

ある日、森の中で行き倒れになっていたジュールを、ヤンが見つけ介抱するところから物語は始まります。
男性同士でありながら互いに惹かれあう二人。
それは友情なのか、恋なのか、それ以上のものなのか?
同性愛をモチーフにした作品だけあって、この辺りの感情表現、愛情の表現がとても美しく描かれています。

そう。この物語で特筆すべきはやはり作者の表現力です。
フランスの風景の描写、少年・青年たちの心の描写、二人をとりまくキャラクター達の描写。
それらがなんとも読みやすい語り口で、流れるように物語を紡いでいきます。

お互いにかけがえのない存在だと知った二人。
でも世間の波や、ジュールに引き寄せられた愛憎入り混じる人物たちにより、ジュールの人生は苦難に満ちたものとなっていきます。
ヤンもまた苦しい過去の傷を抱えていたり、ジュールと引き離されたりと、安寧な生活から離されていきます。
それでもジュールはヤンを、ヤンはジュールを心の支えに、希望の光として、暗闇の中をもがきながら生きていくのです。

読んでいくと二人の運命の過酷さに胸が押しつぶされそうになるでしょう。
そして二人のもつ輝きにいつの間にか魅せられ、ページの先に希望を見つけたくなるでしょう。

まさにこのストーリーテリングは魔性の輝きを持っているのです。
同性同士の愛と友情の物語、そこが一つのポイントではあるのですが、だからこそ輝く物語だったと気づくと思います。

とにかく魅力的な二人の主人公、骨太なストーリー、血肉の通った様々なサブキャラクター達。そして暗闇を抜けた先にある美しいラストシーン。
なによりも人間と人生が書かれた素晴らしい物語だと思いました。

ぜひ読んでみてほしい作品です。

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